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エルフの里再び
第474話 準備
しおりを挟む特級ダンジョンから戻って二日、休日を挟んでダンジョンの準備をしています。
こないだの特級ダンジョンで使用した武器は私の鞭くらい。鞭は元々手入れがほとんどいらないし、白雪さん達は魔法攻撃しかしていない。竜人族の三人は素手での攻撃だけだし、武器の補修という時間がかからないのは凄く大きいと思う。
強いていうなら包丁を研ぐくらい? いや、これも野営の時に時間があればやってるからいらないね。
それにあの特級ダンジョンは帰ってきた翌日には大岩が消えたと連絡があったので、問題が解決したからというのもある。
私達はダンジョンに行ったばかりだけど、ベル君はお留守番をしていたから『待て』の状態だったんだよね。
そして、それはベル君だけではなく、翼人族のアリオールさん達もそうだった。
「さあ行くか、もう行けるか?」
帰ってきた翌日から顔を見るたびに聞いてくるから、相当楽しみにしているんだと思う。
大人達だから自分達だけで行っても良いと思うんだけど、自分達では見落としている素材があるかもしれないから一緒に行きたいとの事。
「ヴィオが野営地で作る料理は勉強になるからな。ダンジョン内で料理をする事は考えてなかったが、これから成長する子供達がそれを覚えれば、より安全に快適なダンジョン攻略が出来るようになるだろう?
そのためにもまずは大人たちが体験したいって希望しているんだよ」
「そうなんですか。でもこの村だってみんなでお外料理をしてますし、屋台飯しか食べない人とか、自分ちの家電がないと無理って人程ではないと思うんですけどね」
アリオールさん達が同行したがる理由はチアキさんの言葉で納得したけれど、野営地で作る料理はここのキッチンと変わらない設備しかない。やろうと思えばすぐに出来ると思うんだけどな。
「ここは精霊が手伝うことが多いでしょ? ちょっと目を離してる隙に焦げちゃうとか、水がなくなるとか、そういう危険はない訳。精霊がいない料理は苦手な人が多いと思うよ」
な、なんと。精霊は戯れているだけではなかったんですね。
確かに脂が落ちた時には炭から強い火が出る事が多いはずなのに、ここの村で肉を焼いてもそんな事にならないのが不思議だった。あの炭の中で火を吐いたり、パクついていたトカゲや、素材に頬擦りしていた少年が何とかしてくれていたなんて思ってなかったよ。
今回はアリオールさんをはじめとした翼人族の人達も参加するとあって、かなりの大所帯でダンジョンに潜ることとなりそうです。
チアキさんと白雪さんは私の保護者として、ベル君の保護者役はタニアさんとルイスさん、ダルスさんとバレンさんはミドウ村とお友達の村に海鮮料理のレシピを伝える為に一旦離れることになりました。
エルフ代表としてイブさんとマムさん。
このダンジョンの情報を教えてくれたのはマムさんだし、お魚料理が大好きって言ってたもんね。
他の若い戦闘エルフも来たがってたけど、大所帯すぎるという事で今回は諦めてました。
翼人族代表は族長のアリオールさん、リザンドロさん、カエリアンさんの三名が同伴します。
彼らは刺激物が大好きで、例の針鼠討伐にやる気満々なのです。
「アリオールさん達はどうやって戦うんですか?」
「我らは殆ど戦闘をせずに移動することが多い。戦う時は魔法か空からの急襲をする事が多いな」
おお、また一般的な冒険者ではない人たちですよ。
翼人族の彼らは村の中で見せてくれるように、ヒトの身体で翼を出した状態で飛ぶことができる。鷲のアリオールさんだけでなく、鳥化すれば小さな雀になるリザンドロさんですら、ヒトの時の雀の羽は身体を浮かせることができるサイズの羽になるのだ。縮小率とかを考えてはいけない。
その状態で移動をする事も可能だけど、素早く飛ぶのは完全鳥化した方が早いのだという。
鳥の状態で上空から敵を狙って攻撃を仕掛けるというのは、野兎を狩る野生の鷲の映像を思い出してブルリと震えた。
雀はどうなんだろう。雀がオークに攻撃を仕掛けるというのは全く想像がつかない。オークの毛づくろいをしているハートフルなイメージしか湧かなくて、リザンドロさんは魔法攻撃をするのだろうと自分の中で納得させた。
あ、ちなみにカエリアンさんは鶏です。鶏冠まで真っ黒な鶏は超絶格好良かった事をお知らせいたします。鶏なのに飛べるのかなんて思ってはいけません。だって、ペンギンだっているのだから。見た目が地球で見たことのある鳥だとしても、違うのかもしれない。
ココッコだって太り過ぎているから飛べないだけで、痩せていたら飛べるかもしれないしね。
翼人族の三人は、私とベル君の事を少しだけ心配してくれているけれど、保護者役が其々にいることで反対はしていない。
そもそも私が一緒に行くことは彼らの希望でもある。ただ、小さな子供はダンジョンに連れて行かないというのが村のお約束だから心配してくれているのだろう。
私とベル君の戦い方、身の護り方、連携の仕方、ボス戦の時の対応方法等々、色々話し合いをしながら当日まで準備を進めた。
今回のダンジョンは、この村から一番近い〔スワンプの森〕というダンジョンだ。
このダンジョンで良い素材が沢山見つかれば、それは今後の食卓が充実することになるし、ダンジョンの素材はリポップするから販売することもできるようになる。
モフッコの布は既に予約が詰まっているくらいに人気だし、戦いは苦手だけど、村の役に立ちたいから運搬役を買って出てくれている翼人族の人たちもいる。
彼らが南部の商会まで完成したモフッコの布を持って行っているのだ。
今は持ち運ぶ量が少なくて依頼も少ないけれど、このダンジョンの素材によっては定期便が必要になるかもしれないからね。
「では行ってくる」
「今回は隅々までダンジョンを確認してくることになるからな、一月ほどかかる可能性がある。留守を頼むぞ」
「「いってらっしゃ~い」」
『気を付けていくのよ』
『ちゃんとご飯は食べるのよ』
『寝る時はお布団を肩までかけてね』
村人と、心配性のオカン精霊たちに見送られ、私たちは新しいダンジョンに向かった。
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