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番外編ー本編開始前
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しおりを挟む「ありがとな、上城」
「何だよ気持ち悪ぃ。たまたま、あのガキが泣いてるのを見かけたから引きずり込んでやった、それだけだ」
宣言通り、昼休みにやって来た伊原を、そう言って邪険にする。ちなみに当のクソガキは、伊原が来る前に様子見したところ、布団もかけずにすやすやとベッドの上で眠り込んでるようだった。風邪ひかれても仕方ないので、サービスで上から別の布団をかけてやったけど。
「たまたまでも、だ。……変な奴らに目をつけられるよりはよっぽどいいだろ」
そう言って、まるで自分の子供を見るような目で、あのガキが寝てるであろうベッドの方に視線をやる。……ああ、気持ち悪ぃ。お前は、俺と同じ人種だと思ってたのに。
「お前こそどうしたんだよ。ただの生徒にそんなに入れ込むなんて」
「入れ込んでるように見えるか?」
「かなりな」
参ったな、と言いつつ満更でもなさそうな様子でいる。
「アイツ、一般家庭出身だからAクラスだが、成績だけならSの奴らに張り合えるくらい頭がよくてな」
「ふーん。どれくらいだ?」
「中等部の入学試験で主席。あと今回の中間で1位だ」
「……マジで?」
「んな嘘つかねぇよ」
うちの学校は、金持ちなだけあってそれなりにしっかりと教え込んできてる。そんななか、外からやってきたばかりの奴が中間で1位とか。
「……そりゃ、妬まれもするだろうな」
思わず言葉にすると、何の話だ?と不思議そうに伊原が聞き返す。
「あ?てっきり、クラスに馴染めなくてグズグズしてるのかと思ってたんだが…」
「いや、うまくやれてる方だと思うぞ」
そう言って、顎を手で擦りながら思い返すように斜め上を見上げる。
「この前は、一般家庭出身と金持ちお坊ちゃんが険悪な雰囲気になった際に、手際よくその場を納めてくれたらしいんだよ。しかも、双方からも恨まれずに、だ」
「ふーん」
そりゃまた凄い。
金持ちのガキは変に高いプライドがあるし、一般の奴らは自分達の常識で物事を見ようとするから、その溝は埋めるのに一苦労するのがセオリーなのだが。
「それ以来、名実ともにクラスの奴らから慕われるようになってな。ホント、出来すぎなくらい、いい奴だ」
「………」
伊原がそう言ってガキを誉める。
だが、俺にはいまいちピンと来なかった。
多分、最初に出会った時に泣いてばかりいた印象が強いせいだろう。
「……てことは、クラスの連中には嫌われてねぇのか?」
「全員とは言わねぇが、クラスの大半は認めてると思うぜ。俺がクラス委員長に任命したし」
「……おい」
「いや、そうでもしないとアイツ馴染めそうになかったしな。最初の頃は、どうも遠慮してるようだったし」
あと、役割もなしで頭だけよくても、金持ち坊っちゃんには逆恨みされそうだったし。
そう言った伊原の言ってることも、分からなくはなかったので。内心はともかく、表面上は相槌を打つにとどめた。
だとしたら、やはり分からない。
何で奴は、一人で泣いてたのだろうか。虐められていたわけでも無さそうだし。ましてや、味方が居ないわけでもないだろうに。
やはり、遅いホームシックにでもかかっていたのだろうか?
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