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第4章 ブルガンリルム王国編

64.悪役令嬢VS聖女

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リーズとエリスのバチバチのバトルムードに耐えるウェルとテンテン。

そして、ようやくクエストの現場に到着した。

ここは【ブルガンリルム王国】の城。

ブルガンリルム王国とは、

冒険者ギルド『ルミネスゲート』がある街
『シーサイドタウン』を含み、

国土は大きくもなく小さくもなく
ほのぼのとした豊かな国だ。


そして、一応リーダー(?)である犬族の俺が、代表してあいさつをする。


「すいませーん!  
治療のAランククエストを見て
やってきたA級冒険者です!」


今回のAランクのクエスト
『魔物との戦いで負傷した騎士たちの治療を求む』負傷者の人数は50人ほど。
軽傷者から重傷者まで幅広い。報酬は金貨20枚。

この案件は直ぐに出されていたためか
くわしい内容は書いていない。


城の門の前にいる兵士に話しかけて案内をしてもらうことにした。


「君たちが !  さぁこちらへ!」


そして、俺たちは城の中に案内された。


「こ、これは酷い…」


かなりの人数の負傷者たち。
いったいどんな魔物と戦ったのか。


「準備はよろしくて?」


「いつでも始められるのじゃ」


リーズとエリスお嬢様が合図を待つ。
今回のクエストはどちらが俺のパーティーのヒーラーに相応しいか勝負することになっている。

50人の負傷者でより多くの人数を治した人が勝ち。


「アタシがエリスを見るね!
ウェルはリーズをよろしくアル!」


審査員兼護衛としてついてきたテンちゃん。

リーズの審査は俺に託すという。


「待つのじゃテンテン。
なぜ、ウェルをそやつの審査をするのじゃ?」


嫉妬を理由に勃発したバトルなので
リーズに着くのが気に入らないエリスお嬢様。


「ウェルとあなたに侍従関係があるのでしたら
不正がないようにこの組み合わせにするのが
妥当ですことよ?
そんなこともわからないのですか?」


侍従関係があるなら
主人の言うことを聞かなければならない。

不正がないようにこの組み合わせになることは必然だと小馬鹿にしながら言うリーズ。


ゴゴゴゴゴゴゴ


リーズの挑発に怒りのオーラをぶっぱなすエリスお嬢様。
…帰りたい…。


「その生意気な口を黙らせてやるのじゃ!」


「望むところですわ!」


両者がバトルを開始。
同時に負傷者に近づく。


「我が名において来たれ光の精霊
生命の雫となる聖なる加護を、汝の光
手中に集い、癒しを捧げよ。
光魔法『エクストラヒール』!!」


光魔法『エクストラヒール』。

光魔法『ヒール』の上位互換で中級魔法。
1回で『ヒール』数回分に及ぶ回復魔法だ。


「き、傷が…!」


エリスはなんと一回で兵士の傷を全開近く癒してしまった。


そして、リーズの方は。


「召喚!  『ディア』!!」

リーズの手のひらからは妖精のように小さく
全身黄金の鎧に包まれた光の精霊『ディア』が現れる。


「行きますわよ!『ディア』!
聖なる加護を、汝の光、癒しを捧げよ。
光魔法『ディアヒール』!!」


リーズが詠唱するとディアが光だした。

そして、兵士は光に包まれてみるみる治っていく。


「す、すごい…」


リーズも一回で兵士の傷を全開近く癒してしまった。

精霊と自身の魔力を組み合わせたリーズオリジナル『魔霊力』。

精霊を媒体として自身の魔力を込めることで威力や効果が倍増するのだ。

どちらも引けを取らない戦いだ。


「そういえば魔法の詠唱って精霊って単語が出てくるけど魔法は精霊を司るのかな?」


素朴な疑問を浮かべたウェル。

すると隣にひょこっと髭の長い老人が現れた。


「魔法はもともと精霊を呼んで具現化する物と考えられていたのじゃ。
しかし、科学が進んで魔法というのがどういうものか明らかとなると精霊ではなく空気中にある『魔素』という素粒子を発見したのじゃ。
つまり、精霊の力を借りていたのは勘違いで魔素を操っていたのじゃ」


なんか凄い詳しい人が!?

なるほど。

魔力というのは魔素を操り具現化する力。
霊力というのは精霊の力を借りる。


「勘違いではあったが今さら広まった詠唱を消すことは誰にもできないのじゃよ」


実際のところ魔法学校などもあり
詠唱を一から作り直すのは至難の業。

世の中に広まった魔法の詠唱を治すことは難しい。


「なるほど。
それですと魔素と精霊を間違えて唱えているのに
何故、魔法というのが発動するのでしょうか?
そもそも詠唱というのは必要なのでしょうか?」


俺はさらに疑問が浮かぶ。


「ふぉっふぉっふぉ!  鋭いのう!
じゃが、そのことは何にも分かっていないのじゃ」


なんと!?


「一説には魔素の力を使っているが微精霊という小さな精霊に呼びかけることで発動するとか。
一説には布教した詠唱でイメージが固まっているからこれを唱えないと使えないとか。
一説には本当は詠唱を必要とせずイメージさえあれば誰でも無詠唱で魔法が使えるとか…」


一説が多すぎ!!!


「じゃが微精霊は霊力があるものでなければ感知できないので実験に協力してくれる霊力の持ち主がいないので証明ができずにいる。
イメージが大事なら誰でも無詠唱が使えるはずじゃが実際使えるのは一流の魔導師のみ」


なるほど。仮説があるけど立証されていないのか。
この世界でも魔法は不思議なものなんだな。


「ちなみに精霊を呼んで従わせることができ、
精霊の力を借りることができるのは霊法じゃ。
精霊との絆が大きければより大きな力を借りることができる。
これを霊力というのじゃ」


なんだがすごい話を聞いたぞ!?
というかこの御老人何者!?


「ウェル!!  
余所見してないでちゃんと数えて下さってますの!?」


やべ、リーズに怒られた。


「大丈夫!  ちゃんと数えてるよ!」


御老人の話を聞きながらも俺はちゃんと審査をしている。

果たしてどちらが勝つのか!?
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