聖(性)愛の伝道師(笑)

やよい

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傭兵ギルドの受付さんは、司祭さんに恩返しをするため宿の提供をしていた。ら、知らない間に開発されてた。[いち]

ギシ・・・とベッドが軋みベッドが僅かに沈む。
眠りについたばかりの暗闇の中で頼れるのは嗅覚だ。その嗅覚に感じられた臭いに堪らず腕を振り上げた。

「臭いっ」
「痛いっ!」

確実に捉えた相手の頬に拳をヒットさせ、ぼぐぅ!と鈍い音をさせた後、ベッドの下へと落ちる音を聞いてからセヴラールはやっと目を開き、枕元の眼鏡を手に取ると下に転がり湿った銀の髪を床に散らしている男を見下ろした。

「そんな臭いを全身に纏って私のベッドに入ってくるなと何度言えば解るのですか?・・・痛い振りなどしなくて結構」
「ふりなんかしてないからっ!セヴっ」
「セヴラールです。勝手に短くしないで下さい。お風呂でその臭いを落としてこなかったんですか?」
「やっすい連れ込み宿だったから、部屋にバスルームが無かったんだ。途中で水は浴びてきたんだけど・・・まだ臭う?」

鼻を手で覆いながら話すセヴラールにトゥマエレは床に転がりながら自分の臭いをクンと嗅ぐ仕草をとると、「解んないな?」と首を傾げている。
そんなトゥマエレを放置してベッドから降りると、バスルームへと向かう。

凍えるほどではないが、こんな時期に井戸水を浴びるなんて仕方のない人だ。とため息を吐き、湯を張る。湯がバスタブに溜まる間にバスタオルと着替えを準備するといつもの場所へ置く。
背後に迫る気配にセヴラールは気付きながらも振り返る事をせずにトゥマエレの声を背中で受けた。

「なんだかんだと、優しいよね。セヴは」
「・・・臭いままでいられるのは、我慢ならないからです。いい加減、その若干濡れたキャソックも全部、脱いでください。洗ってしまいますから」
「本当に臭い?結構念入りに水で流したと思ったんだけど・・・、さすが獣人とのダブルだね」
「以前にもお伝えしましたが、鼻だけが利くんです。他はヒトと変わりないですよ」
「そうかな?セヴだって数年前まで白金級の傭兵だったじゃないか。突然の引退宣言にギルドマスターがせめて職員に!って泣きついたって聞いたけど?」
「誰から聞いたんですか?今では体よく使われていますよ。いい加減、脱ぎなさい。風邪をひきます」
「ん・・・ちょっと、張り付いて脱ぎ辛くて」
「まったく・・・ほら」
「ありがと」

セヴラールが何だかんだと世話を焼いてしまうのは、トゥマエレが命の恩人だからだろう。
まだ、傭兵として新人から漸く抜け出した様な頃、盗賊討伐の任務の失敗と共に己の人生の終了を自覚した瞬間、トゥマエレが助けてくれたのだ。
キャソック姿で、腰に佩いた武骨な両手剣を手繰るトゥマエレはとても綺麗で強かった。

・・・その後の盗賊達の阿鼻叫喚地獄絵図は今でも忘れられないが・・・

「ちょうど、湯が張り終わりましたね。ほら、入ってください。きちんと耳の後ろまで洗ってくださいよ?・・・本当に臭くてかなわないんですから」
「はーい」
「お腹、空いてませんか?簡単なものでよければ、作りますが」
「んー・・・ふふ」
「なんです?」
「いいや?面倒見がいいなぁって」
「貴方を其処ら辺に放置している方が街の為になりませんからね。いいから早く入ってください」
「はーいはい」

バスルームに押し込み、扉を閉めて濡れたトゥマエレの服を全て最新の洗濯機に放り込む。
色物材質違いの物を混ぜて入れても全く問題の無い、洗いから乾燥まで一気にやってくれる便利魔導具である。初めて使用した時、奮発した甲斐があると開発した魔導具師に感謝の念を送ったものだ。とセヴラールはクスリと笑った。

「・・・獣人は義に厚いんですよ。トゥマエレ」

魔導具の起動音に紛れてポツリと呟き、軽い夜食程度の物を作るため移動をする。

最初は本当にただの命の恩人だった。改めて聞けば、命ではなく、貞操の危機を救ってくれた恩人だったのだが・・・

何としてでも独り立ちをして、一度出た国に帰るなんて中途半端な事はしないで頑張ろうと熱意だけで空回りしていた日々。そこそこ傭兵としての経験を積んで、獣人の持つ身体能力を笠に着て失敗知らずのまま調子に乗っていた頃、他の傭兵達に疎まれているなんて事は露程に思わないで、他の傭兵に勧められるままに受けた依頼でセヴラールは初めての失敗をした。
迫りくる恐怖の前に身が竦み、身動ぎ一つも取れないところに前に立ちはだかったのは、銀色の髪を翻し、武骨な両手剣を巧みに操る戦女神の様な司祭だった。

――血気盛ん、良いことだが、あまり自分の命を粗末にしてはいけないな。

女神の美貌に返り血を浴びたまま、発せられたひどい美声にゾクリと何かが背筋に走った。
惚れるかと、思った・・・微笑みを浮かべたままの女神の赤黒い怒張が盗賊のケツを容赦なく犯していなければ・・・

嫌なことを思い出した。とセヴラールの表情がスンと真顔になる。

気を取り直して、食事の準備を進めてしまおう。としたところでバスルームから声が掛かる。

「どうしたんです?シャンプーもボディソープも補充したばかりですよ?」
「髪、洗って?」
「・・・何を言っているんですか。ご自分で洗えるでしょう」
「セヴに洗って欲しいなぁ~」
「セヴラールです。・・・仕様の無い・・・ほら、こちらに頭を出して」

言われた通りにトゥマエレはバスタブから首を伸ばしてこちらへと頭を預けてくる。セヴラールはそこに椅子を持ってくるとシャワーを頭に宛がった。
銀色の髪の毛へと指を挿し込み丁寧に洗い上げていく。水を含んでいるのに、サラサラと滑り落ちる髪に指の間を撫でられて少しムズムズとした。

「きもち・・・セヴは相変わらず上手だねぇ」
「私は、あの時貴方を拾うんじゃなかったと今でも後悔していますよ」
「ははは、色々と限界で倒れた俺を拾ってくれたあの時か・・・懐かしいね」
「あの時も、酷く臭っていて我慢ならなかっただけです」

珍しく前後不覚の状態で倒れていたトゥマエレを路地で発見し、――他のモノも発見したが、それは記憶から即刻抹消した――様々な汚れを身に纏っていてとてつもない臭いを醸し出していたトゥマエレに本当に我慢が出来ず、自宅のバスルームに放り込むと全身隈なく洗い上げたのだった。あの時のトゥマエレは抵抗することもなく大人しく洗われていた。

それから、この街に寄る度に宿屋ではなく、セヴラールの家に立ち寄るようになり、今ではすっかりこれが当たり前の様になってしまった。

「あの時、何があったか知りませんが、私で良かったですね?」
「うん・・・、あの日は昔好きだった子が死んだって連絡を受けてね・・・、あぁ、老衰だよ?パートナーに看取られて大往生さ。別に悲しくは無かったんだけど・・・やっぱり追いてかれちゃうんだなぁ。なんて感傷に浸ってたんだよ」
「感傷に浸っていた割には酷い有様でしたが・・・。私は、一応獣人とのダブルですし、今じゃ殆ど使っていませんが《拳神》のギフト持ちです。貴方ほどではありませんが、多少は、長生きしますよ」
「うん、少しでも、長生きしてね?・・・それにしても良かったなぁ、あそこで倒れてて。セヴに洗われてる時すっごい気持ち良くて、もう勃たないって思っていたのにカッチカチになっちゃって・・・はは、そんなもん見せるなっ!て、ぶっ飛ばされたけど。・・・流石《拳神》」
「良かったですね、見せ付けるだけで。触らせようとしていたら確実に捥ぎっていましたよ」
「ひえ・・・やめてやめてっ、怖い事言うの。・・・あぁ、萎えちゃった」
「・・・よかったですね?捥ぎられなくて・・・。はい、これで終わりです。あとはご自分でしてくださいね?」

セヴラールは立ち上がるとバスルームすら出る際に、無言で「捥ぎるぞ」と圧を掛けながら出る。閉じた扉の向こうでトゥマエレは「はーい」と残念そうに声を上げていた。

あの時、颯爽と現れて助けてくれた軍神の如きトゥマエレが、ただ一人の人の名前を口の中で呟きながら、静かに泣いていたのを今でもはっきりと記憶している。まぁ、酒と精子と汗に涎と色々なものをこびり付けて倒れている姿に若干、いや、かなり引いたのも事実だが。
セヴラールは憧れの人の、あんな姿は見たくないというただの自分のエゴを押し付けたに過ぎない。と考えていた。


------


「はぁ~、生き返る~。ご馳走様でした。あ、お茶淹れてあげるよ。いつものやつ」
「お粗末様でした・・・では、お願いしましょうか。貴方が淹れるお茶は、ほんのりと甘い気がします」

カタンと椅子を鳴らし、席に着くセヴラールにトゥマエレは手慣れている手つきで茶を淹れていく。
セヴラールは、このトゥマエレと二人きりなんだと思える時間を気に入っていた。
空のカップをコトリと置くと訪れる眠気にセヴラールは、あふ・・・と欠伸をした。

「・・・では、私は寝ますから。片付け、お願いしますよ。おやすみなさい」
「任されました」
「ベッドはゲストルームをご利用ください」

暗に一人で寝ろ。と伝え終えるとセヴラールは再び自分のベッドへと潜り込んだ。
直ぐにトロトロと意識が微睡みだす。今日は随分と疲れていたようだ・・・明日は漸くの休みだし、遅くまで寝ていようとまた欠伸を一つ落とし、目を閉じた。


------


ぴちゃ・・・くちゅ・・・
「んっ・・・うん・・・はぁ」

水音が聞こえる。セヴラールの口から途切れ途切れに甘い声が漏れている。
あちこちと触れられる部分が、気持ちがいい。トゥマエレが纏う夜の森の様な体臭とセヴラールが普段使っているボディソープの香りが混ざって敏感過ぎる鼻をくすぐる。

――あぁ、いつもの夢だ。

そう、セヴラールは目を閉じたまま判断した。

これだけ共にいても、トゥマエレに一向に抱かれることの無いセヴラールは、いつもトゥマエレが泊まる夜はこうして淫らな夢を見てしまう。
最初はあまりにも生々しい夢にまさか本当は夜這いに?と思ったが、目が覚めれば隣にトゥマエレが居る事はなく、セヴラールの衣服は乱れていなかった。
その内、何度かは眠ったままセヴラールは自分の身体を自分で慰めていたらしく、夢精やその他の跡を見て自己嫌悪に落ちたこともある。
その時は決まって夢の中でトゥマエレがセヴラールを導いているのだ。あれが実際に現実であれば、トゥマエレの声の通りに動き、トゥマエレの目の前でセヴラールが自慰をしている事になるわけで。目が覚めて夢で良かった。と何度胸を撫で下ろしただろう。

憧れの人。これは間違いがない。好きか?と聞かれれば、まぁ、好きではある。とセヴラールは答える事は出来る。が、抱かれたいか?と言われると、解らない。が今のところセヴラールにとっては正解なのだ。
なのに、決まってトゥマエレが同じ屋根の下にいる夜は淫らな夢を見る。
深層心理?本当は抱かれたいのか?と冷静になった頭で何度考えても、『解らない』のだった。

セヴラールは、それなりに男や女と付き合ったこともあるし、性交だって経験済みだ。だが、元々淡泊なところがある所為か、そこまで身体の関係を重要視していない為、どれも長続きせずにあちら側から関係を断ち切られるばかり。そうなると、もう面倒になってくるから今は気楽なおひとり様生活を満喫している。

トゥマエレに対して恋慕の情が明確にないのに、こうして淫らな夢を見ることに、欲求不満なのかな?とセヴラールは考えて、男娼へと行ったりもしたが特にそういうわけでもなさそうで・・・。男娼には「その気が無いのにここ来るのって、冷やかし?ただの道楽?」と怒られてしまった事もある。

だが、こうして夢を見てしまうのだ。
今もトゥマエレに乳首の周りをゆるゆると撫でられて、セヴラールはそのもどかしさに自然と胸を突き出す様にしてしまう。
その仕草に、ふふ。と笑う声が聞こえた。

「乳首、気持ちいいね?乳首がプクンって尖ってきているよ・・・んぢゅ」
「はぁ、ん・・・あ、いい・・・」
「こっちの乳首も可愛がってあげるよ。ほら、指で・・・」

クリクリとトゥマエレの指先が口に含まれていない方の乳首を刺激すると、ジンジンと熱を持ち、その熱は股間に直結していくようで、触らなくてもペニスが硬くなっていくのが解った。

「尖ってきた・・・こっちも赤く熟れて美味しそうだね」
ちゅるっ・・・じゅっ
「んんっ、は、ぁ・・・トゥマ、もっと・・・、もっと、して・・・?」
「素直だね?可愛い。いつものセヴも、勿論可愛いけど、こうしてトロトロになってしまうセヴも俺は好きだよ」

こちらも舐めてあげようね。とトゥマエレに手を取られて指に舌を這わせられると、ゾクゾクと快感が背筋を通って腰に響く。
じゅっ、じゅる・・・ぴちゃ・・・と音をさせながら指の間にも舌が這う。

「あ・・・ふ、ぅ・・・」
「セヴは乳首と指が敏感だな・・・ほら、準備ができた。いつも通り、入れて。ほら」

トゥマエレの声に導かれて、いつの間にか露わになった股間へと手をずりずりと這わせていく。トゥマエレの唾液がついた指がぬらぬらと身体を濡らしてペニスのまだ向こうに指先が到達する。
つぷ・・・とアナルへと指を挿し込み、ぐ・・・ぐ・・・と挿入れていく。

「あ・・・ん・・・ふぅ♡」
「やっぱり、セヴのアナニーが一番興奮するなぁ。あぁ、挿入れたい・・・入れて中にぶっかけたいなぁ」

そんなトゥマエレの声は夢中で指を抜き挿ししているセヴラールの耳には届かない。
つぷっ、つぷっ、つぷっと浅いトコロを指で触り、ぐにゅぅっと中へと押し込むとぐるりとかき混ぜた。

「あっ、あん・・・ふっぅ・・・ああっ」
「ふっ、乳首まで弄って・・・。普段はあんなに禁欲的でSっ気たっぷりなのに、こんなに快楽に従順で、えっちなセヴ、本当に可愛い・・・気持ちいい?」
「んっ、いいっ・・・きもち、いい、よぉ♡」

乳首もお尻も夢中で弄り、我慢が効かなくなり、吐精する。
パタタ・・・と己の腹を汚して、くたりと気絶するかの様にセヴラールはまた深く眠りについた。

完全に意識を手放したセヴラールにトゥマエレは、ぽんぽんと頭を撫でてやるとスリ・・・とその手にセヴラールがすり寄った。
そんな可愛い仕草に、うぐ・・・とトゥマエレは前屈みになり「我慢だ、我慢」と呟きながら、セヴラールの腹に顔を近づけ舌を這わせた。ピクンと痙攣するが、起きる気配の無いセヴラールにトゥマエレは精子で汚れた腹を舐める。

ぢゅ・・・ちゅる、ぴちゃ
「ふぅ、ご馳走様。よし、身だしなみを整えて・・・おやすみ、セヴ」

綺麗に舐め摂り、乱れた衣服を整えてやるとトゥマエレは一つの小さな魔導具を取り出した。手に持つのは洗浄の魔導具だ。このままだと臭いでバレるからとトゥマエレはこれを賞金首で稼いだ金で買っていた。セヴラールの身体の上に置き、起動させるとトゥマエレが触れた形跡は跡形もなく消える。
念の為に、と寝具にも使いトゥマエレは部屋を出た。

トゥマエレにと用意されたゲストルームのベッドの上でトゥマエレは服の上から自分の股間を撫でて先程のセヴラールを思い出し、頬を緩めた。
つい、と窓の外から降り注ぐ月光を目で追い、少しばかり欠けている月を見上げた。

「もう、少し・・・」

そう、呟いたトゥマエレの目は捕食者の目をしていた。



+++++++



「おはよう。ってか、おそよう。セヴ」
「セヴラールです。と何度言えば・・・おはようございます。朝食、作ってくれていたんですか?」
「自分の分の次いでだから、気にしないで良い。ゆっくり寝ていたし、起こすのも忍びなかったからさ」

食べるかい?というトゥマエレにお願いします。と頷き食卓についた。
セヴラールの家に滞在する間はトゥマエレが家事をするという謎のルールが出来ており、何度もセヴラールは食材の費用を出すと言っても、宿代よりも安くついているから気にしなくて良いと断られ続けてもいた。

シーザーサラダにトースト、スクランブルエッグとスタンダードな遅い朝食を口に運ぶ。

「なんですか?」
「美味しそうに食べてくれるな。と思ってね」
「・・・実際、美味しいですよ?」
「ついてる・・・ここ。ふは、時々子供っぽいよな?セヴは」

トゥマエレの指が伸び、頬についたドレッシングを拭う。
淡い金色の瞳が優しく笑うと、セヴラールは昨夜の夢が思い出されて居た堪れなくなり、鼓動が早まり、頬が赤くなるのを感じて「やめてくださいよ」とトゥマエレの手を軽く振り払った。
そんなセヴラールをトゥマエレは静かに観察するかのように見ていたが、視線を外しているセヴラールは気付くことは無い。

「休日、久しぶりなんだろう?予定はあるの?」
「そうですねぇ・・・読書の継続か、鍛錬でしょうか。あ、この頃溜り始めていた依頼の魔物狩りも良いかもしれません」
「セヴは仕事人間だねぇ」
「そうですか?・・・よし、丁度トゥマエレもいる事ですし、魔物狩りにしましょうか」
「え?俺、強制参加?」
「当り前じゃないですか。私の隣で怪我せず魔物狩りができるのはトゥマエレぐらいなんですから」
「揺るぎ無い信頼で断りづらいぃぃ」



+++++++



「破っ!・・・あ、素材・・・」
「セヴくんや・・・、そう、ぐちゃっとされると毛皮が台無しでは?」
「あぁぁ・・・」

狼型の魔物のどてっ腹に穴を空けてしまってから大事な事に気付く。が、時は既に遅しでトゥマエレに言われずとも完全に素材としてはクズ同然である。
どうやら久しぶりの魔物狩りにテンションが上がってしまっていた事に気付いたセヴラールはがっくりと肩を落とした。

「セヴがキラッキラした笑顔で魔物達と対峙してるの可愛いなぁ」
「なっ!?可愛くなんてないですよっ」
「そう?・・・こうして森で狩りするの、セヴの中の獣人の血が騒ぐんだろう?傭兵、復帰したら?」
「駄目です!」
「なんで?」
「貴方が帰ってきた時に直ぐに会えないかもしれないじゃないですか」
「え・・・」
「何かおかしいですか?」

トゥマエレとセヴラールは会話をしつつ、次から次と襲ってくる魔物を屠っていく。
びちゃっと返り血が頬について、森に溢れていた魔物の掃討が終わった事を、静まり返った周りを見て確認する。
あまりにも多すぎる魔物に、取り敢えず素材の回収は諦めて討伐の証拠だけ持って帰ろうとセヴラールは腰の後ろに括りつけていた剥ぎ取り用のナイフを取り出し、魔物に手を伸ばしながら硬直しているトゥマエレに顔を向けた。
口に手をあてて、耳を赤くしているトゥマエレに何故、照れる必要が?とセヴラールは首を傾げた。

「貴方、私が受付に居ない間にどれだけ風紀を乱したと思っているんです?」
「え゛っ・・・そういうこと?」
「そういう事も何も、それしかないでしょう。どれだけ自覚していないんです?持ってくる賞金首、、雌調教されている奴ばっかりなんですが?」

トゥマエレの持ってくるのは大抵がそこそこの手練れでは手に負えない賞金首ばかりだ。そんな男達が雌調教を施されて連れられてくる。そして、引き渡しに応じてトゥマエレから引き受けた後が大変なのだ。
新人職員が馬鹿正直に大人しくなったと見せ掛けた賞金首のロープを外した途端、喰われたのだった。異変に気付き駆け付けたギルドマスターによって賞金首は簀巻きにされたが、喰われた新人はすっかり男(尻)の味を覚えてしまい、婚約間近だった彼女と別れたと聞いた。
そんな事があれば、トゥマエレが連れてくる賞金首はしっかりとマニュアル化され最初の対応は元白金級のギルドマスターかセヴラールが受け持っているのだった。あの鞭もマニュアル化されたもので、本来セヴラールは、いきなり鞭を振り回すような危険人物ではない。決して。

「ねぇ?トゥマエレ司祭?・・・いえ、変態製造機さん?何故、まともに連れてこられないんですかねぇ?」
「い、いやぁ・・・だって、ねぇ?襲うつもりでやってくるんだから、逆に襲われたって文句は言えないだろう?」

おかしい、剥ぎ取りの筈なのにセヴラールの手元がグリグリと魔物の遺骸を痛めつけている・・・しかもいい笑顔で。猟奇殺人現場にしか見えない。とトゥマエレはぶるりと身を震わせた。

「だからって、変態を作り上げて来なくていいのですよ?その後の私達の手間を考えていただけるのならば、ほどほどに、してくださいね?」
「・・・善処、します」

討伐証明の剥ぎ取りも終わり、残った魔物の遺骸はあとで他の魔物がほじくり出さない様にしっかりと深く穴を掘りそこへと埋める。
セヴラールは周りを見回して随分と深く森に入っていたようだと判断すると空を見上げた。

空を飾る太陽はあと2、3時間ほどで沈むだろう。

「確か、この先に洞窟があるんです。そこで一泊して帰っても良いですか?」
「俺は構わないけど・・・、セヴは大丈夫?」
「連休を取ったし、貴方はここに居ますからね。大丈夫です」
「じゃあ、そうしよう」


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