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セイドリックの災難4
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「それで、毎日いそいそと早くに帰っては、雛鳥に餌をやる親鳥よろしく甲斐甲斐しく世話を焼いているってわけか」
レイルが俺に冷たい視線を寄越す。
ここはいつもの事務室。朝の挨拶がてら、レイルにロクさんの様子を報告してやったところだった。
「レイルお前口が悪いぞ。ロクさんは雛鳥なんかじゃない。それにちゃんと今は自分で食べる練習もしている。怪我もだいぶ良くなってきたから、あともう少しだ」
「あそ。で、仲良くやってんだ」
「相変わらず含みのある言い方だな。そりゃ毎日顔をあわせているからな。ロクさんはあれでなかなかの博識だ。昔神官見習いをやってたらしくてな。……結局神官にはなれなくて、それをアテにしていた親兄弟とは縁を切られたらしい。かわいそうに」
「は? 神官見習い? ……ヤツがそう言ったのか」
レイルの中で何か引っかかったような口ぶりだ。
「そうだ。神殿では星見を学んだと言っていたぞ。神殿の奥に『星見の窓』というものがあって、そこで星を見るんだそうだ。それでこの前二人で星を見たんだ。さすがに詳しかったぞ」
「……へぇ」
「今の現場も治癒師として採用されたんだろう? やけにひ弱なヤツだと思ったが、元神官見習いの治癒師なら納得だ」
「治癒師ねぇ……。二人で一緒に星を見るなんて、そりゃロマンチックで何より」
急に興味をなくしたのか、揶揄うようなどうでもいいような返事を返してくる。
「お前な。興味が失せたからって、そうやって投げやりになるのやめろ」
「はいはい。……そういや、屋敷で何か異変はないか? 例えば、何か盗まれたり、怪しい来訪者があったりしないか」
「いや、特にないな……、あ」
「なんだ」
「いや、前に夜中にロクさんが、勝手に台所から酒を盗んでたことならあったな」
「酒?」
「ああ、俺に隠れて飲もうとしてたんだ。おかしいだろう。相当酒が好きらしい。怪我が治るまでは飲むなと言っていたんだがな」
「それで?」
「それだけだ」
その言葉にレイルが呆れたようにハーッと息を吐いた。
「何もないならいい」
「どうした? 何かあるのか」
「いや、最近、街で強盗事件が発生していてな。お前の屋敷もそこそこ大きいし。それで聞いてみただけだ」
それならばうちは心配ない。
この前の修繕で、屋敷に備え付けてあった金目のものはほぼ売り払ったからな。
盗みに入っても、見掛け倒しでガッカリするだけだ。
「まあ、何はなくとも防犯には気をつけろよ」
「ああ。何かあれば相談する。なんだ、もう行くのか?」
レイルは俺の問いかけには返事せず、手をヒラヒラさせてどこかへ行ってしまった。
(なんだ、今日は事務室での作業ではないのか)
久々に朝からレイルが事務室にいるから、今日は一日ここにいるのかと思っていた。
(何のためにここに来たんだ、あいつは。ただの暇つぶしか)
それなら現場にいるコウさんの話でもしてくれたらいいのにと、俺は心の中で悪態ついた。
△△△
「よし、なかなかうまく食べられるようになったな」
「はい! セイドリックさんがしっかり教えてくれるから」
この休日、俺は朝からロクさんの食事の介助をしていた。もう今では日課のようなものだ。
ロクさんの寝台に座り、彼の左手にスプーンを持たせる。
彼は握力が弱いのか、それともただ不器用なのか、左手でスプーンをうまく握ることができないのだ。
だが、俺がいなくても食事ができるようにしないと、いざというとき困る。
そう思い、毎日こうやって左手でスプーンを持つ特訓をしてきたのだが。
努力の甲斐あり、最近では上手にスープをすくって飲めるようになってきた。
「俺が夜勤のときなどは、こうやって介助できないからな。ひとりでも食べられるようにならんとな。ほら、また少しこぼした」
「あっ、すみません……」
口元に垂れたスープを、ロクさんの首に巻いたナプキンの端で拭いてやった時だった。
部屋にコンコンコンとノックの音が。
「なんだ、入れ」
この時、俺はてっきり下女か誰かだと思いこみ、確認もせず入室を許した。
——この不用意な一言が、後々ひどく後悔するきっかけを作るとも知らずに。
「なんだ、宜しくやってんのか? 邪魔しちゃったか」
その声に振り向くと、開いた扉からいつもの呆れた表情のレイルの顔が覗いていた。
「な、レイル!? どうしたんだ、急に。ひとりでここまで入ってきたのか? 下女か誰かいなかったのか」
この客間はロクさんが使っているから、もし客が来たら違う部屋へ案内しろと言っていておいたのに。
それに例え相手がレイルでも、客が来て知らん振りは宜しくない。この屋敷の主として、あとでキツく言っておかねば。
——俺はこの時、雇ってから日が浅く、躾のなっていない我が家の使用人を腹立たしく思った。しかしそれはまったくの誤解で、彼らの怠慢でもなんでもなかったのだ。
レイルが俺に目配せし扉から体をずらすと、その後ろに人影が。
「……コウ、さん?」
——そう、レイルの後ろには、この屋敷の正式な居住者であるコウさんが立っていた。
コウさんは俺の許可がなくても自由に出入りしていいと、客ではないのだと、俺がそう自ら使用人らに伝えていた。
コウさんが一緒だから、あえて誰も俺を呼びに来なかったのだ。
「あ——、久しぶりだな、セイドリックさん。ロクさん、大丈夫か? みんな心配してるぞ。見舞いに来たんだが……」
俺はロクさんの寝台から立ち上がり、足早に扉へ駆け寄った。
「今日は休みなのか? なんでレイルと……」
「コウさんが、この屋敷に行くの緊張するっていうからさ、付いてきてやったんだよ。まあお前の家だけど、見かけは貴族の家だしな」
それなら先に言ってくれたら、俺が迎えに出たのに。
「じゃあ今日はここに泊まるんだな?」
コウさんの顔を見ようと覗き込むが、ふいっとそっぽを向かれてしまった。
「あ、いや、今日は遠慮しておくよ。……ここは落ち着かないし」
「そうそう。コウさんは俺と俺のおすすめの娼館に行くんだよなー! コウさんとは女の趣味があうから、きっと気に入る女がいるぞ」
「レイル!!」
「セイドリックさん、それはレイルさんの冗談だ。明日は朝から仕事があるから、できれば早めにあっちへ戻りたかったんだ。娼館に行く予定も他に泊まる予定もない」
「……そうなのか? でもまだ時間はあるんだろう? お茶でもいれよう」
「あー……と、いや、ロクさんは今食事中だろ? 邪魔をしちゃ悪いし、……俺は帰るな」
気まずそうにそう言うと、少し後ろに後ずさった。
「え?」
そのまま踵を返して歩いて行ってしまう。
俺の顔を一度も見ずに。
俺はそれを呆然と見送る。
「え、あ、コウさん……?」
「自業自得だ。早く追いかけろ」
「コ、コウさん!!」
レイルにガンッと足を蹴りつけられて我に返り、俺は慌ててコウさんを追いかけた。
△△△
「おい、お前」
扉に凭れたまま、レイルは寝台の上のロクに声をかけた。それも見舞い相手にかける声とは思えぬほど、ひどく冷たい声で。
「……なんですか」
ロクはそんなレイルに戸惑い、不安そうに目をキョロキョロとさせ、首のナプキンを取って左手で弄んだ。
「お前、セイドリックを騙してんじゃねえよ。元神官見習いとか、嘘だろ」
「……騙してません! いきなりなんですか? 本当のことです!!」
左手にナプキンを握りしめ、ロクはわなわなと震えた。
「俺には治癒の力があって、昔、ですけど……本当に神殿にしばらくいました! ……神殿に問い合わせてくれたら、分かる筈です」
「ふん、じゃあ治癒師は? セイドリックには治癒師として雇われたって言ったんだろ。……嘘をつくな。あそこには罪人の更生目的で雇われたんだろうに」
「な、なんで……!!」
その言葉に、ロクはハッと青ざめさせた顔を上げ、愕然とレイルを見た。
「今俺はあそこの担当の文官共とも親しいんだよ。お前がどういう経緯で雇われたのか調べさせて貰った。詐欺と窃盗の犯罪歴があるんだってな」
「…………」
「それにセイドリックの馬に何か仕掛けたのもお前だな。あのとき馬を驚かすような何かしたか。あの馬は軍馬だ。多少のことでは動じないように訓練された馬だ。意味もなく暴れたりはしない」
ロクはただ顔を青ざめさせるだけで、何も言わなかった。
それを見てレイルはハッと鼻で笑った。
「セイドリックはああ見えて、いいとろこの出だからな。金を持ってると思ったんだろうが、残念だったな。あいつは金に執着ないんだよ。すぐにどこかに寄付しちまう。この屋敷もすっかり簡素になっちゃって。盗み目的でここに来て、さぞガッカリしただろうな」
「俺は!! …………俺は、本当にセイドリックさんのことが……」
「じゃあなんで馬を暴走させ、嘘をついて騙した!? セイドリックはバカがつくほどのお人好しだ! それに弱者にはめっぽう弱いときた。とくにお前みたいな、一見か弱そうなやつにはすぐ騙される。何が狙いだ? 親兄弟に見捨てられたお前が、起死回生とばかりにあいつと結婚でもしようと思ったか? あいつなら一生騙して搾取できると思ったか?」
「…………俺は、俺はただ……セイドリックさんに俺のことを見てほしかっただけなんだ……………」
その言葉にレイルがチッと舌打ちする。
「……それなら尚の事やり方がまずかったな。酒を飲んで回復を遅らせようとしたり、稚拙で呆れる。いいか。あいつのことを好きだとか、そんなことはどうでもいい。とっととここを去れ。あてにできる親戚がいたとかなんでもいい。——ここで俺がお前を軍馬への傷害と詐欺でしょっぴいてもいいんだが、セイドリックが知ると悲しむ。お前から身を引け。もう二度と姿を見せるな」
ロクは青ざめた顔で一筋涙を流すと、静かに頷いた。
△△△
レイルが俺に冷たい視線を寄越す。
ここはいつもの事務室。朝の挨拶がてら、レイルにロクさんの様子を報告してやったところだった。
「レイルお前口が悪いぞ。ロクさんは雛鳥なんかじゃない。それにちゃんと今は自分で食べる練習もしている。怪我もだいぶ良くなってきたから、あともう少しだ」
「あそ。で、仲良くやってんだ」
「相変わらず含みのある言い方だな。そりゃ毎日顔をあわせているからな。ロクさんはあれでなかなかの博識だ。昔神官見習いをやってたらしくてな。……結局神官にはなれなくて、それをアテにしていた親兄弟とは縁を切られたらしい。かわいそうに」
「は? 神官見習い? ……ヤツがそう言ったのか」
レイルの中で何か引っかかったような口ぶりだ。
「そうだ。神殿では星見を学んだと言っていたぞ。神殿の奥に『星見の窓』というものがあって、そこで星を見るんだそうだ。それでこの前二人で星を見たんだ。さすがに詳しかったぞ」
「……へぇ」
「今の現場も治癒師として採用されたんだろう? やけにひ弱なヤツだと思ったが、元神官見習いの治癒師なら納得だ」
「治癒師ねぇ……。二人で一緒に星を見るなんて、そりゃロマンチックで何より」
急に興味をなくしたのか、揶揄うようなどうでもいいような返事を返してくる。
「お前な。興味が失せたからって、そうやって投げやりになるのやめろ」
「はいはい。……そういや、屋敷で何か異変はないか? 例えば、何か盗まれたり、怪しい来訪者があったりしないか」
「いや、特にないな……、あ」
「なんだ」
「いや、前に夜中にロクさんが、勝手に台所から酒を盗んでたことならあったな」
「酒?」
「ああ、俺に隠れて飲もうとしてたんだ。おかしいだろう。相当酒が好きらしい。怪我が治るまでは飲むなと言っていたんだがな」
「それで?」
「それだけだ」
その言葉にレイルが呆れたようにハーッと息を吐いた。
「何もないならいい」
「どうした? 何かあるのか」
「いや、最近、街で強盗事件が発生していてな。お前の屋敷もそこそこ大きいし。それで聞いてみただけだ」
それならばうちは心配ない。
この前の修繕で、屋敷に備え付けてあった金目のものはほぼ売り払ったからな。
盗みに入っても、見掛け倒しでガッカリするだけだ。
「まあ、何はなくとも防犯には気をつけろよ」
「ああ。何かあれば相談する。なんだ、もう行くのか?」
レイルは俺の問いかけには返事せず、手をヒラヒラさせてどこかへ行ってしまった。
(なんだ、今日は事務室での作業ではないのか)
久々に朝からレイルが事務室にいるから、今日は一日ここにいるのかと思っていた。
(何のためにここに来たんだ、あいつは。ただの暇つぶしか)
それなら現場にいるコウさんの話でもしてくれたらいいのにと、俺は心の中で悪態ついた。
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「よし、なかなかうまく食べられるようになったな」
「はい! セイドリックさんがしっかり教えてくれるから」
この休日、俺は朝からロクさんの食事の介助をしていた。もう今では日課のようなものだ。
ロクさんの寝台に座り、彼の左手にスプーンを持たせる。
彼は握力が弱いのか、それともただ不器用なのか、左手でスプーンをうまく握ることができないのだ。
だが、俺がいなくても食事ができるようにしないと、いざというとき困る。
そう思い、毎日こうやって左手でスプーンを持つ特訓をしてきたのだが。
努力の甲斐あり、最近では上手にスープをすくって飲めるようになってきた。
「俺が夜勤のときなどは、こうやって介助できないからな。ひとりでも食べられるようにならんとな。ほら、また少しこぼした」
「あっ、すみません……」
口元に垂れたスープを、ロクさんの首に巻いたナプキンの端で拭いてやった時だった。
部屋にコンコンコンとノックの音が。
「なんだ、入れ」
この時、俺はてっきり下女か誰かだと思いこみ、確認もせず入室を許した。
——この不用意な一言が、後々ひどく後悔するきっかけを作るとも知らずに。
「なんだ、宜しくやってんのか? 邪魔しちゃったか」
その声に振り向くと、開いた扉からいつもの呆れた表情のレイルの顔が覗いていた。
「な、レイル!? どうしたんだ、急に。ひとりでここまで入ってきたのか? 下女か誰かいなかったのか」
この客間はロクさんが使っているから、もし客が来たら違う部屋へ案内しろと言っていておいたのに。
それに例え相手がレイルでも、客が来て知らん振りは宜しくない。この屋敷の主として、あとでキツく言っておかねば。
——俺はこの時、雇ってから日が浅く、躾のなっていない我が家の使用人を腹立たしく思った。しかしそれはまったくの誤解で、彼らの怠慢でもなんでもなかったのだ。
レイルが俺に目配せし扉から体をずらすと、その後ろに人影が。
「……コウ、さん?」
——そう、レイルの後ろには、この屋敷の正式な居住者であるコウさんが立っていた。
コウさんは俺の許可がなくても自由に出入りしていいと、客ではないのだと、俺がそう自ら使用人らに伝えていた。
コウさんが一緒だから、あえて誰も俺を呼びに来なかったのだ。
「あ——、久しぶりだな、セイドリックさん。ロクさん、大丈夫か? みんな心配してるぞ。見舞いに来たんだが……」
俺はロクさんの寝台から立ち上がり、足早に扉へ駆け寄った。
「今日は休みなのか? なんでレイルと……」
「コウさんが、この屋敷に行くの緊張するっていうからさ、付いてきてやったんだよ。まあお前の家だけど、見かけは貴族の家だしな」
それなら先に言ってくれたら、俺が迎えに出たのに。
「じゃあ今日はここに泊まるんだな?」
コウさんの顔を見ようと覗き込むが、ふいっとそっぽを向かれてしまった。
「あ、いや、今日は遠慮しておくよ。……ここは落ち着かないし」
「そうそう。コウさんは俺と俺のおすすめの娼館に行くんだよなー! コウさんとは女の趣味があうから、きっと気に入る女がいるぞ」
「レイル!!」
「セイドリックさん、それはレイルさんの冗談だ。明日は朝から仕事があるから、できれば早めにあっちへ戻りたかったんだ。娼館に行く予定も他に泊まる予定もない」
「……そうなのか? でもまだ時間はあるんだろう? お茶でもいれよう」
「あー……と、いや、ロクさんは今食事中だろ? 邪魔をしちゃ悪いし、……俺は帰るな」
気まずそうにそう言うと、少し後ろに後ずさった。
「え?」
そのまま踵を返して歩いて行ってしまう。
俺の顔を一度も見ずに。
俺はそれを呆然と見送る。
「え、あ、コウさん……?」
「自業自得だ。早く追いかけろ」
「コ、コウさん!!」
レイルにガンッと足を蹴りつけられて我に返り、俺は慌ててコウさんを追いかけた。
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「おい、お前」
扉に凭れたまま、レイルは寝台の上のロクに声をかけた。それも見舞い相手にかける声とは思えぬほど、ひどく冷たい声で。
「……なんですか」
ロクはそんなレイルに戸惑い、不安そうに目をキョロキョロとさせ、首のナプキンを取って左手で弄んだ。
「お前、セイドリックを騙してんじゃねえよ。元神官見習いとか、嘘だろ」
「……騙してません! いきなりなんですか? 本当のことです!!」
左手にナプキンを握りしめ、ロクはわなわなと震えた。
「俺には治癒の力があって、昔、ですけど……本当に神殿にしばらくいました! ……神殿に問い合わせてくれたら、分かる筈です」
「ふん、じゃあ治癒師は? セイドリックには治癒師として雇われたって言ったんだろ。……嘘をつくな。あそこには罪人の更生目的で雇われたんだろうに」
「な、なんで……!!」
その言葉に、ロクはハッと青ざめさせた顔を上げ、愕然とレイルを見た。
「今俺はあそこの担当の文官共とも親しいんだよ。お前がどういう経緯で雇われたのか調べさせて貰った。詐欺と窃盗の犯罪歴があるんだってな」
「…………」
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ロクはただ顔を青ざめさせるだけで、何も言わなかった。
それを見てレイルはハッと鼻で笑った。
「セイドリックはああ見えて、いいとろこの出だからな。金を持ってると思ったんだろうが、残念だったな。あいつは金に執着ないんだよ。すぐにどこかに寄付しちまう。この屋敷もすっかり簡素になっちゃって。盗み目的でここに来て、さぞガッカリしただろうな」
「俺は!! …………俺は、本当にセイドリックさんのことが……」
「じゃあなんで馬を暴走させ、嘘をついて騙した!? セイドリックはバカがつくほどのお人好しだ! それに弱者にはめっぽう弱いときた。とくにお前みたいな、一見か弱そうなやつにはすぐ騙される。何が狙いだ? 親兄弟に見捨てられたお前が、起死回生とばかりにあいつと結婚でもしようと思ったか? あいつなら一生騙して搾取できると思ったか?」
「…………俺は、俺はただ……セイドリックさんに俺のことを見てほしかっただけなんだ……………」
その言葉にレイルがチッと舌打ちする。
「……それなら尚の事やり方がまずかったな。酒を飲んで回復を遅らせようとしたり、稚拙で呆れる。いいか。あいつのことを好きだとか、そんなことはどうでもいい。とっととここを去れ。あてにできる親戚がいたとかなんでもいい。——ここで俺がお前を軍馬への傷害と詐欺でしょっぴいてもいいんだが、セイドリックが知ると悲しむ。お前から身を引け。もう二度と姿を見せるな」
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