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皇太子サイド
アキラさん
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リッツさんは団長室に入り、俺とアキラさんが席に座ったのを見てドームをかけた。
「ないとは思うけど、念のため」だと言う。
「どうする?オレが話そうかぁ?」
「いや、よければ僕が話します」
アキラさんは、俺の方を見るとヘニャッと笑って、「ジーク君。僕が今から話すことは、たぶんすぐには信じてもらえないと思うんだけど…」と言って、フゥッと息を吐いた。
「まずね。僕の名前なんだけど」
「はい」
「僕が生まれたときに名付けられたのは、ルディって名前だったんだ」
「…生まれたときは?」
でも、今はアキラさんですよね。そう言うと、「そうなんだよ。今は、アキラだ」
「途中で、名前が変わったんですか?」
「うん」
なぜ途中で名前が変わるのか。どんな理由なのかまったくわからずに続きを待つ。
「実は僕には、前世の記憶があってね」
「前世?」
「うん。前の人生の記憶だね」
なんで気付いたのか、いつからだったのか覚えていない。けどね、とアキラさんは言った。
「僕は、日本という国で、林 明(はやし あきら)という名前で生きていたんだよ。
団長がジーク君に見せた黒板やチョークは、僕の前世の生活に存在していたものなんだよ」
「ハヤシ…」
「うん、日本はね、名字…ジーク君で言えばモンタリアーノだね、それを先につけるんだ。姓がハヤシ、名がアキラだよ」
「それで、ルディさんが、なぜアキラさんになったのですか」
「…2歳かそこらのとき、」
アキラさんは思い出すように目をつぶった。
「ルディ、って呼ばれていることにものすごく違和感があってね。ルディってなんだ?ルディって誰だ?って。
父と母らしき人が、周りが、僕のことをルディって呼ぶけど、僕は違うってずーっと思ってて」
ハーッと大きなため息をつくアキラさん。
「ある日、「僕はルディじゃない!」って叫んじゃってね。
僕はアキラだ、って」
2歳の子どもが突然そんなことを言い出して、アキラさんのご両親は困惑していたそうだ。「夢を見たの?」「おまえはルディだよ」と何回も何回も諭されたという。
「それに、2歳くらいだとなんでもイヤイヤ言う時期だからって…僕は物語を読んでもらうのが好きな子どもだったから、両親は夢見がちな、悪く言えば妄想癖のある子どもだと考えたらしくてね。
大きくなった時にこれでは困るからと、アキラだと言うたびに罰を受けさせられるようになったんだ。
そんなことを言ってはいけない、おかしなことを言ってはいけない、って。お尻を叩かれたり、物置小屋に閉じ込められたり、食事を抜かれたり…」
でも、それでもやめない僕にしびれを切らした両親はね、とアキラさんは続ける。
「僕を、教会の前に捨てたんだ。そんなに違うって言うなら、出ていけばいいって」
「捨てた…?」
「たぶん、両親は軽い気持ちで…僕が反省したら迎えに来ようと思ってたんじゃないかと思うんだ。
でも、僕は反省なんてしないからね。違うって思ってるわけだから」
そんなこんなで、5歳くらいまでずっと教会にいたんだ、とアキラさんは言って、「そんな中、妹が生まれたんだよ」と笑った。
「両親は、それ以降、ぱったり教会には来なくなった。僕も、自分を違う名前で呼ぶ人たちに愛情を感じることがなかったからね。
その後も、教会で過ごして…15歳のとき、魔力が高いからと魔術師養成学校に入れてもらえることになったんだ」
あまりに衝撃的すぎて言葉がうまく出てこない。
「…ご両親とは、未だに、」
「うん。5歳以降、顔は見てない。
でもね、自分の中では違和感しかない関係だったし…僕が冷たいのかもしれないけど、捨てられたというより僕が捨てたと思ってるから。
だから、悲しみとかそういうものはこれっぽっちもないんだよ」
「それで、学校に入ってきたんだけどぉ」
とリッツさんが続ける。
「こいつの特性がわからないって、校長が魔術団に連れてきたんだよぉ。どうにかしてくれって」
めんどくさいこと押し付けてきてさぁ。なんのための学校だっての。とブツブツ呟く。
「俺の特性は炎が強い、って、リッツさんすぐに言いましたけど、そもそも、特性ってどうやってわかるんですか?」
「ジークは、他の人たちの魔力をまだ感知できないし、見えないだろぉ?」
「はい」
「感知できるようになると、相手の中に『見える』んだよぉ。特性がもつ、『色』が」
「色、」
「そう。…アキラ、ジークに魔術団の部隊の話はしたよねぇ?」
「はい、しました」
「部隊が特性ごとにわかれてるって聞いただろ?」
俺はコクリと頷く。
「部隊順に行くと、炎は赤や桃色、雷は黄色…エカたんは金色。稲妻みたいにその金色がバチバチして見える。氷は、白。強い魔力を持ってると、銀色に近くなって、雪の結晶みたいな粒々が光って見える」
「団長はそんな優しい感じではないですけどね」
というアキラさんのおでこをペチッとやるリッツさん。
「痛い!ほんとのこと言っただけなのに!」
「次に、風は紫」
アキラさんの苦情を無視してリッツさんは続ける。
「水は水色から青、紺…主に青系統だなぁ。植物魔法の特性を持つ人間は、緑系統だ」
そして俺を見ると、リッツさんは黒板を出して、「ジークは…こんな感じなんだよねぇ」と描きはじめた。
丸い円を白いチョークで描くと、真ん中を赤で塗りつぶす。
「こんな風に、真ん中を赤が占めてる。まぁ、ほとんど赤だな。そして周りに、黄色…ジークもエカたんほどではないけど、金色に近い輝きがあるねぇ。あとは、白もあるし、青も、紫もある」
「ジーク君は、植物特性はないんですね」
「そうだなぁ、緑は見えないなぁ」
でも、5つも特性があるんだから充分だろぉ、と言って俺を見た。
「で、だいたいこうやって色で判断できるんだけど…アキラは、真っ黒なんだ」
性格と同じでねぇ、というリッツさんに、「団長、僕みたいに素直な人間を掴まえてなんてこと言うんですか!」と抗議するアキラさん。
「腹黒ヤロウが何言ってやがる。…こんな色のヤツは、今までいなくてねぇ。変わった色だから昔いたとすれば何かしら文献が残っててもいいんだが、それもない。
特性がわからないと学校にいても学びよう…というより、教えようがないんだよねぇ」
と言ってリッツさんはアキラさんの頭をグリグリ撫でる。
「そんなわけで、とりあえず魔術団預りにしたんだよねぇ。
15歳だけど教会で集団生活してきてたから掃除洗濯とかの家事もできるし、そのあたりはもう自立しても大丈夫なくらいしっかりしてたなぁ」
「…それで、まだ、アキラさんの特性は不明なんですか?」
俺が尋ねると、「特性の名前はないんだけどぉ」とジークさんは言って、「アキラは、前世の記憶にあるものを生み出すことができるんだ」と、先ほど描いた黒板を引き寄せた。
「これも、アキラが出したんだよぉ」
「出す、って…」
「うーん、と、ね。こういうものが欲しいなぁ、って頭に浮かべると…」
とアキラさんは言って、何もない空間から何かを引き出して俺に渡した。
「…これは、なんですか?」
「これはね、風船って言うの。ゴムっていう素材で出来てて、それに空気を入れて膨らませる。こうやって棒がついてると、子どもが持ちやすいでしょ?」
「子どもが、遊ぶものなんですか」
「うん、まぁそうとは限らなくて、いろんな用途に使えるんだけど…子どもが喜ぶアイテムではあるかな?」
俺は渡されたものをマジマジと見た。とても軽い。ウサギのような形をしていて、ピンク色の風船は可愛らしかった。
「魔術団に来て何日か過ぎたとき、部屋の掃除をしてるこいつを見に行ったら、見たことない…あれ、なんつった?」
「…ハンディモップです」
「とかいうやつで、棚をフサフサやってたんだよねぇ」
…棚をフサフサが、よくわからない。
「これ、どこから持ってきた?って聞いたら『出しました』って。出したってなんだ、って混乱したんだけど、初めて空間から物を出したのを見たときはもっと混乱したわ」
リッツさんは、思い出すように遠い目をした。
その後、ハッとして、「話がだいぶ逸れちゃったねぇ」と言った。
「アキラは、そういう特性なんだけど。これは、」
と言ったジークさんは、風船や黒板を指差す。
「この世界にはないだろ?少なくとも、カーディナルにはない。アキラが取り出せるものに制限もあるんだが、それは追々話すとして…取り敢えず、この力というか特性はあまり知られないほうがいいだろうってことで当時の魔術団のお偉いさんたちの間で決まったんだよ」
「それで僕は、気難しい第三部隊隊長付きになったんです」
「気難しいってなんだ!」
「痛い!パワハラで訴えますよ!陛下に!」
「望むところだぁ」
「変態、変態がいる。ジーク君、こっちに避難して!痛い!」
俺の手を掴んで引き寄せるアキラさんに氷の粒が飛んでくる。
「その、第三部隊隊長って言うのは…」
「こいつが15歳のときのオレだよぉ」
とリッツさんがウインクする。
「どんな横暴な暴君だったか、後で教えてあげるねジーク君」
こそこそ話すアキラさんに、また氷の粒が飛ぶ。
アキラさんはあちこちさすりながら、「そんなわけでね、ジーク君」と言った。
「はい」
「君の事情はみんな…魔術団のみんなが知ってる。
僕は、ほんとに家族への情がなかったしツラくも悲しくもなかったから助言にはならないかもしれないけど」
俺の頭を撫でて、アキラさんは優しく微笑んだ。
「家族であっても、解り合えない場合もある。家族じゃないのに、支えてくれる人たちもいる。
キミは、ひとりじゃない。
家族を選んで生まれてくることはできないんだから、生まれたあとは、自分の意志で選んでいいんだよ」
家族を…親を捨てる、という選択肢を。
俺はアキラさんの言葉を黙って噛み締めた。
「ないとは思うけど、念のため」だと言う。
「どうする?オレが話そうかぁ?」
「いや、よければ僕が話します」
アキラさんは、俺の方を見るとヘニャッと笑って、「ジーク君。僕が今から話すことは、たぶんすぐには信じてもらえないと思うんだけど…」と言って、フゥッと息を吐いた。
「まずね。僕の名前なんだけど」
「はい」
「僕が生まれたときに名付けられたのは、ルディって名前だったんだ」
「…生まれたときは?」
でも、今はアキラさんですよね。そう言うと、「そうなんだよ。今は、アキラだ」
「途中で、名前が変わったんですか?」
「うん」
なぜ途中で名前が変わるのか。どんな理由なのかまったくわからずに続きを待つ。
「実は僕には、前世の記憶があってね」
「前世?」
「うん。前の人生の記憶だね」
なんで気付いたのか、いつからだったのか覚えていない。けどね、とアキラさんは言った。
「僕は、日本という国で、林 明(はやし あきら)という名前で生きていたんだよ。
団長がジーク君に見せた黒板やチョークは、僕の前世の生活に存在していたものなんだよ」
「ハヤシ…」
「うん、日本はね、名字…ジーク君で言えばモンタリアーノだね、それを先につけるんだ。姓がハヤシ、名がアキラだよ」
「それで、ルディさんが、なぜアキラさんになったのですか」
「…2歳かそこらのとき、」
アキラさんは思い出すように目をつぶった。
「ルディ、って呼ばれていることにものすごく違和感があってね。ルディってなんだ?ルディって誰だ?って。
父と母らしき人が、周りが、僕のことをルディって呼ぶけど、僕は違うってずーっと思ってて」
ハーッと大きなため息をつくアキラさん。
「ある日、「僕はルディじゃない!」って叫んじゃってね。
僕はアキラだ、って」
2歳の子どもが突然そんなことを言い出して、アキラさんのご両親は困惑していたそうだ。「夢を見たの?」「おまえはルディだよ」と何回も何回も諭されたという。
「それに、2歳くらいだとなんでもイヤイヤ言う時期だからって…僕は物語を読んでもらうのが好きな子どもだったから、両親は夢見がちな、悪く言えば妄想癖のある子どもだと考えたらしくてね。
大きくなった時にこれでは困るからと、アキラだと言うたびに罰を受けさせられるようになったんだ。
そんなことを言ってはいけない、おかしなことを言ってはいけない、って。お尻を叩かれたり、物置小屋に閉じ込められたり、食事を抜かれたり…」
でも、それでもやめない僕にしびれを切らした両親はね、とアキラさんは続ける。
「僕を、教会の前に捨てたんだ。そんなに違うって言うなら、出ていけばいいって」
「捨てた…?」
「たぶん、両親は軽い気持ちで…僕が反省したら迎えに来ようと思ってたんじゃないかと思うんだ。
でも、僕は反省なんてしないからね。違うって思ってるわけだから」
そんなこんなで、5歳くらいまでずっと教会にいたんだ、とアキラさんは言って、「そんな中、妹が生まれたんだよ」と笑った。
「両親は、それ以降、ぱったり教会には来なくなった。僕も、自分を違う名前で呼ぶ人たちに愛情を感じることがなかったからね。
その後も、教会で過ごして…15歳のとき、魔力が高いからと魔術師養成学校に入れてもらえることになったんだ」
あまりに衝撃的すぎて言葉がうまく出てこない。
「…ご両親とは、未だに、」
「うん。5歳以降、顔は見てない。
でもね、自分の中では違和感しかない関係だったし…僕が冷たいのかもしれないけど、捨てられたというより僕が捨てたと思ってるから。
だから、悲しみとかそういうものはこれっぽっちもないんだよ」
「それで、学校に入ってきたんだけどぉ」
とリッツさんが続ける。
「こいつの特性がわからないって、校長が魔術団に連れてきたんだよぉ。どうにかしてくれって」
めんどくさいこと押し付けてきてさぁ。なんのための学校だっての。とブツブツ呟く。
「俺の特性は炎が強い、って、リッツさんすぐに言いましたけど、そもそも、特性ってどうやってわかるんですか?」
「ジークは、他の人たちの魔力をまだ感知できないし、見えないだろぉ?」
「はい」
「感知できるようになると、相手の中に『見える』んだよぉ。特性がもつ、『色』が」
「色、」
「そう。…アキラ、ジークに魔術団の部隊の話はしたよねぇ?」
「はい、しました」
「部隊が特性ごとにわかれてるって聞いただろ?」
俺はコクリと頷く。
「部隊順に行くと、炎は赤や桃色、雷は黄色…エカたんは金色。稲妻みたいにその金色がバチバチして見える。氷は、白。強い魔力を持ってると、銀色に近くなって、雪の結晶みたいな粒々が光って見える」
「団長はそんな優しい感じではないですけどね」
というアキラさんのおでこをペチッとやるリッツさん。
「痛い!ほんとのこと言っただけなのに!」
「次に、風は紫」
アキラさんの苦情を無視してリッツさんは続ける。
「水は水色から青、紺…主に青系統だなぁ。植物魔法の特性を持つ人間は、緑系統だ」
そして俺を見ると、リッツさんは黒板を出して、「ジークは…こんな感じなんだよねぇ」と描きはじめた。
丸い円を白いチョークで描くと、真ん中を赤で塗りつぶす。
「こんな風に、真ん中を赤が占めてる。まぁ、ほとんど赤だな。そして周りに、黄色…ジークもエカたんほどではないけど、金色に近い輝きがあるねぇ。あとは、白もあるし、青も、紫もある」
「ジーク君は、植物特性はないんですね」
「そうだなぁ、緑は見えないなぁ」
でも、5つも特性があるんだから充分だろぉ、と言って俺を見た。
「で、だいたいこうやって色で判断できるんだけど…アキラは、真っ黒なんだ」
性格と同じでねぇ、というリッツさんに、「団長、僕みたいに素直な人間を掴まえてなんてこと言うんですか!」と抗議するアキラさん。
「腹黒ヤロウが何言ってやがる。…こんな色のヤツは、今までいなくてねぇ。変わった色だから昔いたとすれば何かしら文献が残っててもいいんだが、それもない。
特性がわからないと学校にいても学びよう…というより、教えようがないんだよねぇ」
と言ってリッツさんはアキラさんの頭をグリグリ撫でる。
「そんなわけで、とりあえず魔術団預りにしたんだよねぇ。
15歳だけど教会で集団生活してきてたから掃除洗濯とかの家事もできるし、そのあたりはもう自立しても大丈夫なくらいしっかりしてたなぁ」
「…それで、まだ、アキラさんの特性は不明なんですか?」
俺が尋ねると、「特性の名前はないんだけどぉ」とジークさんは言って、「アキラは、前世の記憶にあるものを生み出すことができるんだ」と、先ほど描いた黒板を引き寄せた。
「これも、アキラが出したんだよぉ」
「出す、って…」
「うーん、と、ね。こういうものが欲しいなぁ、って頭に浮かべると…」
とアキラさんは言って、何もない空間から何かを引き出して俺に渡した。
「…これは、なんですか?」
「これはね、風船って言うの。ゴムっていう素材で出来てて、それに空気を入れて膨らませる。こうやって棒がついてると、子どもが持ちやすいでしょ?」
「子どもが、遊ぶものなんですか」
「うん、まぁそうとは限らなくて、いろんな用途に使えるんだけど…子どもが喜ぶアイテムではあるかな?」
俺は渡されたものをマジマジと見た。とても軽い。ウサギのような形をしていて、ピンク色の風船は可愛らしかった。
「魔術団に来て何日か過ぎたとき、部屋の掃除をしてるこいつを見に行ったら、見たことない…あれ、なんつった?」
「…ハンディモップです」
「とかいうやつで、棚をフサフサやってたんだよねぇ」
…棚をフサフサが、よくわからない。
「これ、どこから持ってきた?って聞いたら『出しました』って。出したってなんだ、って混乱したんだけど、初めて空間から物を出したのを見たときはもっと混乱したわ」
リッツさんは、思い出すように遠い目をした。
その後、ハッとして、「話がだいぶ逸れちゃったねぇ」と言った。
「アキラは、そういう特性なんだけど。これは、」
と言ったジークさんは、風船や黒板を指差す。
「この世界にはないだろ?少なくとも、カーディナルにはない。アキラが取り出せるものに制限もあるんだが、それは追々話すとして…取り敢えず、この力というか特性はあまり知られないほうがいいだろうってことで当時の魔術団のお偉いさんたちの間で決まったんだよ」
「それで僕は、気難しい第三部隊隊長付きになったんです」
「気難しいってなんだ!」
「痛い!パワハラで訴えますよ!陛下に!」
「望むところだぁ」
「変態、変態がいる。ジーク君、こっちに避難して!痛い!」
俺の手を掴んで引き寄せるアキラさんに氷の粒が飛んでくる。
「その、第三部隊隊長って言うのは…」
「こいつが15歳のときのオレだよぉ」
とリッツさんがウインクする。
「どんな横暴な暴君だったか、後で教えてあげるねジーク君」
こそこそ話すアキラさんに、また氷の粒が飛ぶ。
アキラさんはあちこちさすりながら、「そんなわけでね、ジーク君」と言った。
「はい」
「君の事情はみんな…魔術団のみんなが知ってる。
僕は、ほんとに家族への情がなかったしツラくも悲しくもなかったから助言にはならないかもしれないけど」
俺の頭を撫でて、アキラさんは優しく微笑んだ。
「家族であっても、解り合えない場合もある。家族じゃないのに、支えてくれる人たちもいる。
キミは、ひとりじゃない。
家族を選んで生まれてくることはできないんだから、生まれたあとは、自分の意志で選んでいいんだよ」
家族を…親を捨てる、という選択肢を。
俺はアキラさんの言葉を黙って噛み締めた。
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