お見合い、そちらから断ってください!【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
5 / 45

見合い後の家族

しおりを挟む

 間野家に帰宅した亜里沙達。

「あぁ、疲れた」
「亜里沙!待ちなさい!」
「何かまだあるの?お父さん」
「見合いは断らないからな!」
「は?万里紗でいいじゃん!見合い相手」
「万里紗は駄目だ」

 玄関に入る早々、父太輔から足止めされて、かなり不機嫌そうにする亜里沙。

「え?何でよお父さん」
「そうだよ、万里紗はその気だからいいじゃん」
「速水物産の親戚になれる可能性だってあるんだ!失敗は許されん」
「私じゃ無理だっていいたいの?お父さん」
「万里紗でいいじゃん」
「相手の、小山内さんの言葉を聞いただろ、28歳以下は駄目だと」
「年齢なんて、好きになっちゃえば気にしないって、ねぇお姉ちゃん」
「それは知らん、私に聞かないでくれる?……もう、本当に久々に着物着て疲れたんだから、離れに戻るよ」
「亜里沙!」

 聞く耳等持たず、亜里沙はさっさと離れに戻り、着物を脱ぎ捨て、動きやすい格好になると、直ぐ様テレビを付け、ゲームを始めた。

「うわっ!ランキングめっちゃ落ちたじゃん!土日が勝負なのに!あぁ!もう!今日は何もかも上手くいかないんじゃないか、て思えて来る!こんな時はガチャでスッキリしたいけど、ハズレ引いたらもっとストレス溜まるし~~!」
「亜里沙嬢様、何ですか!お着物をこんなに脱ぎ散らかして!」
「あ、幸枝さん頼んでいい?それ」
「亜里沙嬢様………もう少し、ご自分の事はしっかりなさって下さいませんと、本当に万里紗嬢様に先を越されますよ」
「…………何?見合いの事?別に良いけど」
「そんなに、不格好な方だったんですか?お相手」

 家政婦の幸枝が、丁寧に着物をたたみ、亜里沙に聞いてくる。

「さぁ?コンタクトもせず、連れて行かれたから、顔はっきり見てない……万里紗が格好いい、て言ってたから、イケメンなんじゃない?万里紗に聞いて」
「………はぁ……全くもう……旦那様が凄い剣幕でしたよ?お相手の人となりをしっかり見極めてからでも遅くは無いんじゃありません?直ぐに万里紗嬢様にお譲りなさるなんて、お小さい時の亜里沙嬢様はそんな事なされませんでしたのに」
「私は一生独身でいいもん……3次元の男なんて興味無し!」
「幸枝は3次元だか2次元だか知りませんが、亜里沙嬢様が幸せになる事であれば、何も言いませんよ………はぁ……」

 テレビ画面でゲームを胡座をかき夢中の亜里沙の背に向かい、大きな溜息を吐く幸枝。

「うわぁ、お姉ちゃん相変わらず、2次元世界……」
「何、万里紗」
「お父さんが、お姉ちゃんと私でお見合い話進めるって」
「…………は?何で2人なの!」
「航さんを落とした方に、嫁がせるって………所でさ……お姉ちゃんの今のどれ?」

 万里紗も姉がゲームオタクだと知っていて、亜里沙の座る横に座ってテレビ画面を見据えた。

「推し?………コレかな……あとこのキャラもいいなぁ、て思ってる」
「…………ふ~ん……残念だったね、お姉ちゃん」
「何が?」
「…………航さん……お姉ちゃんの推しキャラ並にイケメンだったのに………私、マジで狙うから、後悔しても知らないよ~」
「…………え!?」
「お姉ちゃん、コンタクトしてたらあんな態度取ってなかったろうけど、あの態度じゃ相手にされないよね、今後も」
「ま、万里紗………本当に似てた訳?」
「……………如何でしょう?……さて、と……航さんと次会える時の為に、今からデート用の服選ぼっと」

 ―――え……本当に似てたの……かな……

 そう思うと、気にはなってくる亜里沙だが、ゲーム内の様な顔が整っている男等、そうそう居るものでもない。テレビに出てくるタレントや俳優達の様な、整っている男等、亜里沙には面識も無かった。

「ま、いっか………気にした所で会う事無いし」

 だが、亜里沙の平凡な日常がこの日で様変わりするのだが、亜里沙は知る由もなかった。
 
「亜里沙嬢様、幸枝は母屋に居りますね」
「………は~い」

 母屋では、亜里沙の両親が話をしていた。

「亜里沙は結婚してくれますかね?」
「してもらわねば……でなければ、将太の結婚話も進められないだろ………今の時代、順番は如何でもいいが、将太の結婚相手は一般のお嬢さんだ。会社には何のメリットも無い。会社の貢献にはならない上に、デメリットの方がある。将太に今後任せるにしても、仕事を覚えてもらう為には、亜里沙はで居て貰っては困るのだ」
「結婚しなかったら如何するんです?将太もまだ式の日取りは決まってないですけど、それ迄は何とか婚約ぐらい迄しておかないと……確かにあちらからすれば、亜里沙は小姑ですものね……」
「気にしていない、とは言われたがな……1人娘の家庭だしな……波風は起こしたくない………」

 亜里沙の弟の結婚の為には、長女である亜里沙が干物女のままなのも困るのだ。何故干物女になったのかも両親は分からない。少なくとも大学在学中は、万里紗の様に洒落た服を着て、友人達も多かった亜里沙だったが、大学卒業を期に生活はガラッと変わってしまって6年。
 もう、華やかな生活には戻る気も無さそうな亜里沙に頭を抱えていたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~

紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。 「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。 だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。 誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。 愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。

叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家 結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。 愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。 絶対に離婚届に判なんて押さないからな」 既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。 まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。 紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転! 純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。 離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。 それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。 このままでは紘希の弱点になる。 わかっているけれど……。 瑞木純華 みずきすみか 28 イベントデザイン部係長 姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点 おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち 後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない 恋に関しては夢見がち × 矢崎紘希 やざきひろき 28 営業部課長 一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長 サバサバした爽やかくん 実体は押しが強くて粘着質 秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?

処理中です...