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三の罪状
もう一人のSS級エリミネーター
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「いやあ遅れた遅れた。おっ! 集まってんな」
扉を開けながら入ってくる陽気な男性の声。
皆が怪訝そうにしているのは、その人物に見覚えが無い事を意味するのか。
“部外者?”
だが部外者がこんな所に用が有ろうはずがない。
陽気なその男性は、背丈こそ百七十少々の痩せ型。
ヴィジュアル系でも意識してるのか、綺麗に染め上げた栗色のストレートパーマに、襟髪のみ異常に伸ばした毛並みを、肩に垂らす様に束ねている。
中性的な顔立ちも相まって、ある意味女性よりも品が良い。
一瞬“外国の方ですか?”と見紛う。
しかし純正の黒い瞳が日本人である事に間違いはなさそうだ。
服装もお洒落だ。幸人と同年代位だろうが、黒一色の幸人とはあまりに対称的。
明るい青を基調としたカジュアルなスタイルは、ある意味この室内では場違いに見える程。
「アイツは……」
「日本に帰っていたのか……」
誰もがその人物に見覚えが無い中、何名かの呟きが聞こえた。
幸人と熾震だ。
「……遅刻ですよ。此所では時間厳守でお願いしたい処です」
琉月も彼の事を知っているそれは、明らかにエリミネーターが一人を指していた。
「堅い事言いっこ無しだよ琉月ちゃん」
ずかずかと歩み寄る彼もまた、琉月と顔見知り――と言うよりは親密にも近い。
「幸人……誰だアイツ?」
狂座の事情をかなり詳しいであろう、ジュウベエですら見知らぬその人物を、幸人は教えるかの様に呟く――
「――SS級エリミネーター『時雨(シグレ)』……」
「SS級……だと?」
幸人が呟いた意外な事実に、ジュウベエが目を丸くし、視線をそれに向ける。
陽気そうな彼に、そういった類いの威厳は感じられない。
幸人の呟きが耳に届いていた他の者達にも、その事実に戦慄が走った。
SS級は全てのエリミネーターにとって、目指すべき存在であり、同時に謎多き存在でもある。
“そのSS級がこの場に二人も?”
注目が彼等に集まる。
だがもう一人の陽気な彼は、そんな視線を知ってか知らずか、近くの者が手に持つ書類を無造作に剥ぎ取った。
「ふぅん……。コカイントラストね。で、依頼金は幾ら?」
突然の時雨の問いに、書類を奪われた者は動揺しながら、それでも馬鹿正直に答える。
「じゅ……18億5000万」
それを聞いた時雨が、よりいっそう目を輝かせた。礼も言わず。
「まあまあだな。よし、この依頼は俺が請けよう」
突然の時雨の身勝手な提案に、皆唖然。
遅れて来といてこの振る舞い。
「久々に日本に帰って来たはいいけど、雑魚ばかりで退屈だったからね。この位じゃないと面白くない。ねぇ、いいでしょ琉月ちゃん?」
しかし彼にそんな遠慮や気まずさは無い。琉月にだけ向けるそれは、その他を目に留めてない顕れ。
「それは構いませんが、貴方の他に二名が立候補しておりますので……」
琉月もそんな彼に戸惑っている様に感じる。
言葉を濁したそれは、つまり三人でジャンケンしろと言う事だ。
「他の? ああ無理無理。返り討ちに遭って結局俺が動くのがオチだって! 二度手間時間の無駄」
そうケラケラと笑うは、明らかな他のエリミネーターへ対する侮辱の態度。
悪気が無い処か悪意を以て笑う時雨に、何か肌のひりつく様な敵意、もとい無数の視線が彼に集まっていた。
扉を開けながら入ってくる陽気な男性の声。
皆が怪訝そうにしているのは、その人物に見覚えが無い事を意味するのか。
“部外者?”
だが部外者がこんな所に用が有ろうはずがない。
陽気なその男性は、背丈こそ百七十少々の痩せ型。
ヴィジュアル系でも意識してるのか、綺麗に染め上げた栗色のストレートパーマに、襟髪のみ異常に伸ばした毛並みを、肩に垂らす様に束ねている。
中性的な顔立ちも相まって、ある意味女性よりも品が良い。
一瞬“外国の方ですか?”と見紛う。
しかし純正の黒い瞳が日本人である事に間違いはなさそうだ。
服装もお洒落だ。幸人と同年代位だろうが、黒一色の幸人とはあまりに対称的。
明るい青を基調としたカジュアルなスタイルは、ある意味この室内では場違いに見える程。
「アイツは……」
「日本に帰っていたのか……」
誰もがその人物に見覚えが無い中、何名かの呟きが聞こえた。
幸人と熾震だ。
「……遅刻ですよ。此所では時間厳守でお願いしたい処です」
琉月も彼の事を知っているそれは、明らかにエリミネーターが一人を指していた。
「堅い事言いっこ無しだよ琉月ちゃん」
ずかずかと歩み寄る彼もまた、琉月と顔見知り――と言うよりは親密にも近い。
「幸人……誰だアイツ?」
狂座の事情をかなり詳しいであろう、ジュウベエですら見知らぬその人物を、幸人は教えるかの様に呟く――
「――SS級エリミネーター『時雨(シグレ)』……」
「SS級……だと?」
幸人が呟いた意外な事実に、ジュウベエが目を丸くし、視線をそれに向ける。
陽気そうな彼に、そういった類いの威厳は感じられない。
幸人の呟きが耳に届いていた他の者達にも、その事実に戦慄が走った。
SS級は全てのエリミネーターにとって、目指すべき存在であり、同時に謎多き存在でもある。
“そのSS級がこの場に二人も?”
注目が彼等に集まる。
だがもう一人の陽気な彼は、そんな視線を知ってか知らずか、近くの者が手に持つ書類を無造作に剥ぎ取った。
「ふぅん……。コカイントラストね。で、依頼金は幾ら?」
突然の時雨の問いに、書類を奪われた者は動揺しながら、それでも馬鹿正直に答える。
「じゅ……18億5000万」
それを聞いた時雨が、よりいっそう目を輝かせた。礼も言わず。
「まあまあだな。よし、この依頼は俺が請けよう」
突然の時雨の身勝手な提案に、皆唖然。
遅れて来といてこの振る舞い。
「久々に日本に帰って来たはいいけど、雑魚ばかりで退屈だったからね。この位じゃないと面白くない。ねぇ、いいでしょ琉月ちゃん?」
しかし彼にそんな遠慮や気まずさは無い。琉月にだけ向けるそれは、その他を目に留めてない顕れ。
「それは構いませんが、貴方の他に二名が立候補しておりますので……」
琉月もそんな彼に戸惑っている様に感じる。
言葉を濁したそれは、つまり三人でジャンケンしろと言う事だ。
「他の? ああ無理無理。返り討ちに遭って結局俺が動くのがオチだって! 二度手間時間の無駄」
そうケラケラと笑うは、明らかな他のエリミネーターへ対する侮辱の態度。
悪気が無い処か悪意を以て笑う時雨に、何か肌のひりつく様な敵意、もとい無数の視線が彼に集まっていた。
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