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第一章 復讐とカリギュラの恋
(10)膨らむ殺意
しおりを挟む馬車から降りたメナリーは腰が立たないほど草臥れ果てていた。股の間からザーメンが吹き溢れる。長いバルーン型の下着がザーメン塗れで気持ちが悪い。まさにぼろぼろの呈でよろめきながら館に入った。
ザカリー家の小間使いマロリーが「奥様、どうかなさいましたか」と近づいたが、メナリーは「湯浴みしたいから沸かして」と言い付けた。
「それから、お客様にお出しする料理を準備させて。準備ができたら私が味の確認をするから。お茶をお出ししておいて」
メナリーは、隠し持っている毒薬を使う時だと決めた。ヘシャス・ジャンヌの母親、つまりメナリーの異母姉に使ったマルチョパルポーレの灰汁だ。
「私を売春婦のように玩具にするとどうなるか、思い知らせてやる」
当主不在のままにルネ夫妻に客室を与え、ジグヴァンゼラは今まで知らなかった世界にどっぷりと浸かることになった。
日はまだ高く、ルネは窓を開けるのを拒み、ジグヴァンゼラは少し眠って気がつくと挿入されている。どろどろに疲れているのに若い身体は反応する。喘ぎを漏らして果ててもルネは続いている。ルネは萎えることがなかった。
長い湯浴みを終えて、メナリーはジグヴァンゼラがいないことに気がつくと、小間使いに行方を聞いた。
「ジグヴァンゼラ様ならお二階へ行かれました。ナヴァール子爵のお部屋です」
「お部屋っ。あの男に部屋を与えたのっ」
メナリーは顔色を変えた。馬車での狼藉はどのくらいだったか長い悪夢だった。
メナリーは何度も絶頂に達したが、強烈な殺意も渦巻く。絶頂に達すれば達するほど、快感の波が退いた後には二日酔いに似た頭痛のように押さえようもない殺意が膨らむ。
(この私に挨拶もなくいきなりあの様な狼藉を働いたからには生かしてはおかぬ。私はザカリー伯爵夫人よ。売春婦ではなくてよ。覚えておいて、ルネ。亡命してきたからにはフランスの爵位はないも同然。この国において、そうよ、アントローサ大公領の、特にこのザカリー領においてあなたを裁くのは簡単よ。私の夫はこの辺境地域の法。あなたなど一言で殺せる。生まれながらに芸術国貴族の夫人から見れば、卑しい蛮族と卑下されても当然だけど、この国での権限はこっちが上。ルネ、あなたも蕃族ってことよ。ザカリー傍流の没落家の庶子。よくもよくもよくもっ。覚悟してらっしゃい。今にその首を斬り落としてやるわ)
メナリーは億劫がる足を叱咤しつつ階段を上がった。コンコンと二度ノックしてドアを開く。リトワールはいない。
足音を立てずに部屋の中央まで進む。広々とした室内の左向こうのベッドに寝ているルネを見て、メナリーは後悔した。
(来るんじゃなかった。不快な顔。いえ、寝ているのなら今がチャンス。毒薬を口に滴込めば、殺せる。でも、殺した後はどうする。やはり賢く殺さなければ。ベッドが汚れるのも不愉快だわ)
そのベッドに息子ジグヴァンゼラが寝ているとも知らず、メナリーはドアに向かって歩く。メナリーのシルクに立体的な刺繍のドレスが衣擦れの音を奏でる。
ドアを開くと同時に後ろから口を塞がれた。あっと言う間もなく腕を浮かせた格好で室内に引き戻される。ドアが閉まった。
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