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本編
CoffeeBreak6.万里
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クリスマスパーティーを開いた夜、廉から電話が掛かってきた。
「廉! お前、よく電話を掛けられたな。あと、理央からお前の人形を貰った。それがすっごく本物みたいで、いや本物より格好良くて――」
「あー、ちょっと落ち着きなさいよ。こっちは皆寝てるんだからさ」
「あ……ごめん」
志貴は慌てて声を顰めた。きっと廉は相当な無理をして電話を掛けてきてくれてるのだろう。もしかしたら皆には隠れてこっそりと掛けているのかもしれない。見付かったら切られてしまうのかもしれない。
それは困る。久し振りの廉の声を少しでも聴いていたい。
「それで本物より格好良いって、どういう事かな? ん?」
わざと怒った声を出しながら、楽しそうに笑う声が漏れてしまう。そんな廉の声に胸を甘ったるく疼かせながら志貴は答える。
「廉がね、俺を想ってる時の顔だったんだ」
「……それは、恥ずかしいな」
優秀過ぎる、と戸惑う廉に、今度は志貴がクスクスと笑う。
「絶対に知ってる筈はないんだけど、でもそうなんだよ。お前が心の中で『愛してる・愛してる』って囁きながら俺の名前を呼ぶのが聴こえるようで、少し泣けた」
「志貴……」
僅かな時間、雄弁な沈黙が落ちる。そして――
「ん? もしかして、君の泣き顔を他の奴らに見られたのかい?」
「え? あー、どうかな」
嫉妬深い恋人の心情を慮って志貴ははぐらかしにかかる。
「俺の、泣き顔……」
独占欲丸出しの、それはそれは嫌そうな声で呻いた廉に志貴は嘆息を返した。
「あのさ、お前を思って流した涙だぜ? 寧ろ嫌なもん見せちまったなって――」
言いながら、走り去った燕司を思い出した。
燕司に想われている事は知っていた。けれど自分には廉以外ありえない。
どれだけ彼の不在が淋しくても、他の人が代わりになると考えた事は一度も無い。
「嫌な訳ないだろう。君の泣き顔は世界一色っぽくて可愛い」
「お前馬鹿だろう……」
いや知ってたけどよ。
うんざりしてたら低く囁かれた。
「想像しただけで、滾る程に君の泣き顔は可愛い」
「……れん」
無駄にイイ声で囁きやがって。もっと泣かせて欲しいなんて思っちまうだろ。
でもまあ、ここはノッておくか。
「どうやって、泣かせてくれる?」
「そうだな、まだ硬い後ろを押し開こうか? それとも君には与えないで、ずっと奉仕して貰おうか」
「口で?」
「口とその柔らかい手のひらで」
チュッ、と受話器からリップ音が聞こえてきて心臓が跳ねた。
わざわざ自分の掌にでも口付けたらしい。エロい奴め。
「キス……欲しいな」
「どこに?」
「俺も手のひらと、指を舐められて、手首を濡らされて……ん、我慢出来ない」
そう言うと志貴は自分の手をボトムの中に忍ばせた。
「…………志貴?」
「だって、お前の舌の感触を思い出しちまったら、我慢出来ねえもん。どこもかしこも舐められたい……」
志貴は「ほぅっ」と色付いた吐息を漏らした。
そんなものを電話越しに聴かされた廉は堪らない。
「俺だって君の全身を舐って味わいたい!お尻を高く掲げて強請る君の格好も拝みたいし」
「してやろっか」
「え?」
「全部脱いで、尻を上げて、お前に向かって広げようか?」
「……くそ、今度覚えてろよ」
「覚えてるうちに帰って来いよ」
軽く返された言葉に廉はゴメンと謝りかけ、謝ったら怒られるのが分かっているので言葉を飲み込んだ。代わりにわざと下品な言葉を投げかける。
「帰ったら抜かずの三連発だ。泣いて嫌がるまでするからな」
「俺が本気で嫌がった事、あるか?」
「…………ない」
ああ本当に敵わないなぁ、と廉は負けた気分で項垂れる。
「なあ、それより名前を呼んで?」
「え?」
「ほら、早く。指……さっきから入ってるんだけど」
「…………志貴、本当にそれ反則。頭がおかしくなりそうだ」
抱きたくて、今直ぐに君の中に入りたくて、と泣き言を漏らした男に志貴は熱い吐息を返す。
「んっ……指、ナカで開いて…………擦ると、気持ちー……んだ。イケ、そう」
「くそっ! 志貴志貴志貴っ! お前に逢いたい」
「れん……すき」
囁いて、志貴は小さく息詰まる声を聴かせてイッた。途端にガチャンと通話が切れて、志貴はくつくつと一人笑った。
これで次に逢った時が楽しみだ、とほくそ笑む。そしてふと顔を上げ、ローキャビネットの上に載せて置いた人形に目を止める
『愛してる』『志貴、愛してる』
廉が自分を呼ぶ声が確かに聴こえる。
「理央のやつ、天才だったんだなぁ……」
一部にマニアックなファンの付いている有名な人形作家だという事は知っていた。
けれど自分は人形に興味が無かったし、理央はまるで大作家先生らしいところがない控え目な子だったからすっかり忘れていた。
「奏太も大変だなぁ」
まるきり他人事の口調で呟いて、飽かずに人形をじっと見詰める。
「でもさぁ、俺の手元にこれがあったら淋しくないだろうなんて、ちょっと浅はかってものだぜ。こんなの見てたら、益々切ないっての」
『愛してる』
そのリフレインが愛しくて悲しい。
身代わりしかいない事が、悲しくて切ない。
「いつかあいつらにも分かる日が来るかな」
志貴はこつりと人形を指で突き、そしてベッドに引っ繰り返った。
「どうせなら、廉自身の形でも貰った方が嬉しかったね」
嘯いて、先ほどまで弄っていたところに指を這わせた。
「お前が帰ってくるまで、準備して待ってるから」
だから早く俺を埋めて。
空白を、お前自身で埋めてくれ。
志貴は物思いを振り払い、一人では広過ぎるベッドに爪先を滑らせた。
「廉! お前、よく電話を掛けられたな。あと、理央からお前の人形を貰った。それがすっごく本物みたいで、いや本物より格好良くて――」
「あー、ちょっと落ち着きなさいよ。こっちは皆寝てるんだからさ」
「あ……ごめん」
志貴は慌てて声を顰めた。きっと廉は相当な無理をして電話を掛けてきてくれてるのだろう。もしかしたら皆には隠れてこっそりと掛けているのかもしれない。見付かったら切られてしまうのかもしれない。
それは困る。久し振りの廉の声を少しでも聴いていたい。
「それで本物より格好良いって、どういう事かな? ん?」
わざと怒った声を出しながら、楽しそうに笑う声が漏れてしまう。そんな廉の声に胸を甘ったるく疼かせながら志貴は答える。
「廉がね、俺を想ってる時の顔だったんだ」
「……それは、恥ずかしいな」
優秀過ぎる、と戸惑う廉に、今度は志貴がクスクスと笑う。
「絶対に知ってる筈はないんだけど、でもそうなんだよ。お前が心の中で『愛してる・愛してる』って囁きながら俺の名前を呼ぶのが聴こえるようで、少し泣けた」
「志貴……」
僅かな時間、雄弁な沈黙が落ちる。そして――
「ん? もしかして、君の泣き顔を他の奴らに見られたのかい?」
「え? あー、どうかな」
嫉妬深い恋人の心情を慮って志貴ははぐらかしにかかる。
「俺の、泣き顔……」
独占欲丸出しの、それはそれは嫌そうな声で呻いた廉に志貴は嘆息を返した。
「あのさ、お前を思って流した涙だぜ? 寧ろ嫌なもん見せちまったなって――」
言いながら、走り去った燕司を思い出した。
燕司に想われている事は知っていた。けれど自分には廉以外ありえない。
どれだけ彼の不在が淋しくても、他の人が代わりになると考えた事は一度も無い。
「嫌な訳ないだろう。君の泣き顔は世界一色っぽくて可愛い」
「お前馬鹿だろう……」
いや知ってたけどよ。
うんざりしてたら低く囁かれた。
「想像しただけで、滾る程に君の泣き顔は可愛い」
「……れん」
無駄にイイ声で囁きやがって。もっと泣かせて欲しいなんて思っちまうだろ。
でもまあ、ここはノッておくか。
「どうやって、泣かせてくれる?」
「そうだな、まだ硬い後ろを押し開こうか? それとも君には与えないで、ずっと奉仕して貰おうか」
「口で?」
「口とその柔らかい手のひらで」
チュッ、と受話器からリップ音が聞こえてきて心臓が跳ねた。
わざわざ自分の掌にでも口付けたらしい。エロい奴め。
「キス……欲しいな」
「どこに?」
「俺も手のひらと、指を舐められて、手首を濡らされて……ん、我慢出来ない」
そう言うと志貴は自分の手をボトムの中に忍ばせた。
「…………志貴?」
「だって、お前の舌の感触を思い出しちまったら、我慢出来ねえもん。どこもかしこも舐められたい……」
志貴は「ほぅっ」と色付いた吐息を漏らした。
そんなものを電話越しに聴かされた廉は堪らない。
「俺だって君の全身を舐って味わいたい!お尻を高く掲げて強請る君の格好も拝みたいし」
「してやろっか」
「え?」
「全部脱いで、尻を上げて、お前に向かって広げようか?」
「……くそ、今度覚えてろよ」
「覚えてるうちに帰って来いよ」
軽く返された言葉に廉はゴメンと謝りかけ、謝ったら怒られるのが分かっているので言葉を飲み込んだ。代わりにわざと下品な言葉を投げかける。
「帰ったら抜かずの三連発だ。泣いて嫌がるまでするからな」
「俺が本気で嫌がった事、あるか?」
「…………ない」
ああ本当に敵わないなぁ、と廉は負けた気分で項垂れる。
「なあ、それより名前を呼んで?」
「え?」
「ほら、早く。指……さっきから入ってるんだけど」
「…………志貴、本当にそれ反則。頭がおかしくなりそうだ」
抱きたくて、今直ぐに君の中に入りたくて、と泣き言を漏らした男に志貴は熱い吐息を返す。
「んっ……指、ナカで開いて…………擦ると、気持ちー……んだ。イケ、そう」
「くそっ! 志貴志貴志貴っ! お前に逢いたい」
「れん……すき」
囁いて、志貴は小さく息詰まる声を聴かせてイッた。途端にガチャンと通話が切れて、志貴はくつくつと一人笑った。
これで次に逢った時が楽しみだ、とほくそ笑む。そしてふと顔を上げ、ローキャビネットの上に載せて置いた人形に目を止める
『愛してる』『志貴、愛してる』
廉が自分を呼ぶ声が確かに聴こえる。
「理央のやつ、天才だったんだなぁ……」
一部にマニアックなファンの付いている有名な人形作家だという事は知っていた。
けれど自分は人形に興味が無かったし、理央はまるで大作家先生らしいところがない控え目な子だったからすっかり忘れていた。
「奏太も大変だなぁ」
まるきり他人事の口調で呟いて、飽かずに人形をじっと見詰める。
「でもさぁ、俺の手元にこれがあったら淋しくないだろうなんて、ちょっと浅はかってものだぜ。こんなの見てたら、益々切ないっての」
『愛してる』
そのリフレインが愛しくて悲しい。
身代わりしかいない事が、悲しくて切ない。
「いつかあいつらにも分かる日が来るかな」
志貴はこつりと人形を指で突き、そしてベッドに引っ繰り返った。
「どうせなら、廉自身の形でも貰った方が嬉しかったね」
嘯いて、先ほどまで弄っていたところに指を這わせた。
「お前が帰ってくるまで、準備して待ってるから」
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