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皇太子サイド
カーディナルでの生活
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リッツさんは、「ジークは炎の特性が強いからカッとなりやすいんだろうねぇ。エカたんに気持ちを逆撫でされるような言葉をどんどんぶつけてもらって、それでも平静でいられるようになる訓練をするといいよぉ」と言って、自分は字を読み、書くことから教えてくれた。
リッツさんは、俺をジークと呼ぶようになった。なんだか心が近づいたようで嬉しかった。
それはそれとして、リッツさんも充分逆撫で要員だと思ったが、ふたりに増えると自分の首を絞めるだけなので黙って頷いた。
文字の読み書きができるようになると、魔力や魔法について書かれた本を持ってきては、それらを書き写すように言われた。
「まずは、書き写してみてぇ。その後、きちんと文字が理解できているかどうか確認するために音読するよぉ」
リッツさんの魔術団団長室で教えてもらっていて、その間に魔術団の人たちが出入りする。
魔術団の人たちは、「こんにちは」と挨拶してくれたり、「頑張ってるね」とお菓子を持ってきたりしてくれる。
午前中はそのように過ごし、お昼になると魔術団に所属する魔術師の人たちに混ざってご飯を食べた。
魔術師は、騎士と同じで自分の命を懸けて国を守るという立場である。平民の出身でも魔力の量が高い人間や特性を2つ以上持つ人間は進んで魔術師を目指すのだという。
「女王陛下みずからが先頭に立って国を守ってくださるのに、我々国民が守られることを安寧と受けるだけでは情けないからね」
リッツさんの変わった部下だというアキラさんという男性が、俺に付いて生活面の面倒を見てくれることになって、カーディナル魔法国についても、ご飯を食べながらいろいろと教えてくれる。
たくさんの人たちと一緒に食べるご飯は、とても美味しかった。
「ジーク君は、好き嫌いがあんまりないのかな?」
アキラさんが、自分の皿に載っているトマトを俺の皿に載せようとすると、脇からリッツさんの手が飛んできた。
「おまえが好き嫌いするな」
「ひどいですよ、団長!僕は、育ち盛りのジーク君にもっと食べさせてあげたいと…!」
「わかった、じゃあこの串カツもジークに食わせてやれ」
と言って、アキラさんの皿から取った串カツを俺の口に突っ込む。
「ジーク、よく噛んで食べるんだぞ」
ニヤリとするリッツさんに、「ひどい!楽しみに取っておいたのに!」とアキラさんが憤慨する。これもいつもの光景だ。
誰にも相手にされず、ひとりだった俺を、このカーディナルの魔術団の人たちは特別扱いすることもなく自然に受け入れてくれた。
「ジーク君は、この魔術団の子どもだよ。
団長がお父さん、陛下がお母さん。俺たちはおじさんだったり、おばさんだったり、兄ちゃん姉ちゃんだったり。
みんなで一緒に、育てていくからな」
そう言われたときには嬉しくて泣いた。
魔力を持っているのが当たり前のこの国では、俺は異端視されない。人に受け入れてもらえるのが、こんなに安心することなのだと知った。
カーディナルに来たばかりですぐに結論は出すべきではないし、自分の魔力を制御できるようになればモンタリアーノ国で生きるすべもあるかもしれない。
しかし、モンタリアーノ国への愛情はなかった。あるのは、俺を助けてくれた、オルスタイン宰相への恩義だけだった。
(…始まったばかりなんだから)
結論を出すのは、まだ早い。
お昼を食べ終わると、アキラさんと一緒に魔術団の訓練を見学に行った。
「ジーク君は、まだ自分の意志で魔力を制御できないから、この段階はまだまだ先なんだけど。
というか、3歳という年齢を見てもまだまだなんだけど。
団長が、『見ることも大事な勉強だ』って言うから、とりあえず見学しよう」
魔術団に所属している人たちは、第一部隊が炎、第二部隊が雷、第三部隊が氷をそれぞれ特性とする人たちで、主に攻撃を司る。第四部隊は、風魔法。この人たちは、伝達などの後方支援が主だが、炎の魔法に風をのせて威力を増したり、氷の刃を遠くまで速度を落とさず飛ばしたり、風魔法でも威力が強い竜巻を起こして攻撃に加わる場合もあるという。
第五部隊は水魔法、植物魔法で薬を調合したり、その薬を循環させた水の袋のようなものに怪我人を入れて回復させたりするという。
その他に部隊はないが、土魔法を特性とする人たちもいると聞いた。
こんなにたくさんの魔術師がいても、弟のカイルセンと同じ光の魔法を使う人はいなかった。
「アキラさんは、どの部隊なんですか」
するとアキラさんは困ったような顔になり、「僕は、ちょっと変わり種なんだよね」と言う。
「変わり種とは…」
うーん、と唸るアキラさんの後ろから現れたリッツさんが、「ジークには黒板もチョークも見せたから大丈夫だよぉ」と言った。
「え!?団長!?
だ、だ、だって、僕の魔法は知られちゃダメだって」
「ジークはいいんだよぉ。エカたんの甥っ子なんだからぁ」
そう言って、俺を見ると、「こいつはねぇ、魔法も変わってるんだけどぉ。そもそも小さいときから変わってるんだぁ」と言う。
どういう意味なのかわからずに黙っていると、「じゃ、今日はアキラの話をするかぁ」と言って歩きだした。
さっき、困った様子だったのに…「アキラさん、すみません、俺、余計なこと聞いてしまって…。話してくれなくても大丈夫です」と言うと、満面の笑顔で
「いいんだよ!団長から許可が出れば話していいんだから!」
と言って、俺と手を繋いで歩きだした。
リッツさんは、俺をジークと呼ぶようになった。なんだか心が近づいたようで嬉しかった。
それはそれとして、リッツさんも充分逆撫で要員だと思ったが、ふたりに増えると自分の首を絞めるだけなので黙って頷いた。
文字の読み書きができるようになると、魔力や魔法について書かれた本を持ってきては、それらを書き写すように言われた。
「まずは、書き写してみてぇ。その後、きちんと文字が理解できているかどうか確認するために音読するよぉ」
リッツさんの魔術団団長室で教えてもらっていて、その間に魔術団の人たちが出入りする。
魔術団の人たちは、「こんにちは」と挨拶してくれたり、「頑張ってるね」とお菓子を持ってきたりしてくれる。
午前中はそのように過ごし、お昼になると魔術団に所属する魔術師の人たちに混ざってご飯を食べた。
魔術師は、騎士と同じで自分の命を懸けて国を守るという立場である。平民の出身でも魔力の量が高い人間や特性を2つ以上持つ人間は進んで魔術師を目指すのだという。
「女王陛下みずからが先頭に立って国を守ってくださるのに、我々国民が守られることを安寧と受けるだけでは情けないからね」
リッツさんの変わった部下だというアキラさんという男性が、俺に付いて生活面の面倒を見てくれることになって、カーディナル魔法国についても、ご飯を食べながらいろいろと教えてくれる。
たくさんの人たちと一緒に食べるご飯は、とても美味しかった。
「ジーク君は、好き嫌いがあんまりないのかな?」
アキラさんが、自分の皿に載っているトマトを俺の皿に載せようとすると、脇からリッツさんの手が飛んできた。
「おまえが好き嫌いするな」
「ひどいですよ、団長!僕は、育ち盛りのジーク君にもっと食べさせてあげたいと…!」
「わかった、じゃあこの串カツもジークに食わせてやれ」
と言って、アキラさんの皿から取った串カツを俺の口に突っ込む。
「ジーク、よく噛んで食べるんだぞ」
ニヤリとするリッツさんに、「ひどい!楽しみに取っておいたのに!」とアキラさんが憤慨する。これもいつもの光景だ。
誰にも相手にされず、ひとりだった俺を、このカーディナルの魔術団の人たちは特別扱いすることもなく自然に受け入れてくれた。
「ジーク君は、この魔術団の子どもだよ。
団長がお父さん、陛下がお母さん。俺たちはおじさんだったり、おばさんだったり、兄ちゃん姉ちゃんだったり。
みんなで一緒に、育てていくからな」
そう言われたときには嬉しくて泣いた。
魔力を持っているのが当たり前のこの国では、俺は異端視されない。人に受け入れてもらえるのが、こんなに安心することなのだと知った。
カーディナルに来たばかりですぐに結論は出すべきではないし、自分の魔力を制御できるようになればモンタリアーノ国で生きるすべもあるかもしれない。
しかし、モンタリアーノ国への愛情はなかった。あるのは、俺を助けてくれた、オルスタイン宰相への恩義だけだった。
(…始まったばかりなんだから)
結論を出すのは、まだ早い。
お昼を食べ終わると、アキラさんと一緒に魔術団の訓練を見学に行った。
「ジーク君は、まだ自分の意志で魔力を制御できないから、この段階はまだまだ先なんだけど。
というか、3歳という年齢を見てもまだまだなんだけど。
団長が、『見ることも大事な勉強だ』って言うから、とりあえず見学しよう」
魔術団に所属している人たちは、第一部隊が炎、第二部隊が雷、第三部隊が氷をそれぞれ特性とする人たちで、主に攻撃を司る。第四部隊は、風魔法。この人たちは、伝達などの後方支援が主だが、炎の魔法に風をのせて威力を増したり、氷の刃を遠くまで速度を落とさず飛ばしたり、風魔法でも威力が強い竜巻を起こして攻撃に加わる場合もあるという。
第五部隊は水魔法、植物魔法で薬を調合したり、その薬を循環させた水の袋のようなものに怪我人を入れて回復させたりするという。
その他に部隊はないが、土魔法を特性とする人たちもいると聞いた。
こんなにたくさんの魔術師がいても、弟のカイルセンと同じ光の魔法を使う人はいなかった。
「アキラさんは、どの部隊なんですか」
するとアキラさんは困ったような顔になり、「僕は、ちょっと変わり種なんだよね」と言う。
「変わり種とは…」
うーん、と唸るアキラさんの後ろから現れたリッツさんが、「ジークには黒板もチョークも見せたから大丈夫だよぉ」と言った。
「え!?団長!?
だ、だ、だって、僕の魔法は知られちゃダメだって」
「ジークはいいんだよぉ。エカたんの甥っ子なんだからぁ」
そう言って、俺を見ると、「こいつはねぇ、魔法も変わってるんだけどぉ。そもそも小さいときから変わってるんだぁ」と言う。
どういう意味なのかわからずに黙っていると、「じゃ、今日はアキラの話をするかぁ」と言って歩きだした。
さっき、困った様子だったのに…「アキラさん、すみません、俺、余計なこと聞いてしまって…。話してくれなくても大丈夫です」と言うと、満面の笑顔で
「いいんだよ!団長から許可が出れば話していいんだから!」
と言って、俺と手を繋いで歩きだした。
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