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皇太子サイド
モンタリアーノへの帰還①
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俺がカーディナルに来て半年ほど経つと、叔母上との訓練が始まった。
自分の中にある魔力の塊を認識して、それを自分の意思で形を整えることが魔力をコントロールする第一歩だという。
「溢れるくらいの魔力量に恵まれていながら、なぜ感知できない?おまえはやる気があるのか!?」
…叔母上は、この上なく厳しかった。
言葉で痛め付けられるのはもちろん、髪の毛を引っ張り上げられたり蹴られたり、突き飛ばされたりした。
ボロボロになって部屋に戻ってくる俺を見て、アキラさんはボロボロ泣いた。
「3歳相手にこんなの許されんの!?日本だったら虐待で即逮捕だろ!?ファンタジー要素どこ行った!?」
第五部隊の人たちに手当てをしてもらいながらぐったりする俺を見て、アキラさんはリッツさんにやめさせるべきだと直訴したらしい。
しかし、リッツさんに、「じゃあ、おまえはジークの居場所がなくなってもいいんだな」と言われて撃沈したと伝え聞いた。
「…ジーク君。僕、なんにもできなくて…ほんとに、申し訳ない」
ブルブル震えながら色が変わるほど自分の手を握りしめるアキラさん。
「アキラさん、…心配していただいて、ありがとうございます」
俺の言葉を聞いてアキラさんはバッと顔を上げる。
「ジーク君」
「でも、アキラさん、俺…大丈夫です。
こうやって、手当てもしてもらえるし…何より、叔母上がやってくれているのは、俺に対する愛情だと思っていますから」
叔母上は厳しい。でも、どんなに時間がなくても必ず俺との時間を作ってくれる。カーディナル魔法国の女王なのに、魔術団にきて、俺と一緒にご飯を食べたりしてくれる。俺のたどたどしい、どうでもいい話も一生懸命聞いてくれる。モンタリアーノにいたときのように、自分の存在を疑問視するようなことは一度もなかった。
「それでも…!それでも、虐待は!犯罪です!」
アキラさんの怒る様が面白くて思わず笑ってしまう。
叔母上と訓練できない日は、ひたすら自分の魔力と向き合うことに集中した。自分の内側へ、内側へと意識を向ける。
更に半年が過ぎた頃、俺はようやく自分の中の魔力を感知できるようになった。それと同時に、強い魔力を持っている人からは魔力を感じられるようになった。
叔母上は、俺を実際の戦場に連れ出すようになった。敵からの攻撃が届かない範囲で、カーディナルの魔術団の動きをひたすら見て記録するように言われた。
最初のうちは、恐ろしくて目を開けることができず、叔母上に「ムダな時間を過ごすんじゃない!仲間の動きを学ぶ絶好の機会なんだぞ!」と怒鳴られた。我慢して見ているうちに、魔力の出力の仕方が人それぞれ違うことが見て取れるようになってきた。
そうこうするうちに、その人の特性、魔力の色がわかるようになった。
叔母上に伝えると、満足気に頷いてくれた。魔力を感知できるようになってから、更に一年が過ぎていた。
「ジーク。一度、モンタリアーノ国に戻るといい」
思いがけない言葉に叔母上を見返すと、
「何も、追い出そうというんじゃない。…そんな、傷ついたような顔をするな」
困ったような顔で叔母上は俺の頭を撫でた。
「魔法を使う訓練もまだしてない。いつでも帰ってくればいい」
「帰って…?」
「ああ。自分の特性を使いこなすのはまだまだだが、基本的な魔法はもうできるはずだ。
私の手を借りなくても、モンタリアーノ国からここへおまえ一人で飛べるはずだ」
だから、いつでもくればいい。そう言って叔母上は笑った。
「…わかりました」
「よし、じゃあ行くか」
「え?」
「いつでも戻ってこれるんだ。感傷的に別れを惜しんだりする必要はない」
いつでも、みんながおまえを待っているんだ、ジーク。
「だから、安心して行ってこい」
叔母上は、モンタリアーノ国へ帰れ、ではなく、行ってこいと言ってくれた。カーディナル魔法国の一員として、俺を認めてくれたようで嬉しかった。
「ありがとうございます」
ふふ、と笑って叔母上は「よく頑張った」と言ってくれた。心に染み渡る、優しさにあふれた言葉だった。
「では、行くか」
「はい!」
自分の中にある魔力の塊を認識して、それを自分の意思で形を整えることが魔力をコントロールする第一歩だという。
「溢れるくらいの魔力量に恵まれていながら、なぜ感知できない?おまえはやる気があるのか!?」
…叔母上は、この上なく厳しかった。
言葉で痛め付けられるのはもちろん、髪の毛を引っ張り上げられたり蹴られたり、突き飛ばされたりした。
ボロボロになって部屋に戻ってくる俺を見て、アキラさんはボロボロ泣いた。
「3歳相手にこんなの許されんの!?日本だったら虐待で即逮捕だろ!?ファンタジー要素どこ行った!?」
第五部隊の人たちに手当てをしてもらいながらぐったりする俺を見て、アキラさんはリッツさんにやめさせるべきだと直訴したらしい。
しかし、リッツさんに、「じゃあ、おまえはジークの居場所がなくなってもいいんだな」と言われて撃沈したと伝え聞いた。
「…ジーク君。僕、なんにもできなくて…ほんとに、申し訳ない」
ブルブル震えながら色が変わるほど自分の手を握りしめるアキラさん。
「アキラさん、…心配していただいて、ありがとうございます」
俺の言葉を聞いてアキラさんはバッと顔を上げる。
「ジーク君」
「でも、アキラさん、俺…大丈夫です。
こうやって、手当てもしてもらえるし…何より、叔母上がやってくれているのは、俺に対する愛情だと思っていますから」
叔母上は厳しい。でも、どんなに時間がなくても必ず俺との時間を作ってくれる。カーディナル魔法国の女王なのに、魔術団にきて、俺と一緒にご飯を食べたりしてくれる。俺のたどたどしい、どうでもいい話も一生懸命聞いてくれる。モンタリアーノにいたときのように、自分の存在を疑問視するようなことは一度もなかった。
「それでも…!それでも、虐待は!犯罪です!」
アキラさんの怒る様が面白くて思わず笑ってしまう。
叔母上と訓練できない日は、ひたすら自分の魔力と向き合うことに集中した。自分の内側へ、内側へと意識を向ける。
更に半年が過ぎた頃、俺はようやく自分の中の魔力を感知できるようになった。それと同時に、強い魔力を持っている人からは魔力を感じられるようになった。
叔母上は、俺を実際の戦場に連れ出すようになった。敵からの攻撃が届かない範囲で、カーディナルの魔術団の動きをひたすら見て記録するように言われた。
最初のうちは、恐ろしくて目を開けることができず、叔母上に「ムダな時間を過ごすんじゃない!仲間の動きを学ぶ絶好の機会なんだぞ!」と怒鳴られた。我慢して見ているうちに、魔力の出力の仕方が人それぞれ違うことが見て取れるようになってきた。
そうこうするうちに、その人の特性、魔力の色がわかるようになった。
叔母上に伝えると、満足気に頷いてくれた。魔力を感知できるようになってから、更に一年が過ぎていた。
「ジーク。一度、モンタリアーノ国に戻るといい」
思いがけない言葉に叔母上を見返すと、
「何も、追い出そうというんじゃない。…そんな、傷ついたような顔をするな」
困ったような顔で叔母上は俺の頭を撫でた。
「魔法を使う訓練もまだしてない。いつでも帰ってくればいい」
「帰って…?」
「ああ。自分の特性を使いこなすのはまだまだだが、基本的な魔法はもうできるはずだ。
私の手を借りなくても、モンタリアーノ国からここへおまえ一人で飛べるはずだ」
だから、いつでもくればいい。そう言って叔母上は笑った。
「…わかりました」
「よし、じゃあ行くか」
「え?」
「いつでも戻ってこれるんだ。感傷的に別れを惜しんだりする必要はない」
いつでも、みんながおまえを待っているんだ、ジーク。
「だから、安心して行ってこい」
叔母上は、モンタリアーノ国へ帰れ、ではなく、行ってこいと言ってくれた。カーディナル魔法国の一員として、俺を認めてくれたようで嬉しかった。
「ありがとうございます」
ふふ、と笑って叔母上は「よく頑張った」と言ってくれた。心に染み渡る、優しさにあふれた言葉だった。
「では、行くか」
「はい!」
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