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番外編【皇太子邸】
しおりを挟むその夜、皇太子邸に帰ったリュカリオン。
この日はリュカリオンにとって、非常に疲れた日だった。
それというもの、タイタスがボルゾイで飲まされた媚薬の効果がどういう物かを知りたくなり、弟トーマスも媚薬を使った事があるか、を先ず聞いた事が始まりだった。
「兄上、そういうのは使いたくない、て以前言わなかったか?」
「道具はな……だが媚薬は道具ではないだろ?持ってないのか?」
「俺が持っている媚薬は、身体に塗る物だ。飲む方は流石に入手はな、鮮度とかの関係があるし。」
「トーマス………気にならないか?」
「気になる……。」
そうして、タイタスを捕まえて、入手方法を聞こうと思っていたのだが、ウィンストン公爵とセシルに阻まれ、仕事も出来ず説教を食らったのだ。
(…………何故バレたんだ……昨日の今日だぞ!)
「お帰りなさいませ。」
「………ただいま……ナターシャ。」
「お疲れの様ですが、大丈夫ですか?」
リュカリオンの最愛の人、ナターシャが明るい表情でリュカリオンを出迎える。
リビングでは乳母車に寝ている、2ヶ月前に産まれたアスランと、アスランの頭の上で、ヴィオレットが編みぐるみや音のなる玩具を持ってアスランをあやしていた。
リュカリオンにとっては幸せな光景で、それがいつもの皇太子邸の一家団欒。
「大丈夫だよ、着替えてくる。」
「はい。ではまた後程。」
リビングで妃と子供達の顔を見て、着替えに行く夫を見送ったナターシャ。
気配が離れると、ナターシャが呟いた。
「大分、説教されましたわね、あれ。」
「そのようですね。」
「いい気味。絶倫に付き合うこちらの身にもなって欲しいものだわ。」
「…………ナターシャ様、大変でしたしね。」
そうなのだ。
ヴィオレットが産まれ、暫くは2人目はまだ考えていなかった時に、トーマスとラメイラの子が双子と分かると、無理矢理子作りを再開させたリュカリオン。
毎夜、朝まで寝かせてくれず、ヴィオレットの育児に影響が出ていたのだ。
それは侍女達も知っていて心配したセリナやライアは、ウィンストン公爵には報告はしてあった。
しかし、ウィンストン公爵も娘夫婦で話し合う必要がある、と思い、それに関してはリュカリオンには言わなかったのだが、今回の媚薬の件では話は別である。
それも、リュカリオン自身が飲むのも困るが、娘ナターシャに飲ませたくない、父としての心配もあり、話を聞いて直ぐに動いたのだ。
「今日は本当にお疲れですわね、リュカ。」
「…………そうなんだ……ちょっとな。」
ベッドに入り身体を休めていたリュカリオンの横に、アスランに授乳を終え寝かしつけたナターシャが潜り込む。
「気になる事がありました?」
「………あぁ、でももう諦めた。」
「諦めた?」
「あぁ、宰相に阻止されるのは分かってるからな。」
「因みに何を諦めたんです?」
「……………言わない。」
ナターシャには分かっている。
ボルゾイからの報告書でタイタスが媚薬を飲まされたという事を、カイルから聞いたのだ。
『ナターシャ、リュカ殿下がタイタス殿下の飲んだ媚薬に興味を示してた………まさか無いとは思いたいが、リュカ殿下がその媚薬を飲んだら、閨は覚悟しとけよ。』
と、聞かされていたのだ。
カイルも知っている。
皇子達の絶倫ぶりはトーマス通じて分かっていた。
「わたくし、媚薬等飲みませんし、媚薬を飲んだらその日リュカとは部屋を別にしますから。」
「!!…………ナターシャ!!」
「知らないと思ってました?因みに、ラメイラもアニース様も、同じ意見ですからね?」
リュカリオンは蒼白になる。
今は無理でも、いずれは、と計画していたのだ。
そして、その夢は儚く消えたのであった。
「おやすみなさいませ。」
その夫の顔を満足げに見たナターシャは、リュカの唇に軽くキスをし寝るのだった。
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