水の都~二十年越しの恋~

海野ことり

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⑳飲まれたのはどちらか−2(R−18)

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 善一の逢瀬の相手が彦十朗だと知って、駒は呆然自失となった。
 けれど甘く啼き出した彦十朗の声に、しなる身体に直ぐに魅入られた。
 感じ入った声、蕩けた瞳と快楽に顰められた眉、艶やかでありながら可愛らしいその姿は駒の初めて見るものだった。

(あの兄さんが、いつも綺麗で恰好良い兄さんがぐずぐずに蕩けて甘えている)
 駒は急激に身の内に湧き上がった衝動の激しさに焼かれてしまいそうだった。

(あの人が欲しい。僕もあの人を甘く蕩かしたい)
 これまで思いもしなかった感情に駒は戸惑って、そうこうしている内に身体を炙られたような彦十朗が机に突っ伏して小刻みに痙攣した。
 ナカに出されている。そう察して駒の中から戸惑いも躊躇いも消えた。
 僕もあの人の中を知って、あの人の中に出したい。
 イッてもなお律動を止めない善一に駒は激しく嫉妬した。
 そして想い合うように重なり合う二人の姿に堪え切れず、部屋へ踏み込んだ。

「狡い! あなたの可愛いところを善さんにだけ見せたりして!」
「こ……ま?」
 身体を強張らせる彦十朗の上で、善一がぼそりと言った。

「こうなると思った」
「ぜん……いち? ちょ、何がどうなって――」
 善一は混乱する彦十朗を引き起こして自分の前で抱えた。

「こま、悪いけど彦十朗を口説いてる最中だから邪魔しないで」
 そう言うと駒の前であるにも関わらず、善一は彦十朗の膝裏をヒョイと持ち上げて見えるように下から貫いた。

「んあぁぁっ! やぁ、やめ……っ!」
「こら、逃げるな。まだ俺でいっぱいになってない」
 逃げようとしてジタバタと暴れる彦十朗を善一は下から思い切り突き上げた。

「ひあっ!」
 振りなら兎も角、本当に感じているところを弟に見られて彦十朗は酷く狼狽した。
 それでも滑る内部の気持ち良さが自分を逃しちゃくれない。
 彦十朗は為す術もなく啼かされて、綺麗な爪先をピンと尖らせた。

「兄さん……可愛い」
 駒はうっとりと呟いてふらふらと二人に近付いていく。そして繋がった部分を見て自分の小さなイチモツを取り出した。
 いっぱいに拡がって善一のをすっぽりと受け入れた穴が、赤く色付いて中から出てきたもので濡れて、ぐにぐにと蠢いていやらしい音を立てている。

「兄さんの、ここ……凄いね。んっ……」
 自分達の繋がったところを見ながら駒が自分を慰めていると気付いて、彦十朗は羞恥に涙を流した。

「んんっ、見るなぁ!」
 可愛い弟に情けないところを見られて彦十朗は泣きながら善一に縋った。

「ぜんいち……ぜんいち、わたしを隠して」
 本当の自分を匿ってくれと言う彦十朗に善一の胸が甘く疼く。

「あんたは可愛い人だな。どれだけ抱いても……可愛くて堪らない」
(駒さえ成長すれば二人は上手くいくかもしれないけど、でも駄目だ。俺があんたを手放せない)
 善一は腕の中に閉じ込めた彦十朗を丁寧に抱いた。自分でいっぱいになってもう逃げられないように、本気で抱き潰した。
 それからすっかり忘れていた駒が自分達の足元で自らの手に白濁を吐き出したのを見て、話を付けなければいけないなと善一は思った。


 失神した彦十朗を奥で寝かせ、善一は駒に変わらぬ笑顔で語り掛けた。

「ごめんね、大事な師匠を盗っちゃって」
(これが意地悪ならこの人を嫌いになれたのに)
 駒は恨みがましい視線で善一を見上げた。

「僕は兄さんが好きだから――」
「うん、君も彼を可愛がりたいと――抱きたいと思ってるんだよね? そういう意味での好きでしょ?」
「…………」
 あんなところを見せられなければただの憧れで済んだのに。そう善一を恨む気持ちもある。

「どうしてわざわざ見せたんですか?」
「君をダシにすれば彦十朗が隙を見せると思ったから。それにどうも――君と最後までするのが乗り気じゃなくて、ちょっとした荒療治をしてでも逃げたかった」
「…………僕はそんなに重かったですか?」
「まあね」
(途中まではすっかり夢中になっていたけど、最後までは面倒だったんだよね)

「僕はただ、あなたに可愛がって欲しかっただけなのに」
 憎まれ口を婀娜っぽい眼差しで言い放たれ、善一は流石は役者だとちょっと感心した。

「でもねぇ、きっと最後は君の方が俺を捨てる事になったよ」
 最初の内はいいだろうが、いずれ可愛がられるだけでは物足りなくなる。そして自分を捨てるのだ。
 今まで拾ってきた子達がそうだったように。

「兄さんはあなたを捨てない?」
「捨てさせないよ」
 仕方なくではなく、どうしても手に入れたいと思ったのだ。失うなど冗談じゃない。

「困ったな。僕はあなたも好きだけれど、兄さんの方がもっと好きなんだ」
 キラリと目を輝かせた駒に善一は弱った笑みを浮かべる。

「やっぱりそうなるか」
 手強いなぁと善一は思う。元々が彦十朗だって駒を溺愛してきたのだから、愛を囁かれたらその気になっても不思議ではない。彦十朗は、自覚はないようだが愛されたいという願望がとても強い。

「彦十朗を口説きたかったらもっと大きくならないとね、おチビさん」
 駒の弱味を容赦なく衝いた善一に、しかし彼はにっこりと笑った。

「兄さんを感心させるような役者になって、それからあなたを守らせて下さいとお願いしますよ」
「…………」
 正直に言ってそうなったら善一に勝ち目はないのだが、それにはまだ時間が掛かりそうだから――その間にせっせと彦十朗に愛を囁こう。

(甘やかすのは得意なんだ)
 善一は強がりな佳人を思い浮かべてこっそりと笑った。
 本当は甘えたがりだなんて可愛い人だ。きっちりしていて濡れるのが嫌いで、その癖にそうされると嬉しいだなんて、可愛くて堪らない。
 全く蓮治も見る目が無いと、手放してくれた男に善一は感謝するのだった。
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