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番外編ー本編開始前
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しおりを挟むとりあえず、このままだと自分が泣かせたと誤解されそうだったので。
未だにベソかいてる少年を、無理矢理窓から部屋に連れこむことにした。
外に居たため履いていた靴は、その辺に脱がせて近くにあったスリッパを履きかえさせ、適当な椅子の上に座ってもらう。
それから、清潔なハンカチを取り出して目元に押し付けたあと、一度奥に引っ込む。それから、冷蔵庫で冷やしていたタオルとスポーツドリンクを取り出して、部屋に戻って奴に手渡した。まだ始まったばかりとはいえ、もう夏だからな。泣きすぎて出ていった水分と塩分を取り戻すにはちょうどいいだろう。
その頃には落ち着いたのか、涙はいつのまにか止まっていた。相変わらず目は真っ赤に腫れあがったままだが、まあ、仕方ないだろう。
とりあえず、タオルで目元を冷やしながら水分を摂取するように言って、少し時間を置いたところで本題を聞いてみることにする。
「……で?お前、なんであんなとこで泣いてたんだ?」
「………」
このガキ。だんまりをしたまま自分から話そうとはしないのだ。
「大体、今は授業中だろ。もしかしてサボりか?」
「……すみません」
「いや、俺に謝っても仕方ねーだろ」
ホント調子が狂う。そう思いながら、クソガキの様子を見る。
中学に上がったばかりのせいか、全体的に線が細い印象を受ける。髪はサラサラのようだ、羨ましい。髪色は特に染めている様子はないが、日に当たると少し茶色っぽくも見えたら、服装も特に崩したようには見えず、本来は優等生の部類なんだろう。
まあ、存外、そういうタイプの方が我慢を貯めやすいのかもしれない。
「授業中とはいえ、一人でフラフラしてんじゃねーよ。変なのに巻き込まれたらどうすんだ」
「……」
「あー、うん。まあ、話したくないならもう、いいけどよ」
先程から謝罪の言葉か無言ばかりの相手に、俺は何も聞かないことにした。
あんまり聞きすぎても、ますます心を閉ざすだけだしな。
「けど、俺も仕事だからな。クラスと名前くらい、言えるだろ?」
「………月島尚人。中等部の1-A、です」
言うべきか少し迷っていたようだが、黙ったままはさすがにまずいと思ったのだろう。軽く息をついた後、やっと自己紹介をする。
が、俺はここで驚く。
「ふーん。そりゃまた、大変なとこに入ったな」
補足するとこの学校は、成績や実家、得意分野によってクラス分けがされている。そのなかでAクラスとは、金持ちでそこそこ成績がいい奴、もしくは金持ちではないが学力の高い人間が集まるクラスだ。こいつの挙動を見るに、どうも金持ちのガキには見えない。となれば、成績が良くてそのクラスに入ったのだろう。だとしたら。
「……苦労してるんだな、お前」
そう言って、頭をぽんぽん撫でてやる。大方、成績が特別いいわけでもないボンボンに嫌みのひとつでも言われたのだろう。そう思うと、少しは優しくしてやるべきだと考えたのだ。
少年は、ちょっと驚いたように体を震わせたが。
やっぱり何も言わずに俯いたまま、拳を強く握りしめていた。
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