先生、いきなり人の後ろから壁ドンするのはどうかと思います!【番外編連載中】

あか

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番外編ー本編開始前

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「……上城?」


ーーところを、咄嗟にソイツの腕を乱暴に引っ掴み、無理矢理こちらに引き寄せる。

月島は先程までの笑みを消して、大きく目を見開いて、固まったままになっていた。

それはそうだろう。今日会ったばかりの、教師とはいえ他人にいきなり無言で引っ掴まれれば、そういう反応にもなるわな。




その時、俺はほとんど、直感で。
こいつを、今逃がしては行けない。
何故か、そう思った。



 
「どうかしたか、上城」
 「……伊原、今日一日コイツ借りるぞ」
 「え?」
 「最近、机の上が片付かなくてな。ちょうどいいし、コイツに手伝わせる」
 「お前、その悪い癖は相変わらずかよ」
 「うっせ。……おい、クソガキ。テメェもいいよな?」
 「は、ぇ……え?」
 
  
  
突然の行動に唖然としてから、ガキは様子を伺うように伊原を見る。そんな少年の様子に、伊原は苦笑する。どうやら、俺の意図は汲んでくれたようだ。 
  
「大丈夫だ。コイツ態度はデカいけど、悪い奴じゃないから。…それじゃ、上城。昼休みにまた様子見に行くからな」
 「いらねーよ、うっぜ」
 「お前のためじゃねーよ自意識過剰が。…じゃ、月島。また後でな~」
 
そう言って、伊原は保健室から出ていったのだ。
 
残ったのは、この部屋の主である俺と、先程から固まったままの、クソガキだけ。



 

 
「おい」
 「あ…すみません」
 
腕を離してからも呆ける少年に声をかけてやると、はっと我に返って、俺の机の方を見る。
そこには、書類とか、ファイルとかでグシャグシャになっている残念なことになっていた。
 
「……えっと。机の整理って、あそこですか」
 「あー…気にすんな。いつもの通りだ」
 「え?でも、俺今からあそこを…」
 「気にするな。今のは嘘」
 「う……え?」
 
  
保険医とはいえ、教師としては問題すぎる発言に理解が追い付かないのだろう。ガキが唖然としたままなのをいいことに、俺はヤツの首根っこを引っ掴み、近くのベッドに無造作に押し込める。
 
「は、ちょっ……!?いきなり、何をっ」

さすがに、説明もなしにやり過ぎたか。まあ、反省する気はないが。

「別に机なんぞ汚いままでも充分だし。むしろ勝手に片付けられる方が困るんだよ、俺は」
 「はい!?じゃ、何で…」 

 

 

「気持ち悪いんだよ、お前の笑顔」
 「え……」

 

俺の言葉に固まる月島。そんなガキに、俺は大袈裟にため息をついてみせる。

「教室に戻ったところで、お前また溜めこむだろ。で、1人で堂々巡りして、ドツボにはまりそうだったからな。……また誰かに迷惑かける前に、ここで少し休んどけ」
 
まあ、誰かも何も、主に俺に迷惑かけないでほしいだけだが。
 内心でそんなことを思いながら、カーテンを引いて仕事に戻ろうとする。
 
が。
 
「……なんで」
 「あ?」
 
心もとなさそうに出すか細い声に、カーテンを引きかけた手を止める。
 

「俺、そんなに変な顔、してました?」
 「いや。むしろ完璧な笑顔だったぞ」
 「……それなら、どうして……」
 
その指摘に考えこむ。正直、何も考えてなかったと言った方が正しいからだ。

だから、よくよく考えて――気になった要因を、やっと思い当たる。
 


「完璧すぎるんだよ、その顔。お前くらいのガキが、浮かべる表情にしては」
 「……ぇ」
 
俺の答えに、ヤツはまた固まってしまっていた。そりゃそうだろう、今のはただのこじつけみたいなもので、自分でも気づいていなかったはずだから。だから、適当な理由をつけて言ってみる。

「お前、伊原が来るまで散々泣いてオロオロしてたくせに、一瞬で優等生みたいな笑顔作りやがったからな。……あー、実際、優等生なんだっけ?」
 「……」
 
  
茶化してみるも、沈黙が帰ってくるだけだった。

俺としては適当に言ったつもりでも、コイツにとっては、思い当たる節でもあるのだろう。


まあ、どうでもいいんだが。
 
「とりあえずここでメソメソしててもいいから、きちんと吹っ切れとけ。
そんで、もう二度とここに来るんじゃねーぞ」


そう言って、カーテンを引いて、自分の机に戻った。




そのまま、十分くらいは、経っただろうか。

カーテンの向こう側から、抑えきれなかったろだろう、小さな震えた泣き声と、鼻をすする音がする。

それを俺は、聞こえない振りをして。
 残っていた雑務を、淡々と片付けたのだった。

 
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