ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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エルフの里再び

第473話 報告と休暇

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 勝手巻きパーティーは大盛況で終了した。
 あれだけ大量に作った酢飯も全て無くなった。切っていた海苔が足りなくなったけど、チアキさんが海鮮丼を作って見せたものだから、まだ食べられるという大人たちはこぞってオリジナル海鮮丼を作って楽しんでいた。
 おかげさまで、葉物野菜も、卵焼きも、勿論全ての海鮮も、綺麗さっぱり無くなりました。

「これはいいな、いろんな味が楽しめるのも良いし、子供も一緒に出来るのが良い」
「だがワサビと生姜があれば口直しになって更に美味かったんだがな」
「チャーキ、それはどんな美味い物なのだ?」

 食後にまだ食べ物の話をするとか、この人たちの胃袋はどうなっているんでしょうかね。
 ドロップアイテムだからアニサキスの心配もないのは安心だよね。というか、ここの海で獲れる魔魚にアニサキスがいるのかは不明だけど。
 アニサキスも魔虫の可能性は捨てられないけど、もし食べてしまったとしても浄化の魔道具が何とかしてくれることを期待しよう。

 一足先に満腹になったベル君はお家に戻って腹休め中。
 私が遅くまで残っていたのは、料理担当者の人達から色々質問されていたからだ。

「さて、俺達も戻るか」
「チャーキ、報告はどうなったの?」
「ああ、その話もしようか。まだ寝るには腹が苦し過ぎるしな」

 宴会場の片づけは任せてくれと言われたので、村の大人たちにお願いして私たちは部屋に戻ることにしたんだけど、イブさんの質問に、そういえばギルドが面倒だったと言っていた事を思い出した。
 ダンジョンメンバーと一緒にお部屋に戻れば、ベル君は既に夢の中だったけど、タニアさんも一緒に聞きたいという事で報告を聞くことになった。


「ダンジョンコアはギルマスたちの前で壊してきたから、これに関しては問題ない。ダンジョンが消えたかどうかはこれから数日通って確認してくれるという事だった。俺のところには消えた報告だけが寄せられることになっている」

 今回ダンジョン破棄をする理由は、大岩が川にかかっていたからだもんね。岩だけが残るようならそれをどうにかしないといけないし、連絡はありがたいね。

「ドロップアイテムも食材以外は売ってきた。南部には海ダンジョンと呼ばれるダンジョンがあるらしくてな、一応今回の相手と同じ魔獣がいるなら、同じ素材が採れるかもしれんということで、ヴィオが書いてくれた魔獣図鑑の写しを見せてきた」
「あれは良いよね。特徴もよく捉えているし、種別でノートが出てきた時はびっくりしたけど、これからも種類が増えるなら面白いと思う」

 野営地に戻ったら、その日に会った新しい魔獣や素材の絵をノートに書き留める事は続けている。絵も最初の頃に比べれば随分上達してきていると思っている。
 今回そのノートを見たチアキさんが、ギルドに聞かれた時用にと写本を希望していたんだよね。私のノートから写している筈なのに、私のノートよりも上手い絵を書くのは止めて頂きたかったけど、まあ他人に見せるならしょうがない。

「鰹節のオークナイトとかが出現してくれてたらいいですね」
「おう、だから一応そのダンジョンを管理しているギルドにも資料を渡すって言っててな、もし素材が被るようなら連絡をくれることになっているぞ」

 流石チアキさん、抜かりないですね。

「面倒ってのは、その資料のことだったの?」
「ああ、いや、違う」
「オークにやられていた連中は別としてな、金ランクの連中が鬱陶しくてな。どうみても子供の面倒を見ているのだから、自分達も一緒にダンジョンに入りたいじゃと」

 ん? それってどういう意味? 私が子供で面倒を見てもらっているんだから、自分達五人も面倒見て欲しいって事? 
 一人でも大変だろうに、それが五倍ってどんだけ迷惑をかけようとしているの?

「いやいや、違うだろ」
「子供の面倒を見ていても余裕があるなら、それなりに強くて実力がある自分たちが一緒にいても邪魔にはならない。だから一緒に行きたいという事じゃない?」
「え? でもワカメちゃんに足止めされて、砂浜エリアを抜け出せないレベルの人達なのに? それで実力があるって、誰相手に実力があるんですか?」
「うっわぁ~、きっつぅ」
「ぷはっ、いや、本当にそうなんだよな。寝言は寝て言えって感じなんだけどな」
「なんなら子供の面倒は自分たちが見るから、稽古をつけて欲しいと言い始めたんじゃ。途中でギルマスが止めてくれたから良かったが、もう少し早う止めて欲しかったもんじゃ」

 勝手巻きパーティーが待っているから余計にイライラしてギルドを吹っ飛ばそうと思うところだったと言われて、マジでギルマスが止めるのが遅かったら危険だったと知った夜。
 食べ物の恨みは怖いんですよ。

「ていうか、自分たちの実力が足りないのもだけど、相手の実力を見抜けないって冒険者として失格だよね。あのメンバーの中で一番規格外な相手を守られるだけの子供だと思うなんて、節穴も節穴だよね」
「空を飛べないという欠点すら、魔法を駆使してなかった事にしてしまいましたしね」

 ルイスさんは「素晴らしいです」のテンションだけど、イブさんのそれは絶対違いますよね? 規格外しかいない人たちに規格外とか言われたくないんですけど? 
 規格外についていくためには色々考えないと駄目なんですよ。

「普通はその時点でついていけないって諦める人が多いのよね。ヴィオちゃんはついて行くために柔軟に考えられるんだもの、素晴らしいわ」

 タニアさんに撫でられてニッコリ。
 竜人族はそもそもが規格外な人たちだから、小さき人の頑張りを殊更褒めてくれるのです。

「ええっ! 僕の時と反応が違い過ぎない? 僕だって褒めてるのに!」

 心底驚いたという顔で私を見つめるイブさんに、私も驚きですよ。いつ褒めてましたか???

「くっくっく、ヴィオ。イブの憎まれ口は褒め言葉なんだ。
 クソビッチとの旅の最中は、本当に口数が少ない奴だったんだ。
 喋った時には『ふぅん』『そう』『いいんじゃない』くらいだ。ちなみに『いいんじゃない』は『どうでもいい』の意味だぞ。
 久しぶりに一緒にダンジョンに行ったが、こんなに喋るとは思わなくて驚いてたくらいだ」

 チアキさんの擁護(?)に今度はこちらが驚く番ですよ。
 モフッコの時から見た目とは違ってよく喋る人だと思っていたけれど、驚きの連続でそうなっていたのだと分かった。

「百年も生きてたらある程度の事は当たり前になるでしょ? あっちの大陸に行けば見識が広がると思ったけど、つまんない戦争ばっかりだしさ、魔獣が溢れて大変なことになってたから殲滅しに行ったらチャーキに出会ったんだよ。
 変な女は鬱陶しかったけど、チャーキと一緒にいるのは楽しかったから、しばらく一緒に行動してたんだよね。あの時は色んなことが新しくて、あの島に行って良かったって思ったんだよね」

 生きる単位が違えばそうなるんですね。確かに私達ヒト族は百年も生きることは出来ない。きっと50歳を超える頃には色々経験を積んで悟りを開くようになるのだろう。
 ――ん? でも老害って言われる人もいたことを思えば、生きている時間だけで悟りを開けるわけではないのかもしれないね。

 イブさんとチアキさんとの出会い、旅の最中でのチアキさんのやらかし、スタンピード終結後のギルド創設秘話など、色んな事を教えてもらった。
 ちなみに聖女の事は「なんか白くて性欲にギラギラした変な女」という事でした。
 とある国では女神のように崇められているという噂の聖女さんも、本人を知っている二人からは散々な印象のようですよ。可哀想オモロイと思ってしまう私は聖女に程遠い悪女なのでしょう。
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