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第6章 ギルドバトル編

105.深淵の闇魔法

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豹変したウェルが来る少し前。
こちらはギルドマスターたちの控え室。


「さーて…ルビーがS級冒険者を倒したことだし
そろそろこちらもトドメを刺しましょうか」


闇ギルド『ナハト』のNo.2 ウォーカーにギルドマスター全員が倒されてしまい、為す術もなく殺されようとしていた。


「君たちのレベルがこんなものなら、とっととこの国を攻めて滅ぼせばいいと思ったよ。
次にここへ来るときは総出て迎え撃とう」


ギルドマスターを殺して。
冒険者たちを殺して。
会場の市民たちを殺して。

その後、国を侵略する準備をするという。


「な…舐めやがって…。
強いとはいえ…たかが1つの闇ギルドに潰されるほど弱い国ではないぞ!!」


ルミネスゲートのギルドマスター『ゲルド・ダスティン』が言う。


「なんなら試してみるか?
と言いたいところだが
私たちだけのわけないでしょう?
うちのバックには大物がいるんだよ」


『ナハト』の後ろには大物がいる?
どういうことだ?
と思うゲルド。


「まぁ…今から死ぬお前たちには関係ないか」


手を差し出してトドメを刺そうとするウォーカー。


「待て!!!」


女性の声で制止するウォーカー。


「おやおや…生きていたのか?」


ウォーカーの目線の先には
エリス・グランベルの専属メイド『ココ』がいた。


「…な!  ココ!  どうしてここに!?」


驚くゲルド。


「ナハトの情報を伝えようと命からがらで
ここまで来たのです」


ココは自分たちを暗殺しようとしていた闇ギルドの調査をするためずっと単独で行動していた。

有力な情報を掴んだのだが途中で殺されそうになったという。


「この状況で【我々の情報を得た】なんて言うとは死ぬつもりかい?」


「どのみち全員殺すつもりでしょう!!」


ココが剣を構えると。


ズドーーーン!!!

会場の方から凄い音が聞こえてきた。


「な、なんですか…?」


ココは凄い音が気になるが剣の構えを崩さない。

すると、ウォーカーはココを無視して会場が見渡せる位置に移動した。


「おやおや…面白いことになっているね?
一旦中断して見物しようか?」


会場を眺めようとココを誘うウォーカー。


「な、何をバカな…!」


と思ったのだが反撃の隙がない。
1秒あればいつでも殺せるという余裕を見せつけているようだ。

渋々会場を見ると


「…ウェル!?   …なのか…」


そこには半分黒に染まって黒い瞳になり
禍々しい闇の魔力を放つウェルがいた。


そして『ウィークネス・ギャザリング』 により
S級冒険者のレオン及び、会場に倒れている冒険者全員の力を吸収したバケモノになるルビー。

ルビーの身長は軽く10mほどあり
身体は黒く肥大化していき、悪魔のような容姿となる。

その姿になったらすぐに巨大な拳で
豹変したウェルを潰そうとする。



ズバーーーーン!!!!




しかし、ウェルは瞬時に飛んで巨大化したルビーの
腕を切り落す。


「ぎゃああああああああああああぁぁぁ!!!
俺の!!!   俺の腕があああぁぁぁ!!!!」


痛みとショックで叫び出すルビー。

するとウェルは空を飛び回り、容赦なくルビーを切りまくる。


ズバババババババ!!!!!!!!


「ぐぁああああ!!!」


ルビーの声は一切届いていないように攻撃を休めることのないウェル。


ズバーーーーン!!!!


右足を切り落す。


ズバーーーーン!!!!


次に左足を切り落す。


「ぎぁああああぁぁぁ!!!!
ちょ…ちょっ……ま!!!!」


ズバーーーーン!!!!


更にもう片方の腕を切り落とした。
全く反撃ができないまま四肢を切り刻まれるルビー。

ついには会場にその巨体が倒れる。


ズドーン!!!!!!!


「…あ…が…」


瀕死でとても抵抗できる状態ではないルビー。

そこへ何も言わずに剣を向けるウェル。


「ま、待った!!  俺の負けだ!!」


ルビーの声に止まる様子のないウェル。


「ま、魔が差しただけなんだ!
二度とやらねぇよ!
誓うから!
な!?
見逃してくれ!!!」


先程までの残忍っぷりが嘘のように命声をするルビー。


「……ゲスが…」


そのルビーの命声に反応したのか
ウェルが喋り出す。


「…お前の殺してきたヤツらには命声をする者もいただろう。
止めるどころか楽しみながら殺したんじゃないのか?
お前の心は闇に染まりきっている」


とてもウェルとは思えない口調で喋り出す。
今のウェルには心の闇が見えるようだ。


「地獄の底で後悔するがいい」


ウェルは剣を振りかぶる。


「ま、待て!!!」


「『闇夜の剣(やみよのつるぎ)』」


一瞬だけ空が暗くなった。


ズバーーーーン!!!


「が…」


ルビーは会場ごと一刀両断された。


ズガガガガガ!!!


斬撃は会場の外まで続いて大地をも切り裂いた。


「わあああああ!!!!!」


会場にも人がいるのだが
幸いにも誰も当たらずに済んだ。


「ほほぅ…これはなかなか…。
まるで『深淵の闇魔法』だ…」


それを見ていたウォーカー。
驚いてはいるが驚異には感じていない上に
何かを知っているようだ。


「…ウェル…どうしたというのだ…?」


その豹変したウェルの姿と力に異質を感じる。


「彼は私を見ているみたいだ。
次は私が標的かな?」


ウェルはウォーカーがいるギルドマスターの控え室を見ていた。


「……殺す…」


ウォーカーをにらみつけながら、ウェルがボソッと言うとそこへ向かってと飛ぼうとする。


「ウェル!!!   戻ってくるのじゃ!!」


そこへエリスが駆けつけた。
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