聖書サスペンス・領主殺害

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

文字の大きさ
38 / 128
第一章 復讐とカリギュラの恋

(37) 豚

しおりを挟む


  全ての部屋を捜索したが、ルネを見つけ出すことはできなかった。部屋の中はクローゼットやバスルームも隈無く探したという。



  黒髪のボランズ伯爵はふと、(まさかあのルネの部屋の片隅、最初に私自身が隠れていた場所にいるのではあるまいな)と、天井からドレープをたっぷり取って陰影を作る様々な種類の垂れ布を眺める。そのドレープたっぷりの垂れ幕を、ルネの部屋に隠れるため利用したのだ。



  廊下の要所要所に甲冑の兵士たちが立つ。無論、塔の入り口にも槍を持った四人の兵士たちが眼光鋭く立ち塞がって、ルネの姿を発見すれば全員で捕縛する予定だ。出立前から兵士たちには訪問の真の目的を告げてある。




「ボリオ伯爵、ルネの部屋をもう一度隈無く探せ。必ず今宵のうちに見つけ出すのだ」




  それから、ボランズ伯爵は数名の兵士を伴って塔の中程まで上がって、甘いため息を吐いた。暫く階段に佇み、思い直して下りる。其処には最初にコルネリアとアントニートが登った。だいぶ時間が経っているが、花の香りに異臭は混じっていない。安全だ。




*****



  ヴェトワネットは既に目を覚まして朦朧とした頭で娼婦の生首を掻き抱き、血糊を自身の顔に塗り胸に塗った。



  きゃはははと邪鬼のような声を弾ませて起き上がり、衣装を脱ぐ。首のない死体に跨がった。腰を振る。



  ルネはクローゼットのドアを僅かに開けてヴェトワネットの奇行を覗いた。その目に、ヴェトワ死んだ兵士の首から流れる血を求めて肩に跨がっている妻の姿が映る。



  おぞましい場面にルネの下半身が勃つ。ヴェトワネットの血塗れのお尻が前後左右に揺れる。ルネはクローゼットから抜け出で下半身を脱ぐのももどかしくヴェトワネットに被さった。



  途端に首の周りにぬらりと回される生温い感触、目の前を過る赤い蔵腑、ひょっこり斜めから覗きこむメナリーの顔。




「お、お前は死んだはずでは」

「旦那ぁ、ルネの旦那ぁ」




  後ろから声がする。パブッチヨが鎌を持って立っていた。




「パブッチヨ……何故お前が」




  元から日に当たらない青白い顔に驚愕と恐れが広がって血の気を失う。




「何故お前がと言われても、パブッチヨとは私の体型に関してのことなのですかな」




  ボリオ伯爵が剣を抜いて構えている。



  兵士たちが槍を向けて取り囲む中、正気に戻ったルネは「あははは」と笑った。



  メナリーもパブッチヨも消えたが、首にはメナリーの腸が巻き付く感覚がある。



  ルネは丸腰で下半身を隠すものが何もなかったから、ヴェトワネットの髪の毛を掴まえて無理に立たせ、盾の代わりにした。




「きゃははは」




  ヴェトワネットは何がおかしいのか、ボリオ伯爵に抱きつこうと両手を伸ばして髪の毛の痛みに笑った。身体中血を浴びたようにぬらぬらと赤い。




「何としたこと。夫婦でこのような……捉えろ」




  兵士が復唱した。




「捕縛っ」




  ザザッと甲冑兵士の槍がルネの皮膚すれすれに迫り、背の槍は皮膚を突つく。ルネはヴェトワネットを盾にしながら部屋の中央に歩かされた。縄が飛んだ。首が絞まる。その縄が胸元をヴェトワネット諸とも縛り付ける。胴体周りを三周も括り、ルネは口のなかに丸めた布を入れられた。




「お前は終わりだ、ル・ヴィコント・ド・ナヴァール」




  身体中に這い廻るメナリーの腸から滴る赤い血が、ルネとヴェトワネットの下半身を燃え立たせた。腸はルネの口の中にも侵入して、噛んでも噛んでも噛みきれない。



  ルネは身体を折り曲げてヴェトワネットの太ももを持ち上げ、後ろからヴェトワネットの股にそそり立つ一物を挿入した。



  衛兵たちはたじろぎ、ボリオ伯爵は語気を荒げた。




「止めろ。止めるんだ、ナヴァール」




  ルネの狂気に兵士の中には吐き気を催す者もいた。嘲笑う目付き、恐れ怪しむ顔、卑しめる呟き、怒る者、ナヴァールは獣のように腰を動かし続け鼻を鳴らす。




「豚だ。いいや、豚以下だ」




  呆けて呟くボリオ伯爵に後ろから声が掛かる。




「網を打て」




  振り替えるとキース・ジャガレット侯爵の端正な顔が鬼のように変貌している。君子豹変の瞬間だ。



  ルネは網の中でも腰を動かし続けた。兵士五人を残してジャガレット侯爵とボリオ伯爵はホールに戻った。

















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...