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皇太子サイド
モンタリアーノへの帰還②
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モンタリアーノ国に入ってすぐに、俺は誰かの魔力を感じた。
母上や、カイルセンとは違う…優しい、暖かい魔力を。
「どうした?ジーク」
「いえ…」
「この国にも、姉様とカイルセン以外に魔力保持者がいるのだな」
「叔母上…」
「ジーク」
「はい」
「この魔力の持ち主…見に行きたいな。
場所はわかるから、覗きに行ってみるか?」
とニヤリとする。
自分の気持ちを見透かされたようで真っ赤になった俺に、「行くぞ」と言って、その場所に飛んだ。
「あれは…」
庭でお茶を飲んでニコニコしている、親子とおぼしき人たちを見て叔母上が呟く。
母親らしき人から感じる魔力はあまり高くない。さっき感じたのはこの魔力ではないだろう。種類も違う。
「ご存知なのですか」
「うん、恐らく…母親らしき女性は、姉上が婚姻でこちらに来る時に、護衛としてモンタリアーノに付いて来た近衛のひとりだと思う」
「カーディナル出身者、ということですか」
「そうだ。彼女は、うちの辺境伯爵の娘だったんだが、彼女自身もこちらで結婚すると決まって辺境伯爵が絶縁したと言っていた」
「絶縁…」
「過激だからな、辺境伯爵も…」
妻はもっと過激なんだが、とぼそりと言う。
「あの女の子の方が、さっきおまえが感じた魔力保持者だろう?」
「はい…」
「元近衛の彼女の魔力は、近づかないとおまえはまだ感知できないだろう、低くて」
「…そうですね」
叔母上は俺を見てニヤニヤする。
「…なんですか」
「いや、良かったな、ジーク」
「何がですか」
叔母上のニヤニヤがすべて見透かしているようで、恥ずかしくて俺はそっぽを向いた。…向きながら、女の子を見る。
栗色のふわふわした髪をふたつのおさげにして、顔がはっきりと見える。…キレイな、緑色の瞳だった。
さっき感じた優しい魔力が、彼女の中でユラユラしている。彼女の瞳と同じ、太陽の光を浴びて輝く、美しい緑の色だった。
「まだ、魔力を自覚してないな」
叔母上がジロジロ彼女を見るので、「もう行きましょう」と手を引っ張った。またニヤニヤする叔母上に、顔が赤くなる。
「じゃ、行くか!
…あんまり頻繁に覗きに来るなよ」
「…来ません!」
カーディナルからはいくら叔母上でも、モンタリアーノ国内の魔力の移動まではわからないよな…。わからないことを祈る。
「姉様、ご無沙汰しております」
「カティ…ジーク!!」
突然現れた俺たちを見て驚いた母上は、俺の元へ来るとギュッと俺を抱き締めた。
「大きくなって…!!」
そう言うとボロボロと涙を流す。
「…お久しぶりです」
俺はなんて言っていいのかわからず、下を向いた。
その時、「顔をあげなさい」と言ったあの人の顔が甦る。
「母上、オルスタイン宰相は、今日はいらっしゃいますか」
「…ええ、陛下の執務室にいるはずよ」
「ありがとうございます。
叔母上、では、また…」
「ああ、ジーク。またな」
そう言って、叔母上はスゥッと消えた。
「カティ!」
叫ぶ母上を背中に、俺も父上の執務室に向かった。
ノックをすると、「はいれ」と声がする。
「失礼します」
「…ジーク!?」
いつ帰ってきたんだ、と立ち上がる父上を流して、俺は目的の人の前に立ってお辞儀をした。
「ご無沙汰しておりました、オルスタイン宰相」
「ジークフリート皇子」
彼は、スッと自分の右手を俺に差し出す。俺が握り返すと、そのままに、「お帰りなさい。…大きくなられましたね」と無表情で言った。
「ありがとうございます。…あの時」
俺は、彼の顔を見て言う。
「あの時、俺のことを見てくれて、考えてくれたのは貴方だけでした。感謝しています」
そう言うと、一瞬眩しそうな顔をして、ニコッと笑ってくれた。
「お待ちしていました。とても精悍になられて…まだ5歳なのに」
「…叔母上と、カーディナルの方々のおかげです。
カーディナルに行けと、言ってくれた、貴方のおかげです」
「いいえ。すべては、ジークフリート皇子の、ご自身の努力の結果ですよ。よく頑張られました」
俺は、つい先程見つけた彼女を思い出して彼に言った。
「見つけました。2年前、宰相が教えてくれた…寂しさから救ってくれる存在を」
俺を見る瞳に少し驚きの色が混じる。
「…そうですか。出会えない人もいる中で、幸運なことですね」
俺はニコッとして、「ありがとうございます」と言った。
「それでは、これで。お仕事中、失礼しました」
「ジーク!父様は!?父様には、なにか…」
父上が何か言っていたが、俺はそのまま部屋を出た。
…まずは、あの子が。
どこの誰なのかを調べたい。
あの子の魔力を思い出して、俺はうっとりした。
「…必ず」
必ず、彼女を俺のものにする。
誰にも、…誰にも、渡さない。
母上や、カイルセンとは違う…優しい、暖かい魔力を。
「どうした?ジーク」
「いえ…」
「この国にも、姉様とカイルセン以外に魔力保持者がいるのだな」
「叔母上…」
「ジーク」
「はい」
「この魔力の持ち主…見に行きたいな。
場所はわかるから、覗きに行ってみるか?」
とニヤリとする。
自分の気持ちを見透かされたようで真っ赤になった俺に、「行くぞ」と言って、その場所に飛んだ。
「あれは…」
庭でお茶を飲んでニコニコしている、親子とおぼしき人たちを見て叔母上が呟く。
母親らしき人から感じる魔力はあまり高くない。さっき感じたのはこの魔力ではないだろう。種類も違う。
「ご存知なのですか」
「うん、恐らく…母親らしき女性は、姉上が婚姻でこちらに来る時に、護衛としてモンタリアーノに付いて来た近衛のひとりだと思う」
「カーディナル出身者、ということですか」
「そうだ。彼女は、うちの辺境伯爵の娘だったんだが、彼女自身もこちらで結婚すると決まって辺境伯爵が絶縁したと言っていた」
「絶縁…」
「過激だからな、辺境伯爵も…」
妻はもっと過激なんだが、とぼそりと言う。
「あの女の子の方が、さっきおまえが感じた魔力保持者だろう?」
「はい…」
「元近衛の彼女の魔力は、近づかないとおまえはまだ感知できないだろう、低くて」
「…そうですね」
叔母上は俺を見てニヤニヤする。
「…なんですか」
「いや、良かったな、ジーク」
「何がですか」
叔母上のニヤニヤがすべて見透かしているようで、恥ずかしくて俺はそっぽを向いた。…向きながら、女の子を見る。
栗色のふわふわした髪をふたつのおさげにして、顔がはっきりと見える。…キレイな、緑色の瞳だった。
さっき感じた優しい魔力が、彼女の中でユラユラしている。彼女の瞳と同じ、太陽の光を浴びて輝く、美しい緑の色だった。
「まだ、魔力を自覚してないな」
叔母上がジロジロ彼女を見るので、「もう行きましょう」と手を引っ張った。またニヤニヤする叔母上に、顔が赤くなる。
「じゃ、行くか!
…あんまり頻繁に覗きに来るなよ」
「…来ません!」
カーディナルからはいくら叔母上でも、モンタリアーノ国内の魔力の移動まではわからないよな…。わからないことを祈る。
「姉様、ご無沙汰しております」
「カティ…ジーク!!」
突然現れた俺たちを見て驚いた母上は、俺の元へ来るとギュッと俺を抱き締めた。
「大きくなって…!!」
そう言うとボロボロと涙を流す。
「…お久しぶりです」
俺はなんて言っていいのかわからず、下を向いた。
その時、「顔をあげなさい」と言ったあの人の顔が甦る。
「母上、オルスタイン宰相は、今日はいらっしゃいますか」
「…ええ、陛下の執務室にいるはずよ」
「ありがとうございます。
叔母上、では、また…」
「ああ、ジーク。またな」
そう言って、叔母上はスゥッと消えた。
「カティ!」
叫ぶ母上を背中に、俺も父上の執務室に向かった。
ノックをすると、「はいれ」と声がする。
「失礼します」
「…ジーク!?」
いつ帰ってきたんだ、と立ち上がる父上を流して、俺は目的の人の前に立ってお辞儀をした。
「ご無沙汰しておりました、オルスタイン宰相」
「ジークフリート皇子」
彼は、スッと自分の右手を俺に差し出す。俺が握り返すと、そのままに、「お帰りなさい。…大きくなられましたね」と無表情で言った。
「ありがとうございます。…あの時」
俺は、彼の顔を見て言う。
「あの時、俺のことを見てくれて、考えてくれたのは貴方だけでした。感謝しています」
そう言うと、一瞬眩しそうな顔をして、ニコッと笑ってくれた。
「お待ちしていました。とても精悍になられて…まだ5歳なのに」
「…叔母上と、カーディナルの方々のおかげです。
カーディナルに行けと、言ってくれた、貴方のおかげです」
「いいえ。すべては、ジークフリート皇子の、ご自身の努力の結果ですよ。よく頑張られました」
俺は、つい先程見つけた彼女を思い出して彼に言った。
「見つけました。2年前、宰相が教えてくれた…寂しさから救ってくれる存在を」
俺を見る瞳に少し驚きの色が混じる。
「…そうですか。出会えない人もいる中で、幸運なことですね」
俺はニコッとして、「ありがとうございます」と言った。
「それでは、これで。お仕事中、失礼しました」
「ジーク!父様は!?父様には、なにか…」
父上が何か言っていたが、俺はそのまま部屋を出た。
…まずは、あの子が。
どこの誰なのかを調べたい。
あの子の魔力を思い出して、俺はうっとりした。
「…必ず」
必ず、彼女を俺のものにする。
誰にも、…誰にも、渡さない。
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