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皇太子サイド
リッツ・ハンフリート①
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「ふーん、なるほどねぇ~」
そう言って、リッツさんは腕を組んだ。
「役立たずかぁ」
その言葉に胸がズキンとする。そんな俺を見てリッツさんは、「でもさぁ~」と言った。
「部屋が燃えてるのに、キミを置き去りにして逃げて行ったそいつらの方が、よっぽど役立たずだとオレは思うけどねぇ」
パッと顔を上げると、ニコッと笑ってリッツさんは続けた。
「あのね。オレ個人の考えを言ってもいいかな?」
コクンとうなずくと、リッツさんは話し始めた。
「まずねぇ。
キミの魔力は、モンタリアーノ国ではなんの役にも立たないって話だけど。
それは、魔法を知らない、というか穿った見方しかできないヤツの意見だよねぇ」
「穿った見方…」
「うん。オレはそう思う。
魔法は、どこに行っても、どんなふうにも役に立つよ。魔法に限らず、なんでもそうだけど…それを使う人間の心次第だよ」
「心、ですか?」
「役に立ちたい…誰かのためになりたい、って思えば、さ。自分のことを変えることもできると思うんだよねぇ」
リッツさんは、「モンタリアーノ国の国王だから、魔法を使えちゃダメとかないでしょ」とウインクする。
「でも、俺の見た目が、気持ち悪いって」
「ねぇ~、エカたんの悪口言うのやめてぇ」
リッツさんが言うのと同時に一瞬で部屋が凍りつく。
ビクッとしてリッツさんを見ると、ものすごく冷たい目で俺を見ていた。
「あのさぁ。そいつらは気持ち悪くても、うちの…カーディナル魔法国では黒髪赤い瞳は崇められる色なんだよぉ。
そして、エカたんはさぁ、それを鼻にもかけずに努力してるんだよぉ」
今でもさぁ、と悲しそうな顔になる。
「リッツさん…」
リッツさんがハァ、と息を吐くと同時に部屋の空気が元に戻り、少し息がしやすくなる。
「さっきさぁ、オレがエカたんに子作りしようって言ったの聞こえたかなぁ?」
「はい」
「あれはさぁ…エカたんをこの世に繋ぎ止めたいと言うか…いつでも死んでいい、みたいな刹那的な考えをやめてもらいたくて言ってるんだよね」
俺は本気で作りたいんだけど。というリッツさんに、「死んでいい、ってどういうことですか?」
と尋ねた。
「…カーディナル魔法国が8年前、戦争を仕掛けられたのは知っているかい」
俺が首を振ると「そうだよな。ジーク君まだ生まれてないし。いま、まだ3歳だし」と言って続けた。
「きっかけは、キミのお母さん…カーディナル魔法国次期女王と内外的に認識されていたアンジェリーナ様の結婚だった」
「え…」
母上の結婚が?まったく意味がわからずにリッツさんを見ると、「カーディナル魔法国の人間は、魔法が使える。それはわかるよね」と言った。
「はい」
「次期女王になるからには、カーディナル魔法国で現在の国王の次に強いと思われていたわけだ。エカたんやジーク君みたいな色持ちがいちばん魔力が強い、しかもダントツに、なんてことを知ってる国ばかりではないからね。
魔法が使える人間はいろんな意味で価値がある。平民クラスであっても、魔法さえ使えれば…」
リッツさんは怖い顔になると、「たとえば、見世物として売り飛ばすとかな」
「売り飛ばす…?」
「ああ。魔法の概念がない国からすれば、ちょっと火を起こせるとか有り得ない話だろ。でも実際できる人間がいたら、それを見せれば金がとれる。
ジーク君の国にはアンジェリーナ様が行ったけど、魔法を向こうで使ってないみたいだからモンタリアーノ国の国民もよくわかってないってのが大部分を占めてるんじゃないかな。
王妃陛下に魔法を使ってみせてくれ、とも言えないだろうし。
まあ、とにかく…俺たちを金にできると思ってるバカな国があるってこと。そして、アンジェリーナ様がいなくなったことで、チャンスだと思ったんだろうな。属国にするための戦争を仕掛けてきやがったんだよ」
自分たちの属国にすれば、そこの人間も好き勝手にできると思ったんだろうね。
吐き捨てるように言うリッツさん。
「あの戦争で、カーディナル魔法国は多くを失うことになった。火種なんてなかったところにいきなり攻め入れられたことで国土も焼かれ…国王陛下が致命的な傷を追った。ジーク君、キミのお祖父様だね」
「お祖父様…」
「君が生まれた年に崩御されたんだ。そしてエカたんが女王として即位した」
「そんなことが…」
「そう。エカたんは元々魔術団所属で、帝王学を学んだりはしていなかった。アンジェリーナ様を魔術団の一員としてサポートしていくつもりだったんだ。それなのに…」
リッツさんは苦々し気に言った。
「自分は帝王学を極め、次期女王として大事にされてたのにさっさと他の国に嫁いで行った。
国王陛下が亡くなって、エカたんが即位することになっても自分は知らぬ存ぜぬだ。国王陛下の側近だった貴族たちも、エカたんが即位した途端隠居を決め込んだ。
6年前から、エカたんは一人で戦ってる。常にギリギリの状態、細い糸を渡らせられてるようなもんだ。この国はいま、人材もまだ育っていない。混沌とした状態だ。助けも求めず、弱音も吐かないでエカたんは、…自分を犠牲にしてもこの国をなんとか守ろうとしてる。
エカたんを、心から求めてエカたんの庇護がなければ生きていけない存在がこの世にあれば…って思ってさ」
そしたらもう少し、自分を甘やかせるようになるんじゃないか、って。赤ん坊の力ってすごいだろ?とリッツさんは言った。
「モンタリアーノ国は、いさかいがない平和な国だからいいけどねぇ、」と言うリッツさんの口調はとても冷たかった。
「…リッツさんは、叔母上が好きなのですか」
「好きだよぉ。だーいすきだ」
でもねぇ、とリッツさんは続ける。
「オレは、エカたんが好きなのであって、カーディナル魔法国の女王が好きなわけではない。今みたいなギリギリの状態のエカたんも見たくない。
弟殿下あたりに引き継いで、できれば辞めてもらいたいんだ。オレの子ども産んで、落ち着いたら、宮廷魔術団でまた働けばいい。新しい国王を、側面からサポートすればいい」
「なるほど…」
話がだいぶ逸れちゃったな、とリッツさんは言って、
「とにかくさぁ。見る人間によって、価値なんて変わるわけぇ。そんなのに惑わされない、自分の核を作り上げるのが大事だとオレは思うんだよねぇ」
3歳には難しすぎるねぇ、と言って、「でも、」とリッツさんは俺を見た。
「難しくても、その力をコントロールできるようにするには自分の心を乱さないようにすることが大切だからねぇ。
感情を制御できるようになれば、キミが部屋を燃やしたみたいな魔力の暴走はなくなるはずだよ」
そうすれば、モンタリアーノ国に戻ることもできるでしょ、と言うリッツさんの言葉に俺は下を向いた。
そう言って、リッツさんは腕を組んだ。
「役立たずかぁ」
その言葉に胸がズキンとする。そんな俺を見てリッツさんは、「でもさぁ~」と言った。
「部屋が燃えてるのに、キミを置き去りにして逃げて行ったそいつらの方が、よっぽど役立たずだとオレは思うけどねぇ」
パッと顔を上げると、ニコッと笑ってリッツさんは続けた。
「あのね。オレ個人の考えを言ってもいいかな?」
コクンとうなずくと、リッツさんは話し始めた。
「まずねぇ。
キミの魔力は、モンタリアーノ国ではなんの役にも立たないって話だけど。
それは、魔法を知らない、というか穿った見方しかできないヤツの意見だよねぇ」
「穿った見方…」
「うん。オレはそう思う。
魔法は、どこに行っても、どんなふうにも役に立つよ。魔法に限らず、なんでもそうだけど…それを使う人間の心次第だよ」
「心、ですか?」
「役に立ちたい…誰かのためになりたい、って思えば、さ。自分のことを変えることもできると思うんだよねぇ」
リッツさんは、「モンタリアーノ国の国王だから、魔法を使えちゃダメとかないでしょ」とウインクする。
「でも、俺の見た目が、気持ち悪いって」
「ねぇ~、エカたんの悪口言うのやめてぇ」
リッツさんが言うのと同時に一瞬で部屋が凍りつく。
ビクッとしてリッツさんを見ると、ものすごく冷たい目で俺を見ていた。
「あのさぁ。そいつらは気持ち悪くても、うちの…カーディナル魔法国では黒髪赤い瞳は崇められる色なんだよぉ。
そして、エカたんはさぁ、それを鼻にもかけずに努力してるんだよぉ」
今でもさぁ、と悲しそうな顔になる。
「リッツさん…」
リッツさんがハァ、と息を吐くと同時に部屋の空気が元に戻り、少し息がしやすくなる。
「さっきさぁ、オレがエカたんに子作りしようって言ったの聞こえたかなぁ?」
「はい」
「あれはさぁ…エカたんをこの世に繋ぎ止めたいと言うか…いつでも死んでいい、みたいな刹那的な考えをやめてもらいたくて言ってるんだよね」
俺は本気で作りたいんだけど。というリッツさんに、「死んでいい、ってどういうことですか?」
と尋ねた。
「…カーディナル魔法国が8年前、戦争を仕掛けられたのは知っているかい」
俺が首を振ると「そうだよな。ジーク君まだ生まれてないし。いま、まだ3歳だし」と言って続けた。
「きっかけは、キミのお母さん…カーディナル魔法国次期女王と内外的に認識されていたアンジェリーナ様の結婚だった」
「え…」
母上の結婚が?まったく意味がわからずにリッツさんを見ると、「カーディナル魔法国の人間は、魔法が使える。それはわかるよね」と言った。
「はい」
「次期女王になるからには、カーディナル魔法国で現在の国王の次に強いと思われていたわけだ。エカたんやジーク君みたいな色持ちがいちばん魔力が強い、しかもダントツに、なんてことを知ってる国ばかりではないからね。
魔法が使える人間はいろんな意味で価値がある。平民クラスであっても、魔法さえ使えれば…」
リッツさんは怖い顔になると、「たとえば、見世物として売り飛ばすとかな」
「売り飛ばす…?」
「ああ。魔法の概念がない国からすれば、ちょっと火を起こせるとか有り得ない話だろ。でも実際できる人間がいたら、それを見せれば金がとれる。
ジーク君の国にはアンジェリーナ様が行ったけど、魔法を向こうで使ってないみたいだからモンタリアーノ国の国民もよくわかってないってのが大部分を占めてるんじゃないかな。
王妃陛下に魔法を使ってみせてくれ、とも言えないだろうし。
まあ、とにかく…俺たちを金にできると思ってるバカな国があるってこと。そして、アンジェリーナ様がいなくなったことで、チャンスだと思ったんだろうな。属国にするための戦争を仕掛けてきやがったんだよ」
自分たちの属国にすれば、そこの人間も好き勝手にできると思ったんだろうね。
吐き捨てるように言うリッツさん。
「あの戦争で、カーディナル魔法国は多くを失うことになった。火種なんてなかったところにいきなり攻め入れられたことで国土も焼かれ…国王陛下が致命的な傷を追った。ジーク君、キミのお祖父様だね」
「お祖父様…」
「君が生まれた年に崩御されたんだ。そしてエカたんが女王として即位した」
「そんなことが…」
「そう。エカたんは元々魔術団所属で、帝王学を学んだりはしていなかった。アンジェリーナ様を魔術団の一員としてサポートしていくつもりだったんだ。それなのに…」
リッツさんは苦々し気に言った。
「自分は帝王学を極め、次期女王として大事にされてたのにさっさと他の国に嫁いで行った。
国王陛下が亡くなって、エカたんが即位することになっても自分は知らぬ存ぜぬだ。国王陛下の側近だった貴族たちも、エカたんが即位した途端隠居を決め込んだ。
6年前から、エカたんは一人で戦ってる。常にギリギリの状態、細い糸を渡らせられてるようなもんだ。この国はいま、人材もまだ育っていない。混沌とした状態だ。助けも求めず、弱音も吐かないでエカたんは、…自分を犠牲にしてもこの国をなんとか守ろうとしてる。
エカたんを、心から求めてエカたんの庇護がなければ生きていけない存在がこの世にあれば…って思ってさ」
そしたらもう少し、自分を甘やかせるようになるんじゃないか、って。赤ん坊の力ってすごいだろ?とリッツさんは言った。
「モンタリアーノ国は、いさかいがない平和な国だからいいけどねぇ、」と言うリッツさんの口調はとても冷たかった。
「…リッツさんは、叔母上が好きなのですか」
「好きだよぉ。だーいすきだ」
でもねぇ、とリッツさんは続ける。
「オレは、エカたんが好きなのであって、カーディナル魔法国の女王が好きなわけではない。今みたいなギリギリの状態のエカたんも見たくない。
弟殿下あたりに引き継いで、できれば辞めてもらいたいんだ。オレの子ども産んで、落ち着いたら、宮廷魔術団でまた働けばいい。新しい国王を、側面からサポートすればいい」
「なるほど…」
話がだいぶ逸れちゃったな、とリッツさんは言って、
「とにかくさぁ。見る人間によって、価値なんて変わるわけぇ。そんなのに惑わされない、自分の核を作り上げるのが大事だとオレは思うんだよねぇ」
3歳には難しすぎるねぇ、と言って、「でも、」とリッツさんは俺を見た。
「難しくても、その力をコントロールできるようにするには自分の心を乱さないようにすることが大切だからねぇ。
感情を制御できるようになれば、キミが部屋を燃やしたみたいな魔力の暴走はなくなるはずだよ」
そうすれば、モンタリアーノ国に戻ることもできるでしょ、と言うリッツさんの言葉に俺は下を向いた。
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