先生、いきなり人の後ろから壁ドンするのはどうかと思います!【番外編連載中】

あか

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本編

屋上で明かされるのは 3 ※暴力表現あり

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ーー刺そうと、したのだろう。

「……そう。それで?君の話は、それでおしまい?」
「え?」

けれど。
そう言われたからと言って、彼の前で情けない姿を見せるつもりは、ない。
ここで悔しがったら、間違いなく横道の思うツボ、だということが理解できたからだ。



「……俺が先生のこと好きだから、ナニ?先生本人から詰られるなら、ともかく。あくまで部外者の君からそれを、とやかく間に割って入られる筋合いは、ない」

どうせ、気持ちはバレてるんだから。
これ以上、弱くなった気持ちは絶対見せてやらない。

ーーコイツにだけは、絶対。

「……同性からの好意に拒否反応を見せる先生が、俺を避けるのは仕方ないとして。

そんなことが本当に、先生がお前のことを見てくれる証拠にでもなってると、心から思ってるの?本気で??」

「……っ!」

ビクリ、と横道が肩を震わす。
それでも、俺は容赦する気はなかった。



「俺の気持ち、告げ口して、だから?それで先生が俺のことを嫌いになってもさ。先生が横道に興味を持つかどうかは、また別問題だろ?」
「…う、うるさい!そーゆーの、負け犬の遠吠えって言うんだぞ!」
「かもね?……でも、それは俺と先生の問題だ。君にはまるで、関係ない」

だから勝ったも負けたも、関係ない。
なぜなら、先生は彼の情報を使って、俺を判断したに過ぎないのだから。

その判断材料だって、彼の打算についての考慮はまるで入ってないだろう。もし微塵でもあるとしたならば。今頃、先生は彼への感謝を表すために、もう少し態度が柔らかくなってるはずだろうから。普段粗暴な態度ばかりだけど、変なところで先生は義理堅いところ、あるから。
俺の言葉で詰まったということは、つまりまあ、そういうことだろう。

「……そんなに先生のことが好きなら、自分で努力してアピールすればいいだけの話だろ。勝手に俺を巻き込まないで」

「は⁉︎……べ、べべべ別に!俺はナオトみたいに、ホモ的な意味で好きなわけじゃねーし!
……俺はただ、アキとも友達になりたかっただけだもん!
ナオトみたいな汚ぇ感情と一緒にすんじゃねーよ、気持ち悪い!!!」

焦ってそう、罵倒する彼を見て。



(ーーそう、か。この、気持ちは。
彼と比べて気持ち悪い……か)


そんなこと、自分の気持ちに気付いた時からーー分かっていた。


頭のどこかで、ブツリと、切れる音がした。

「……そうだね。君のその気持ちに比べれば。確かに俺の気持ちは、傍から見て気分悪いことこの上ないものかもしれないね」
「な、何言ってんだよっ!きゅ、急に褒めたって、何にも出ないんだからなっ」

褒めてないよ、嫌味だよ。
そう言いたいが、さっきから頭がガンガンするせいか、思考がちゃんとできないで、ぼんやりしたままだ。目の前の少年の姿が、二重に見える気がする。


「ーーじゃあ。君の“綺麗”な気持ちは、そんな俺の“気持ち悪い”感情に負けてしまうと思ったから、勝手に俺の気持ちを先生に告げ口したんだね」
「………」

目の前の少年の空気が、一気に冷たくなったような気がした。
けれど、溢れ始めた俺の言葉は留まることはもう出来ず。とめどなく、言葉が湧き出てくる。

「……そもそも先生は、さ。自分の感情にバカ正直な人だから。面倒くさい奴には面倒くさい反応をするし、それなりに気に入った奴にはそれなりの反応をするよ」

そう、先生は大人げない。
でも、裏を返せばそれは、良くも悪くも自分の気持ちに正直に生きている、と言うことだ。
だから、おそらく。
俺のことを告げた後、マシンガンのごとく話しかける彼に構うのも面倒くさいから放置してたのかもしれない。傍に置くようになったと思わせて、追いやるのすら面倒で全部適当に聞き流しているだけかもしれない。……全部、俺の希望的観測なのだけれど。

でも、俺の言葉に彼が反応してるってことは。あながち、その考えが間違ってるわけじゃないんだと思う。

「楽しい?他人の気持ちを勝手に暴いて、告げ口して。君にとってただの知り合いでしかない俺と先生の関係、滅茶苦茶にして」

もし、これが。本当に自分の気持ちが、先生に漏れ出てしまった結果、バレたとしたら。いつの日かは、深い傷もカサブタが出来て、綺麗な思い出に何とかできたのかもしれない。
……それを、コイツが。
この目の前の悪魔が、ただ自分を見てほしかった。そんな理由で、俺たちの関係を滅茶苦茶にしてしまったのだ。
恨みごとの一つや二つ、言ったところでバチはあたらないだろう。
頭も朦朧としてきた。今の俺には、言葉を選ぶ余裕すらなくて。


「そういう、無神経なお前のことなんて。先生が好きになるわけ、ないじゃん」

つい零れてしまった言葉が。
彼を否定してしまうものであると気付いたのは、実際口に出してしまった後だった。

「……っ!!」

そんな俺の言葉が、癇にさわったのだろう。

左頬に衝撃が伝わって、一瞬頭が真っ白になり。次に気が付いたときには、曇りがかった空が、目の前に綺麗に広がっていた。

ーー直後、後頭部に激痛が走る。


「ーーっ⁉︎」

あまりの痛みに気を失いかければ。今度は腹に激痛が走り、無理やり意識が戻る。
何とか瞼を開ければ、顔を真っ赤にした横道が俺を睨みつけていた。そして、また俺の腹に、何か重いものが断続的にのしかかって来る。

「違うもん!アキは俺のことが嫌いとか、そんなワケじゃ、ないもん!!そうじゃなきゃ、俺がまとわりついても、怒らなくなったし!!俺の話、聞いてくれたりなんて、しねーんだもん!!!」

まるで、子供のような癇癪だ。力の制御出来ないモンスターが、暴れて地団太踏んでいるように見えた。

……もしかしなくても、俺の腹を上から何度も踏んづけてきているのだろうか?どおりで、さっきから苦しいし、痛い訳だよ……なんて。他人事のように考えてしまう。痛すぎて、現実逃避してきたかも、な。

「なのにワケわかんないこと言うなよっ!確かに、アキは俺に全然笑いかけてくれないけどさぁっ!ずるいぞナオトっ、お前はアキの嫌いなホモのくせに……っ、ずっと、笑いかけてもらいやがって……この、卑怯者!!」

……あーもー。ホント、うるさい。
身体中お前のせいで痛いし、頭痛までしてきたせいで、俺の耳にはアイツの言葉の意味が右から左にしか流れていかない。

何か言ってるのは、何となく聞き取れるけど。頭痛はどんどん酷くなるし、どこもかしこも痛いし。言い返すことすら、しんどい。

「……おいっ!人の話聞いてるのかよ、ナオト!!」

ぼんやり考えていると、俺が返事すらできないことに気付いたのだろう。いつの間にか無理矢理上半身を起こされ、胸倉を無理矢理掴んできた。

「とにかくっ!お前は、俺のことが羨ましいからそんなことを言うんだ!俺のことを僻んでるから、俺が先生に嫌われてるとか!!ありえないことを言うんだ!!!」

その言葉だけは鮮明に聞こえて、すぐさまそれは違う、と思えた。
だって俺、あの日までは先生に信用してもらえたワケだし。
仲良くなるスタートラインに立てなかったコイツよりはマシ、なんだよなぁ。
まあ、敢えて言えばそう、だなあ。


「…れ、…の、が」
「は!?聞こえねーよ!ちゃんと喋れよ、ガキじゃないんだから!!」

そうやって、自分こそ子供っぽく耳元でがなりたてる彼を振り払う力を持たなかったけれど。それでもなんとか、口を何度も開ける。


「……ぉれ、のが。せんせぇ、好き、だ」

「ーーーーは?」

「きらわれ、ても…俺は好き、だから……俺のが、先生、好き」

何を言ってるんだろう、と自分でも思う。
多分、会話にすらなってないんだと思う。
それでも、言いたかったんだ。どうしても、横道に。


「だから、俺のか、ち。せんせぇ、いっしょ、だから……」


誰かと距離を近づけるのが苦手な先生が、ほんの少しでも、俺に気を許してくれて。
俺の真意を見極めるためだとしても、もう少しで肌が触れ合いそうなほど近付いてくれて。

ーー全部それは、先生からだから。

だから、お前と比べたら。俺の、勝ち。


……まあ、結局盛大にフられた訳だから。今となっては、横道とは同じムジナの穴、なんだけどな。

「……ぅ、るさい。うるさい、うるさい、うるさい!!!何ヘラヘラ、笑ってんだよ……この、ホモ野郎が!!」

何もしてないのに、いきなり逆ギレした横道から、右頬に強い拳を貰ったことで、また意識が飛びかけて。今度は、頭と背中にも、激痛が走った。


(ーーっ、なんて、馬鹿力、だ……っ)

先ほどのダメージが蓄積された上、受け身もまともにとれなかったせいで、思いっきり頭をぶつけてしまったようだ。
もう、意識を保つのも、限界だ。
いい加減、自分の力で立ち上がろうと試みるも……ご飯もまともに食べられないくらい弱っていたところに、怪我までさせられたせいで力が、入らない。

……参ったな、本当に。
俺、もしかして死んじゃうのだろうか。
というか、殺される?まあ、いくら彼でもそこまではしないと思いたいけど。

ーーでも、それはそれでいいかもしれない。
先生に嫌われた世界で、生きていける自信なんかないし。
なーんて、ね。さすがに情緒不安定過ぎだな、俺。

……あー、でも。もし、このまま意識失ってしまって、本当に死にかけたら。

ちょっとは先生、心配してくれないかなぁ?例え自分に想いを寄せてくる迷惑で気持ち悪い生徒だとしても。


先生。
先生……。




(会いたい、なぁ……)

こんな時まで、先生の顔が脳裏によぎってしまう俺は、もう末期だったのだろう。
だって。




「ーー何をしている、お前ら」

すごく、冷たい声だったけど。

聞き慣れた、あの人の声が聞こえてきたから。




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