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番外編ー本編開始前
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しおりを挟むと、そこに。
「おーい、上城。ちょっと頼み事があるんだが…」
遠慮なく入ってきたのは、 伊原一樹(いはらかずき)。 俺がここの生徒だった頃の同級生であり、現在は中等部の教師をしている。
教師のくせにチャラチャラした服装をしており、髪も金髪に染めている。格好はアレなのに、こんなのが生徒に人気だというから。この学校はやはりおかしいと思う。
「あ?何だよ伊原。今取り込み中だ、帰れ」
「いや、こっちもお前に用事があるなんだが…って、月島?」
「あ……」
知り合いだったのか、伊原は少年を見て目を丸くする。ソイツも固まったあと、慌てて立ち上がろうとする。多分逃げようとしたのだろう、が。
「おいガキ。まだ話は終わってねーよ」
「うあっ!?」
その前に、頭を押しつける。
それでバランスを崩したクソガキが、べちょっ、と床とお友達になった。
「相っ変わらず容赦ねーな、お前は。……大丈夫か、月島?」
「……な、何とか」
「このガキと知り合いなのか?伊原」
「ああ。こいつ、俺が担任してる生徒なんだわ」
そう端的に言ってガキを立たせた後、ズボンについた埃を払う伊原。そんな担任が気恥ずかしいのか、おろおろと困った様子を見せるクソガキ。なんつーか、新しい家に来たばかりで、どうすればいいかわからなくておろおろしてる、ペットショップから貰われて来たばっかりの犬みてぇだ。
「つーか伊原。お前、用事はもういいのかよ?」
「今済んだとこだ。お前に月島のこと探してもらおうと思ったんだが…既に保護済みだったんだな」
よかったよかった、と安堵した伊原に、俺は内心驚いていた。コイツは俺と同様、あまり生徒に深入りするような奴ではないからだ。
「……なんだ。お前のお気に入りだったりするのか?」
「想像に任せる。…にしても、目が赤ぇな。お前、また生徒を泣かせたのか?」
「変なこと言うな。俺が見つけた時からメソメソしてたっつの」
たく。生徒を気に入るのは勝手だが、俺を疑うなっつの。
「……あの。ごめんなさい、先生」
「ん、何がだ?」
「……授業、サボってしまって」
「ああ、気にすんな。たまにはそういう気分もあるさ」
落ち込んだ様子の月島に、伊原はクスクス笑いながら頭を撫でる。
「けど、連絡もなしに休んでたらさすがに心配でな。無事みたいで、よかった」
そう言っていつになく伊原は、生徒に優しく声をかけていた。
……なんだありゃ。あんな奴の顔、初めて見るわ。
アイツも俺と同じで、プライベートで生徒と仲良くなる必要性を感じない奴のはずだったんだが。
「今日はどうする?次の授業から戻るか?」
「……え、と」
伊原の言葉に、月島は一瞬だけ目を伏せる。が、笑顔を浮かべて立ち上がる。
その笑顔は、先程まで泣いていた人間とは思えないほど、完璧な笑顔だった。
「…はい、出ます。ご心配、おかけしました」
そう言って立ち上がり、俺の方にぺこりと頭を下げる。
「タオルと飲み物、ありがとうございました。今度、お礼しに参ります。失礼しました」
そう言って、そのまま立ち去ろうとした。
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