雫 -SIZUKU- 最終特異少年戦記~破

ユキナ

文字の大きさ
6 / 55
第1章 蒼月の侍

五話 蒼に狂いし月に笑う

しおりを挟む
ーー暗闇の中。月明かりに照らされて、より一層映える紅。


辺りには無数の遺体が転がっていた。そのどれもが、原形を留めていない程に欠損している。


血の臭いが充満し、現場は酸鼻を極める地獄絵図と化していた。


「こっ……こんな事が……」


両腕が欠損し、芋虫の様に這うしかない狂座第十二軍団長アルマ。


“――これは……悪夢か?”


現実を直視出来ず這うアルマの前に、蒼髪の男が無機質な蒼色の瞳と笑みで、見下ろしていた。


「最期に一つ聞いといてやる。直属部隊を殺ったという奴は誰だ? そしてそいつは今何処にいる?」


“――こいつじゃ無いのか?”


こうなってしまった以上、もうどうでもよかったのかもしれない。アルマは自分の最期を悟り、声を振り絞り口に乗せる。


「アザミ様を……倒したとされるのは特異点……。そ……そしてそいつは……東北にある、夜摩一族の下で“光界玉”を護っている……らしい……」


それを聞いて蒼髪の男の表情は、より一層の笑みを浮かべた。


「ご苦労さん」


蒼髪の男はそれだけを言うと、無慈悲にも這いつくばるアルマの頭を踏み潰す。


脳漿が潰れたトマトの様に“グチャ”と生理的に嫌な音と共に、地面をどす黒い染みが広がっていく。


そして辺りは、木々のざわめきしか聞こえない沈黙の闇。


蒼髪の男は月を見上げ、一人其処に佇む。


月明かりに映し出されたその表情は、無機質な瞳とは不釣り合いな迄に笑っていた。


「ああ面倒臭かった。さて……」


“どうやら間違い無いみたいだな。直属部隊を倒した特異点。そんな事が出来る奴は現在、この世に一人しかいないーー”


蒼髪の男は、酸鼻を極める地獄に背を向け歩み出す。


“東北か……。そんな処に流れ着いていたとはな”


「クククッ」


男の口許からは、零れる笑みが抑えきれない。


行き先は決まっている。


蒼髪の男は歩みを止め、夜空を見上げる。


「再び逢える日が愉しみだよ……」


狂おしいまでに妖しく輝く満月。高揚を抑えきれない。


再びの邂逅をーー


「なあ?  ユキヤ……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「やはり鍛えることは、大切だな」

イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」  その日、一つのお見合いがあった。  ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。  クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。  そして互いに挨拶を交わすその場にて。  ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。  けれども……――。 「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

【完結】真実の愛はおいしいですか?

ゆうぎり
恋愛
とある国では初代王が妖精の女王と作り上げたのが国の成り立ちだと言い伝えられてきました。 稀に幼い貴族の娘は妖精を見ることができるといいます。 王族の婚約者には妖精たちが見えている者がなる決まりがありました。 お姉様は幼い頃妖精たちが見えていたので王子様の婚約者でした。 でも、今は大きくなったので見えません。 ―――そんな国の妖精たちと貴族の女の子と家族の物語 ※童話として書いています。 ※「婚約破棄」の内容が入るとカテゴリーエラーになってしまう為童話→恋愛に変更しています。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

【完結】お父様の再婚相手は美人様

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 シャルルの父親が子連れと再婚した!  二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。  でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

妹のために愛の無い結婚をすることになりました

バンブー竹田
恋愛
「エミリー、君との婚約は破棄することに決まった」 愛するラルフからの唐突な通告に私は言葉を失ってしまった。 婚約が破棄されたことはもちろんショックだけど、それだけじゃない。 私とラルフの結婚は妹のシエルの命がかかったものでもあったから・・・。 落ちこむ私のもとに『アレン』という大金持ちの平民からの縁談が舞い込んできた。 思い悩んだ末、私は会ったこともない殿方と結婚することに決めた。

好きな人ができたなら仕方ない、お別れしましょう

四季
恋愛
フルエリーゼとハインツは婚約者同士。 親同士は知り合いで、年が近いということもあってそこそこ親しくしていた。最初のうちは良かったのだ。 しかし、ハインツが段々、心ここに在らずのような目をするようになって……。

処理中です...