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見合い後の家族
しおりを挟む間野家に帰宅した亜里沙達。
「あぁ、疲れた」
「亜里沙!待ちなさい!」
「何かまだあるの?お父さん」
「見合いは断らないからな!」
「は?万里紗でいいじゃん!見合い相手」
「万里紗は駄目だ」
玄関に入る早々、父太輔から足止めされて、かなり不機嫌そうにする亜里沙。
「え?何でよお父さん」
「そうだよ、万里紗はその気だからいいじゃん」
「速水物産の親戚になれる可能性だってあるんだ!失敗は許されん」
「私じゃ無理だっていいたいの?お父さん」
「万里紗でいいじゃん」
「相手の、小山内さんの言葉を聞いただろ、28歳以下は駄目だと」
「年齢なんて、好きになっちゃえば気にしないって、ねぇお姉ちゃん」
「それは知らん、私に聞かないでくれる?……もう、本当に久々に着物着て疲れたんだから、離れに戻るよ」
「亜里沙!」
聞く耳等持たず、亜里沙はさっさと離れに戻り、着物を脱ぎ捨て、動きやすい格好になると、直ぐ様テレビを付け、ゲームを始めた。
「うわっ!ランキングめっちゃ落ちたじゃん!土日が勝負なのに!あぁ!もう!今日は何もかも上手くいかないんじゃないか、て思えて来る!こんな時はガチャでスッキリしたいけど、ハズレ引いたらもっとストレス溜まるし~~!」
「亜里沙嬢様、何ですか!お着物をこんなに脱ぎ散らかして!」
「あ、幸枝さん頼んでいい?それ」
「亜里沙嬢様………もう少し、ご自分の事はしっかりなさって下さいませんと、本当に万里紗嬢様に先を越されますよ」
「…………何?見合いの事?別に良いけど」
「そんなに、不格好な方だったんですか?お相手」
家政婦の幸枝が、丁寧に着物をたたみ、亜里沙に聞いてくる。
「さぁ?コンタクトもせず、連れて行かれたから、顔はっきり見てない……万里紗が格好いい、て言ってたから、イケメンなんじゃない?万里紗に聞いて」
「………はぁ……全くもう……旦那様が凄い剣幕でしたよ?お相手の人となりをしっかり見極めてからでも遅くは無いんじゃありません?直ぐに万里紗嬢様にお譲りなさるなんて、お小さい時の亜里沙嬢様はそんな事なされませんでしたのに」
「私は一生独身でいいもん……3次元の男なんて興味無し!」
「幸枝は3次元だか2次元だか知りませんが、亜里沙嬢様が幸せになる事であれば、何も言いませんよ………はぁ……」
テレビ画面でゲームを胡座をかき夢中の亜里沙の背に向かい、大きな溜息を吐く幸枝。
「うわぁ、お姉ちゃん相変わらず、2次元世界……」
「何、万里紗」
「お父さんが、お姉ちゃんと私でお見合い話進めるって」
「…………は?何で2人なの!」
「航さんを落とした方に、嫁がせるって………所でさ……お姉ちゃんの今の推しキャラどれ?」
万里紗も姉がゲームオタクだと知っていて、亜里沙の座る横に座ってテレビ画面を見据えた。
「推し?………コレかな……あとこのキャラもいいなぁ、て思ってる」
「…………ふ~ん……残念だったね、お姉ちゃん」
「何が?」
「…………航さん……お姉ちゃんの推しキャラ並にイケメンだったのに………私、マジで狙うから、後悔しても知らないよ~」
「…………え!?」
「お姉ちゃん、コンタクトしてたらあんな態度取ってなかったろうけど、あの態度じゃ相手にされないよね、今後も」
「ま、万里紗………本当に似てた訳?」
「……………如何でしょう?……さて、と……航さんと次会える時の為に、今からデート用の服選ぼっと」
―――え……本当に似てたの……かな……
そう思うと、気にはなってくる亜里沙だが、ゲーム内の様な顔が整っている男等、そうそう居るものでもない。テレビに出てくるタレントや俳優達の様な、整っている男等、亜里沙には面識も無かった。
「ま、いっか………気にした所で会う事無いし」
だが、亜里沙の平凡な日常がこの日で様変わりするのだが、亜里沙は知る由もなかった。
「亜里沙嬢様、幸枝は母屋に居りますね」
「………は~い」
母屋では、亜里沙の両親が話をしていた。
「亜里沙は結婚してくれますかね?」
「してもらわねば……でなければ、将太の結婚話も進められないだろ………今の時代、順番は如何でもいいが、将太の結婚相手は一般のお嬢さんだ。会社には何のメリットも無い。会社の貢献にはならない上に、デメリットの方がある。将太に今後任せるにしても、仕事を覚えてもらう為には、亜里沙は小姑で居て貰っては困るのだ」
「結婚しなかったら如何するんです?将太もまだ式の日取りは決まってないですけど、それ迄は何とか婚約ぐらい迄しておかないと……確かにあちらからすれば、亜里沙は小姑ですものね……」
「気にしていない、とは言われたがな……1人娘の家庭だしな……波風は起こしたくない………」
亜里沙の弟の結婚の為には、長女である亜里沙が干物女のままなのも困るのだ。何故干物女になったのかも両親は分からない。少なくとも大学在学中は、万里紗の様に洒落た服を着て、友人達も多かった亜里沙だったが、大学卒業を期に生活はガラッと変わってしまって6年。
もう、華やかな生活には戻る気も無さそうな亜里沙に頭を抱えていたのだった。
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