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番外編ー本編開始前
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しおりを挟む「……ま。とりあえず、今日のところはお前に任せるから。アイツを頼むな」
そう言って、購買で買ってきたらしいパンを渡してくる。
「起きたら、月島に渡しておいてくれ。昼抜きはきついだろうからな」
「…わかった」
了承して受け取ると、じゃ、またなと手を振って退出していった。
「さて、と」
せっかくだし、こいつの枕元にでもこれを置いておくか。
そう思って、寝てるであろう月島に配慮して足音を忍ばせて、そっとカーテンを引いてみた。
「……」
「……」
いつのまにか、起きており、こっそり聞き耳でも立てていたのだろう。
ばっちり目を開けていた少年と俺は、お互いの姿を瞳に映していた。
「……で?」
「……えっと」
目を泳がせているところを見ると、大体の話は聞いていただろうことが察せられる。
「まあ、いいわ」
とりあえず、先程伊原から言付かっていたパンを、乱雑に投げ渡してやる。
あわあわしながら受け取るクソガキを一瞥しながら、ベッドの傍にある椅子に座る。
「とりあえず、それ食べとけ。伊原が心配して持ってきたもんだ。後で礼を言っとけ」
「…はい。ありがとう、ございます」
寝る前に渡したスポドリで喉を潤しながら、大人しくパンを食べる少年の様子は、先程までと違って落ち着いたのは明らかであった。
「……お前さ」
「え?」
本当は、聞かない方がいいのだろうが。伊原から聞いたことで気になることがあったので、好奇心で聞いてみる。
「クラスの奴らに、随分信用されてるみたいじゃないか。…それでも、辛いのか?」
「……辛い、というか」
俺の問いに、困ったような、曖昧な笑みを浮かべる。
「……あんまり、見せたくないんです。自分の、弱いとこ」
「何で」
「……本当の俺は、みんなが思うほどそこまで出来た奴じゃないって、バレちゃうから」
「……なるほど。あれか、カッコつけたいお年頃ってやつか」
「ふふ。雑にまとめ過ぎですよ、それ」
「いいじゃねーか。大体合ってるだろうし」
それに、お前だってそれ以上、言う気がないくせに。
そう揶揄してやると。
瞬き一つしてから、クソガキは黙ったまま笑みを浮かべ。
ふいと、俺から目を逸らした。
図星だったようだ。
「つーか、気にしすぎなんじゃね、お前」
「え?」
思春期の男子なら、カッコつけたがることもあるかもしれない。
けれど、今思えば、それはただの独りよがりによるものだったのだったと、今なら分かる。
……ま、真っ只中にいる時は分かんねーもんだけどな、残念なことに。
「人によく見られようとかしなくてもさ。お前は、お前ができる範囲でやればいい。それだけしてれば、カッコつけなくても、ちゃんとお前のことを見てくれる奴は現れるだろ」
そう言って、またグシャグシャと掻き回してやる。やめてくださいよ、と小声で文句を言われた気がしたが、聞こえないなぁ。そのまま、頭をぽんぽんと叩いてみると、大人しくなったので。もうしばらく、弄ることにした
「……先生」
「あ?」
しばらく、俺にいいように髪を弄ばれた後。黙ったままだったクソガキが俺を呼び掛け、顔をあげる。
その笑顔は、今日初めて出会ってから見た、この子供の笑顔の中で。
一番、綺麗に見えたから。
「…ありがとう、ございます」
「…何のことだか」
もう、コイツは大丈夫。心から、そう思えたのだった。
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