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本編
伝えたいこと、伝えるべきこと 3
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「……あの日」
「え?」
唐突に発せられた言葉に、俺は間抜けな声をあげる。けれどその事に気にした様子もなく、先生はただ、強く抱き締めてきた。
「……あの日、1週間前。お前にしつこく、聞いたのは。横道の言われたことが本当か、確かめたかったからだ」
唐突に出てきた元凶の名前に、俺はピクリと体を震わせる。その様子に気付いたのか、先生は落ち着かせるように俺の背中を優しく撫でてくれながら、先を続ける。
「……今から2週間ぐらい前、だったか。たまたま教室棟の方へ用事が会った時、あの宇宙人と鉢合わせちまってな。面倒だからとっととずらかろうとしたが、しつこいぐらいに話しかけられたんだが。
その時、言われたんだ。お前が、俺のこと好きなんだと知ってる、ってな」
「……っ!」
思わず腕から振り払おうともがくが、大怪我したばかりの体では思うように振り払えず。先生も、俺の反応など予想していたのか、先程よりも強く、しっかりと抱きしめたままそのまま続ける。
「まあ、そのことに驚かない訳じゃねぇけど。
……かもな、とも思った」
「ぇ……?」
抵抗することをやめて、思わず視線を上げれば。困ったように眉を下げた先生の顔と、目が合った。
「……言われて、思い出してしまえば。お前がたまにこっちを見るときの妙に強い視線も、俺が告白を台無しにする度に、なんとも言えない顔をしていたことは、知っていた。……それをただ、見ないふりをしていただけだと、気付いた」
まあ、それでも信じてたわけではないけどな、と髪の毛をわしゃわしゃ掻きむしった。
「……お前は、自覚はしていないだろうが、優秀だ。まあ、最近生意気なところあるし、ついでに小言もチクチクうるさい。そうやって、俺が何かする度に、プリプリ怒ったりして、からかい甲斐があるところは悪くないんだがな。あとは、そうだな……バカみたいにお人好しがすぎるところがあるのは、時と場合によっては考えものだな?」
……俺は今、優しい声でひどいことを言われているワケなのだが。ここに来てお説教でもされてるのだろうか?あと最後の部分については、そのまま熨斗つけてお返ししたいところですね。
「基本的には素直だし、頭の回転が早いからか臨機応変な動きもできて、助手としても便利。備品の管理と若いながらしっかりしてくれるしな。
それから、俺より生徒へのフォローがうまいからとても助かってる。泣きわめく生徒を宥めるなんざ、俺は苦手だし」
いつの間にか、俺への悪口が、褒め言葉に変わっていて。それが少し、むず痒くなってきた。
「……それは。評価しすぎ、じゃないですか?」
そこまで、自分のことを見て貰えてるとは思わなかった。
そもそも、最初のこの人との出会いも、先生にしてみればよくあることだっただろう。
その後も、無理やり先生の腕に惚れこんで助手に志願したけど、渋々といった様子で承認してくれたし。
生徒の相手と言っても、普段は先生が対応してるし。そりゃあ、たまに俺が代わりに話しかけることもあるけど。大抵は先生の尻拭いしてるだけだし。
「そうか?俺から見た普段のお前の感想そのままを言っただけだが」
そう言って、俺を誉め殺しにされても。
どう反応すればいいか、わからない。
「……だから、だろうな。俺は。そんなお前に、無意識に甘えちまったんだ」
ふと目線を下げて、懺悔するかのように、一瞬だけ、固く目を閉じられた。
「……あの宇宙人の言葉が、嘘であれ本当であれ。お前なら、うまくいなしてみせるだろうと。俺の戯れに怒ろうが、呆れようが。どちらにしろ、いい着地点を見つけて、『なんでもない』ことにしてしまうだろう……と」
お前の気持ちを、無意識に蔑ろにしてしまった。
好きな相手である俺自身が追い詰めることで、どれだけお前を傷つけてしまったか。
挙句、フォローもせず中途半端なまま、1週間も放置してしまった。
俺の監督責任不行き届きだ。
……本当に、すまなかった。
そう、頭を下げられてしまった。
「……」
と同時に、横道に対しての苛立ちが募る。
……本当に、余計なことをしてくれたと思う。
彼が言わなければ、先生も見て見ぬ振りをし続けてくれたのだろう。
俺が卒業するまでの、もう長くもない限られた時間ぐらいまでは。
「……なら、なおさら。なんで、優しくするんですか?」
「あ?」
俺の問いに、先生は訝しげにする。
「俺の気持ち、分かってますよね?だから、…優しくされると、勘違いしたくなる、というか…」
俺だって男だ。だからこう、いくら怪我人であると言っても、ここまで親切にして貰って、挙句抱きしめられたなら。もしかしたら、まだ期待してもいいんじゃないかって。
「意味が分からん。お前、もうちょっと簡潔に喋れ」
「……先生。それ、わざとじゃないですよね?」
……当の本人は、そんな俺の複雑な気持ちをわかっていなさそうな上に、態度がまるで変わらないから、多分そういうつもりではないんだろうけど。
どう捉えればよいか分からない振る舞いをする先生に、俺は頭を抱えたくなった。
今もまだ抱きしめられたままなので、両腕は動かすことが出来ないのだけど。
「さっきも言っただろう。甘やかすのは、俺の勝手だって」
「……だからそれがわからないんですって!俺は貴方が大嫌いな、ホモ野郎だっていうのに!!」
あまりにも平然としている先生に苛つき、勢い余って大声を出してしまう。
息を荒げる俺に、先生から強く視線を感じて。何となく居心地が悪いような気分だ。
「……月島。お前さぁ」
急に名前を呼ばれ、体がビクリと震える。
が、次の一言で、思わず脱力した。
「そんな大声出すと、今度は貧血で倒れるぞ?今日やっと会話出来るほど回復したばっかだってのに」
「……先生、それ、本気で言ってます?」
わざと言ってるのか、それとも天然なのか。
……いい加減逆ギレしてもいいよね?俺。
「え?」
唐突に発せられた言葉に、俺は間抜けな声をあげる。けれどその事に気にした様子もなく、先生はただ、強く抱き締めてきた。
「……あの日、1週間前。お前にしつこく、聞いたのは。横道の言われたことが本当か、確かめたかったからだ」
唐突に出てきた元凶の名前に、俺はピクリと体を震わせる。その様子に気付いたのか、先生は落ち着かせるように俺の背中を優しく撫でてくれながら、先を続ける。
「……今から2週間ぐらい前、だったか。たまたま教室棟の方へ用事が会った時、あの宇宙人と鉢合わせちまってな。面倒だからとっととずらかろうとしたが、しつこいぐらいに話しかけられたんだが。
その時、言われたんだ。お前が、俺のこと好きなんだと知ってる、ってな」
「……っ!」
思わず腕から振り払おうともがくが、大怪我したばかりの体では思うように振り払えず。先生も、俺の反応など予想していたのか、先程よりも強く、しっかりと抱きしめたままそのまま続ける。
「まあ、そのことに驚かない訳じゃねぇけど。
……かもな、とも思った」
「ぇ……?」
抵抗することをやめて、思わず視線を上げれば。困ったように眉を下げた先生の顔と、目が合った。
「……言われて、思い出してしまえば。お前がたまにこっちを見るときの妙に強い視線も、俺が告白を台無しにする度に、なんとも言えない顔をしていたことは、知っていた。……それをただ、見ないふりをしていただけだと、気付いた」
まあ、それでも信じてたわけではないけどな、と髪の毛をわしゃわしゃ掻きむしった。
「……お前は、自覚はしていないだろうが、優秀だ。まあ、最近生意気なところあるし、ついでに小言もチクチクうるさい。そうやって、俺が何かする度に、プリプリ怒ったりして、からかい甲斐があるところは悪くないんだがな。あとは、そうだな……バカみたいにお人好しがすぎるところがあるのは、時と場合によっては考えものだな?」
……俺は今、優しい声でひどいことを言われているワケなのだが。ここに来てお説教でもされてるのだろうか?あと最後の部分については、そのまま熨斗つけてお返ししたいところですね。
「基本的には素直だし、頭の回転が早いからか臨機応変な動きもできて、助手としても便利。備品の管理と若いながらしっかりしてくれるしな。
それから、俺より生徒へのフォローがうまいからとても助かってる。泣きわめく生徒を宥めるなんざ、俺は苦手だし」
いつの間にか、俺への悪口が、褒め言葉に変わっていて。それが少し、むず痒くなってきた。
「……それは。評価しすぎ、じゃないですか?」
そこまで、自分のことを見て貰えてるとは思わなかった。
そもそも、最初のこの人との出会いも、先生にしてみればよくあることだっただろう。
その後も、無理やり先生の腕に惚れこんで助手に志願したけど、渋々といった様子で承認してくれたし。
生徒の相手と言っても、普段は先生が対応してるし。そりゃあ、たまに俺が代わりに話しかけることもあるけど。大抵は先生の尻拭いしてるだけだし。
「そうか?俺から見た普段のお前の感想そのままを言っただけだが」
そう言って、俺を誉め殺しにされても。
どう反応すればいいか、わからない。
「……だから、だろうな。俺は。そんなお前に、無意識に甘えちまったんだ」
ふと目線を下げて、懺悔するかのように、一瞬だけ、固く目を閉じられた。
「……あの宇宙人の言葉が、嘘であれ本当であれ。お前なら、うまくいなしてみせるだろうと。俺の戯れに怒ろうが、呆れようが。どちらにしろ、いい着地点を見つけて、『なんでもない』ことにしてしまうだろう……と」
お前の気持ちを、無意識に蔑ろにしてしまった。
好きな相手である俺自身が追い詰めることで、どれだけお前を傷つけてしまったか。
挙句、フォローもせず中途半端なまま、1週間も放置してしまった。
俺の監督責任不行き届きだ。
……本当に、すまなかった。
そう、頭を下げられてしまった。
「……」
と同時に、横道に対しての苛立ちが募る。
……本当に、余計なことをしてくれたと思う。
彼が言わなければ、先生も見て見ぬ振りをし続けてくれたのだろう。
俺が卒業するまでの、もう長くもない限られた時間ぐらいまでは。
「……なら、なおさら。なんで、優しくするんですか?」
「あ?」
俺の問いに、先生は訝しげにする。
「俺の気持ち、分かってますよね?だから、…優しくされると、勘違いしたくなる、というか…」
俺だって男だ。だからこう、いくら怪我人であると言っても、ここまで親切にして貰って、挙句抱きしめられたなら。もしかしたら、まだ期待してもいいんじゃないかって。
「意味が分からん。お前、もうちょっと簡潔に喋れ」
「……先生。それ、わざとじゃないですよね?」
……当の本人は、そんな俺の複雑な気持ちをわかっていなさそうな上に、態度がまるで変わらないから、多分そういうつもりではないんだろうけど。
どう捉えればよいか分からない振る舞いをする先生に、俺は頭を抱えたくなった。
今もまだ抱きしめられたままなので、両腕は動かすことが出来ないのだけど。
「さっきも言っただろう。甘やかすのは、俺の勝手だって」
「……だからそれがわからないんですって!俺は貴方が大嫌いな、ホモ野郎だっていうのに!!」
あまりにも平然としている先生に苛つき、勢い余って大声を出してしまう。
息を荒げる俺に、先生から強く視線を感じて。何となく居心地が悪いような気分だ。
「……月島。お前さぁ」
急に名前を呼ばれ、体がビクリと震える。
が、次の一言で、思わず脱力した。
「そんな大声出すと、今度は貧血で倒れるぞ?今日やっと会話出来るほど回復したばっかだってのに」
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……いい加減逆ギレしてもいいよね?俺。
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