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第3章 公爵家編

54.暗殺専門の闇ギルド 『ナハト』

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固有魔法『ラーニング』の解析の力を飛躍させて
記憶を読み取る事に成功したウェル・ベルク。

そして、証拠を突きつけて犯人を突き止めた。


「もう一度言います。犯人はあなたです!」


犯人はロッドフォード家の執事であるコボルト。

ウェル・ベルクは犯人を追い詰める!


「……全く…記憶を読む魔法を持っている冒険者がいるとは聞いてないな…」


冒険者のことを調べているのか?
というかこれは自白と捉えていいのか!?


「…コボルトよ…お前が犯人なんだな…」


「そんな…コボルトさんが…」


「なんてこった…」


「私が子どもの頃から
仕えていたあなたがどうして?」


「クックック…残念だったな…。
コボルトとかいうジジイはもう死んださ」


するとコボルトと呼ばれていた人物は
顔をベリベリっとはがして、別の顔が現れた。


「…!!  だ、誰だお前は!?」


一同が驚く。
そして、俺も驚いた。

記憶を覗くと言っても相手が頭に浮かんだことの
断片しかできなかったからな。


「クックック…俺は暗殺専門の闇ギルド 『ナハト』のNo.8『ベルモット』だ」


闇ギルドだって!?

暗殺専門ってまさか!?


「…お前たちは貴族の暗殺を何度もしているのか?」


俺はベルモットに問いただす。


「まぁ、何度もといえばそうだな」


「…グランベル家を知っているか?」


俺は最も聞きたいことを聞いた。

エリスお嬢様の命を狙ってグランベル家を
あの日、屋敷を襲った闇ギルド。

名前すら分からず黒装束の集団だった。


「…あぁ…知っているといえば知っている…。
俺ではなく下級の集団に行かせたらしいからな!」


やはりな…ついに見つけたぞ…!!!!


「お前たちが…エリスお嬢様を襲った暗殺ギルドか!!!」


俺はついに見つけた。

あの日、地獄を作ったやつらを。


「なんなんだお前は?
グランベル家と関わりでもあるのか?」


俺はもうおっさんではなく
姿も変わっているからグランベル家の者とはわからないだろう。
それにコイツはいなかったみたいだし。


「…グランベル家…」


イーニアス様がポツリとつぶやく。

グランベル家を知っているのかな?


「…まぁ何にしてもそのエリスという令嬢は『カギ』にならなかったらしいからな!
骨折り損ってやつだぜ!」


そういえばエリスお嬢様が言っていたな。

グランベル家に伝わる秘密の『カギ』と。
いったいなんなんだ!?


「その『カギ』ってなんなんだ!?」


楽園の使徒『ラプラス』みたいに結構おしゃべりなやつっぽいから聞いてみた。


「おいおい何を情報聞き出そうとしているんだ!?
どうせお前らはここで死ぬからといって俺がペラペラ喋るとでも思ったのか!?」


うん、思った。
だってもう結構喋っているし。


「…随分自信があるんだな。
たとえウェルくんがいなくても私は腕に覚えがあるんでね」


そう言いながらジョーディ様は剣を抜いた。


「やれやれ…貴族様は己を過信し過ぎだね」


ベルモットは額に手を当てながら
小バカにするような物言いをする。


「君たちはもう俺のテリトリーに入っている」


テリトリーだと?
どういうことだ?


すると、突然、部屋中の壁や床に怪しい模様が浮かんだ。


「な、なんなんだこりゃ!?」


「なんて気持ち悪い文字ですか…」


恐らく魔法のスペルの類だろう。


「クックック…俺はこの部屋に入ったときから
固有魔法『ポイズンカース』の魔力を床に流し込んで部屋中を俺の毒魔法で満たしたのさ」


なるほど、こうなることを察していたのか準備のいいやつだ。


「ま、まずい!  皆の者!  ここから逃げるんだ!」


全員を逃がそうとするロッドフォード家の当主
イーニアス様。


「逃がすと思うか?
全員呪われるがいい。
『テリトリーポイズン』!!!!」


部屋中の壁の文字が動き出す。

だが、


「固有魔法『ポイズンカース』」


バリーン!!!!!!!!


部屋中に拡がった禍々しい魔力は
俺の魔法で相殺された。


「な、何が起こったんだ…」


突然のできごとに呆然とするベルモット。


「俺がお前の魔法を相殺したんだ」


固有魔法『ポイズンカース』の解除法は
使用者を殺すか、使用者の許可で解除することができる厄介な魔法だ。

ベルモットが毒の解除をするとは思えないから
使用者を殺すしかない。

しかし、どんな魔法でも全く同じ種類と威力でぶつければ相殺する。

毒を浴びる前ならできると思ったけどやはりな。


「相殺しただと!?
そんなことできるはずはねぇ!!」


「できるさ、同じ魔法をぶつければな」


固有魔法を同じ固有魔法でぶつける。
こんな相殺ができるのはラーニングを使いこなす
俺しかいないかもしれない。


「同じ魔法をぶつけるだと!?
そんなことできるわけねえだろ!
固有魔法だ!  世界で1つしかないこの魔法をぶつけることなんてできるはずが…!」


「固有魔法『ポイズンカース』」


俺は手のひらに固有魔法『ポイズンカース』の
魔力を集めた。


「な…ばかな…そんな…」


使用者だからこそこれだけでわかるだろう。
世界で一人しか扱えない自分の固有魔法が目の前にある事実を。


「は…ははは!!
なんの固有魔法か知らねぇが猿真似に過ぎねぇだろ!?
なら見せてやろう『ポイズンカース』の真の力をな!!!!」


するとベルモットは全身が黒く歪んでいった。


「な、なんて禍々しい魔力だ…」


ジョーディ様もこの魔力にはさすがに冷や汗をかく。



「はははははは!!!!!!
この周囲全体を一瞬で『ポイズンカース』をばらまくこの凶悪な俺の切り札!!!
じわじわと毒で苦しませて最終的には国すら滅ぼしたことがあるんだぜ!?!」


「こ、このままでは…」


「死ねええええぇ!!!!
『サークルポイズン』!!!!」














「『魔導気』制限時間1秒」


シュバ!!!!!!!!

ズバーン!!!!


一瞬のできごとであった。

誰もがその一瞬を見ることができなかった。



気がついたころには
ベルモットの首が斬られて宙に浮いた。
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