先生、いきなり人の後ろから壁ドンするのはどうかと思います!【番外編連載中】

あか

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本編

エピローグ

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※本編終了後、十数年後のお話。
2人がなんやかんやあって無事恋人同士となり、同棲するようになってから、しばらくあとのお話です。
厳密には未来のお話ですが、あえて本編として組み込んでます。

ナオトくんが、アキ先生との幸せはずっと続くものだ、と確信した時のお話です。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー

その日は、突然だった。


いつものように、大好きなこの人と休日を過ごして。
美味しいご飯を一緒に作って、食べて、笑って。
テレビを見ながらあの人がお風呂から上がってくるのを待って、交代で俺がシャワーを浴びに行く。
戻ってきたら、いつの頃からか習慣化された、2人のコーヒータイムが始まって。
どちらかがつけたテレビから、昔からある旅番組のオープニング曲が流れてきて、なんとなくお互い黙って、しばらく一緒に見てみる。
時折コーヒーカップを口につけながらふと、横目でちらりと見やると。特に面白くもなさそうに見ていたその人の瞳が、俺の方に向いてくれる。

「どうした?ナオ」

ーーいつから、だったっけ。
この人が、俺の名前を愛称で呼んでくれるようになったのは。

「ううん。なんとなく、気になっただけ」
「そうか。コーヒー、美味いか?」

ーーいつから、だったっけ。
こうして俺に飲み物くれたりとか、わかりやすく甘やかしてくれるようになったのは。

「うん。先生のコーヒー、いつも美味しいよ」
「そうか。お前が生徒の頃は、俺が世話されてたからな。あの頃は絶対しなかっただろうな」

ーーいつから、だったっけ。
何でもなくても、優しい笑みを見せてくれるようになったのは。



コトリ、と。カップを目の前のテーブルの上に置いて、改めて先生…だった人の顔を、見つめ直す。

休み前だからか、少し伸びた無精髭。
彼に似合う、シンプルながらもよく似合う部屋着。
そして、俺に向けられた、優しい笑顔。

学生だった俺は、こんな姿の『先生』を見られるなんて、思ってもみなかった。

だけど、確かに。
大人になった俺は、あの時の『先生』と、恋人同士で。

ーーこの優しい人とこれからも、ずっと。


「……先生……ううん。


    ーー『アキ』」

「んー?」

「……。俺の事、好き、なんだね」


そんなの、恋人になってくれた時から分かっていたのに。
そんな、今更なのに。

そんなことを、つい、聞いてしまった。


「ああ。当たり前だろ?

   ナオは俺の、大事な連れ合いなんだから」


気持ちが通じあってから、何度も言ってくれた言葉。
何度も、伝えてくれた。

なのに、今更。
目の奥が熱くなって、視界が歪む。


「……先生。ア、キ……っ」
「ん?」
「お、れ……俺、幸せ。すっごく、幸せで……」
「うん」
「……おかしくない?俺、幸せなの……変じゃ、ない?みっともなく、ない?」
「ないよ。お前は何にもおかしくないよ」


ぼろぼろと、みっともなく溢れ出る涙に。
嫌そうな顔を見せず、それどころか、目を細めて、微笑みながら優しく『アキ』は俺の頬を指で拭ってくれる。


「俺も、幸せだから。お前と一緒に、幸せなんだから」


その言葉に、俺の中で何かが、切れて。


「アキ……アキ……っ!」


みっともなく、『アキ』の胸にしがみついて。
年甲斐もなく、ひたすら名前を呼ぶ事しか、できなくなってしまう。
その間にも、涙はどうしても、止められなくて。
……こんなの。30も近い年になって、大人のくせに、カッコ悪過ぎる。

そんな駄目な俺でも、『アキ』は茶化さず。
ただ優しく抱きしめて、受け止めてくれたのだーー。



※ ※ ※ ※ ※

side.A



ーーごめんなさい……ごめんなさい……

ーー汚い気持ちで、ごめんなさい……

ーー好きになって、ごめんなさい……


そう、懺悔しながら。
独り、夢うつつのなかで泣くあの子の姿を見たのは、いつだっただろうか。


そんな、寝言を聞いてしまった次の日から。

少しずつ、少しずつ。

彼への呼び方を、こっそり変えて。
わかりやすく、頑張りすぎる彼を甘やかすようにして。
言葉を尽くして、あの子への好意を込めて笑みを浮かべる。


小さなことを、小さなやり方で、何度でも。
ちゃんと伝わるように。
ちゃんとわかってもらえるように。


そうすると、少しずつ、少しずつ。
俺への好意に戸惑うことも、少なくなった。
俺からの愛情を、きちんと受け取ってくれるようになった。

そうして、やっと、今日。

『幸せだ』、と。
やっと、言葉にしてくれた。

ーーこの日を、ずっと、待っていた。




(やっと、ここまで来たんだな)


ずっと、長い間我慢させ続けて。
何度も何度も、傷つけてしまった大事な彼を、離れないように、強く抱きしめる。

今、やっと。初めて、ちゃんと。
この愛しいこどもを捕まえられたような、気がしたーーー。





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