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第一章 復讐とカリギュラの恋
(37) 豚
しおりを挟む全ての部屋を捜索したが、ルネを見つけ出すことはできなかった。部屋の中はクローゼットやバスルームも隈無く探したという。
黒髪のボランズ伯爵はふと、(まさかあのルネの部屋の片隅、最初に私自身が隠れていた場所にいるのではあるまいな)と、天井からドレープをたっぷり取って陰影を作る様々な種類の垂れ布を眺める。そのドレープたっぷりの垂れ幕を、ルネの部屋に隠れるため利用したのだ。
廊下の要所要所に甲冑の兵士たちが立つ。無論、塔の入り口にも槍を持った四人の兵士たちが眼光鋭く立ち塞がって、ルネの姿を発見すれば全員で捕縛する予定だ。出立前から兵士たちには訪問の真の目的を告げてある。
「ボリオ伯爵、ルネの部屋をもう一度隈無く探せ。必ず今宵のうちに見つけ出すのだ」
それから、ボランズ伯爵は数名の兵士を伴って塔の中程まで上がって、甘いため息を吐いた。暫く階段に佇み、思い直して下りる。其処には最初にコルネリアとアントニートが登った。だいぶ時間が経っているが、花の香りに異臭は混じっていない。安全だ。
*****
ヴェトワネットは既に目を覚まして朦朧とした頭で娼婦の生首を掻き抱き、血糊を自身の顔に塗り胸に塗った。
きゃはははと邪鬼のような声を弾ませて起き上がり、衣装を脱ぐ。首のない死体に跨がった。腰を振る。
ルネはクローゼットのドアを僅かに開けてヴェトワネットの奇行を覗いた。その目に、ヴェトワ死んだ兵士の首から流れる血を求めて肩に跨がっている妻の姿が映る。
おぞましい場面にルネの下半身が勃つ。ヴェトワネットの血塗れのお尻が前後左右に揺れる。ルネはクローゼットから抜け出で下半身を脱ぐのももどかしくヴェトワネットに被さった。
途端に首の周りにぬらりと回される生温い感触、目の前を過る赤い蔵腑、ひょっこり斜めから覗きこむメナリーの顔。
「お、お前は死んだはずでは」
「旦那ぁ、ルネの旦那ぁ」
後ろから声がする。パブッチヨが鎌を持って立っていた。
「パブッチヨ……何故お前が」
元から日に当たらない青白い顔に驚愕と恐れが広がって血の気を失う。
「何故お前がと言われても、パブッチヨとは私の体型に関してのことなのですかな」
ボリオ伯爵が剣を抜いて構えている。
兵士たちが槍を向けて取り囲む中、正気に戻ったルネは「あははは」と笑った。
メナリーもパブッチヨも消えたが、首にはメナリーの腸が巻き付く感覚がある。
ルネは丸腰で下半身を隠すものが何もなかったから、ヴェトワネットの髪の毛を掴まえて無理に立たせ、盾の代わりにした。
「きゃははは」
ヴェトワネットは何がおかしいのか、ボリオ伯爵に抱きつこうと両手を伸ばして髪の毛の痛みに笑った。身体中血を浴びたようにぬらぬらと赤い。
「何としたこと。夫婦でこのような……捉えろ」
兵士が復唱した。
「捕縛っ」
ザザッと甲冑兵士の槍がルネの皮膚すれすれに迫り、背の槍は皮膚を突つく。ルネはヴェトワネットを盾にしながら部屋の中央に歩かされた。縄が飛んだ。首が絞まる。その縄が胸元をヴェトワネット諸とも縛り付ける。胴体周りを三周も括り、ルネは口のなかに丸めた布を入れられた。
「お前は終わりだ、ル・ヴィコント・ド・ナヴァール」
身体中に這い廻るメナリーの腸から滴る赤い血が、ルネとヴェトワネットの下半身を燃え立たせた。腸はルネの口の中にも侵入して、噛んでも噛んでも噛みきれない。
ルネは身体を折り曲げてヴェトワネットの太ももを持ち上げ、後ろからヴェトワネットの股にそそり立つ一物を挿入した。
衛兵たちはたじろぎ、ボリオ伯爵は語気を荒げた。
「止めろ。止めるんだ、ナヴァール」
ルネの狂気に兵士の中には吐き気を催す者もいた。嘲笑う目付き、恐れ怪しむ顔、卑しめる呟き、怒る者、ナヴァールは獣のように腰を動かし続け鼻を鳴らす。
「豚だ。いいや、豚以下だ」
呆けて呟くボリオ伯爵に後ろから声が掛かる。
「網を打て」
振り替えるとキース・ジャガレット侯爵の端正な顔が鬼のように変貌している。君子豹変の瞬間だ。
ルネは網の中でも腰を動かし続けた。兵士五人を残してジャガレット侯爵とボリオ伯爵はホールに戻った。
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