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村でのひととき
第283話 ハンモック風呂の完成
しおりを挟むアランさんの防具店に依頼してから3週間、ハンモック風呂の完成連絡が入った。
「おう、完成したぞ。
自分で作っておいてなんだが、これは良いぞ」
私とお父さんで使う2か所にロープを通せるタイプと、お兄ちゃんたちが使う通常タイプの2種類がテーブルの上に置かれている。
あれだけ呆れた顔をされていたのに 試作中に何度か使って その感触の虜になったらしい。
「包み込まれる感じが良いんだ。うっかり長湯になり過ぎるって事はあるけど、ダンジョンでその危険性はないだろ?
ヴィオ、これ商標登録してくれ、絶対に売れるぞ!
しかもうちなら素材に困らねえからな」
商標登録って カルタの時のあれだよね?
メリテントに行かなきゃダメじゃない?
「ギルマスに見せたら ダンジョンで使うやつはいねえが 旅先の宿に風呂が無い場合があるから 冒険者にも一部受け入れられるだろうって言ってたぞ。
商標登録してもらわねーと 作っても売れねえんだよ」
「アランさんが登録しちゃダメなの?」
「それは駄目だ。俺は職人として お前から構想をもらってこれを作った。
何となくこんな感じっつー適当なもんじゃなく、模型でも見せてくれただろう?
そこまでしてもらった物を 俺が登録して販売するってのは 職人として出来ねえ。それを一回でもしちまったら 今後の信用問題にも関わってくるからな」
真剣な表情でそう言われてしまえば 面倒だから権利はいらないなんて言えないよね。
さて、どうしようか。
「しばらくは 予定も入れておるわけじゃないしな。サブマスに一度相談してみようか。ヴィオも商業ギルドに登録しておけば 今後同じようなことがあった時に すぐ対応できて便利じゃしな」
「そうなの?」
「おう、前んときはお前がまだ小さすぎたからあれだけど、ってまだチビだけどよ。
冒険者ギルドに登録済の奴は ちょっと商業ギルド用の書類に書くだけで登録が出来る。カードも冒険者のカードと紐づけするだけだしな」
なんと、それは便利ですね。
手続きが早いのであれば 面倒にも巻き込まれずに済みそうじゃない?
「その場合 冒険者カードの刑罰に何もないのが必須じゃがな」
お父さんがアランさんの言葉に付け加えるけど、そっか、カードに犯罪者かどうかが記されるから それが身分証になってるって事なんだね。
◆◇◆◇◆◇
「ヴィオ、アルク、お前らマジで滅茶苦茶だな……」
ギルドに行って 商標登録の相談をしようとサブマスを呼んでもらったら、会議室にギルマスも一緒に来て 開口一番そんな事を言われた。
「ははっ、まあそうなんじゃがな」
「ですが 体験しましたが 素晴らしかったですよ?
畳めばマントより少し厚い程度ですし、何ならテントの下敷きとして使ってもいいではないですか。
あなたも体験して購入を決めたでしょう?」
サブマスが援護射撃をしてくれます。イケイケ!
「ったく、悪いとは言ってねーよ。確かに家で入るにしても良かったし、冒険者してたら風呂がねえ宿も結構ある。
水は自分で作れるようになったし、それこそ湯沸かしの魔道具くらいなら持ち歩いても良いと思う程度にはな。
ただな、ダンジョンで、風呂は、入らねえんだよ」
あうぅ!
アランさんと同じように デコピンしてこないでください。
おでこをサスサスしながら睨んでみるけど 全く効果はないようだ。ちくしょうめ。
「商標登録ですが 私もしておくべきだと思います。あれを作れる職人は少なくないでしょうが、アランが作るほど丈夫な一枚皮の物を作れる人は少ないはずです。
登録をしておけば アランが作った物に より価値が生まれます」
「そんなに違うものですか?」
「あのな、ヒュージボアはダンジョンにもいるけど ダンジョンで出てくるドロップアイテムは皮の場合は大概加工状態の一部だ。
一般の森でもいることはいるが、うちの森程でかいやつはいない。
うちのヒュージボアよりでかいボアはギガントボアっつーのがいるけど、こいつの場合は傷を最小限なんっつー手加減してたらこっちがやられる。
だから倒した時は お互いボロボロになってるんだよ」
「ええ、ですから 傷が極小で、かつ一体丸ごとを使える皮というのは非常に貴重なのです。普通は」
ああ、この村の人たちはちょっと普通じゃないもんね。
分かります、サマニア品質って事ですね。
「お前……」
「明日 メリテントの商業ギルドから職員が定期便でカルタの買取に来るのですよ。
ですのでその時に商標登録が出来るように準備してもらえるように伝えています。商業登録も一緒にしたいと告げたら喜んで準備をしてくると言ってましたからね」
「おお、メリテントに行かんでええんか?」
「はい、あちらに行けば 確実に商業ギルドの職員から目を付けられてしまいますからね。
今回来る人は 信用のおける相手ですから心配いりませんよ」
何という事でしょう。
メリテントにもう一度行かねばならぬと思っていたら 行かずに済みそうですよ。
なんだろうね、あの町が悪い訳じゃないけど 洗礼式シーズンで人が多かったのと 誘拐未遂があったから あまりいいイメージが無かったんで、行かずに済むなら良かったと思っちゃう。
「そしたら カルタの商標登録も ついでに書き換えれるかのぉ、今は儂が代理になっとるじゃろう?
今回風呂で登録するなら 代理にしておく理由もないしな」
「ああ、そうですね。それもついでにしてもらいましょうか」
次々に決まっていく事柄についていけないけど、まあとりあえず 明日商業ギルドの人が来たら 書類に記載して 登録をするって事ですね。
ギルマスたちも同席してくれるって言うんだから 何の心配もしていませんよ。
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