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【過去編】操り人形の王子達
②
しおりを挟む暫くすると、フィーネが妊娠した。僅か13歳の少女がだ。父親はトンプソン。アイゼンはフィーネに飽きたのか他の妾に子を産ませ、ロマーリオは抱かずに夜を共にするだけで会話も無くフィーネに安眠を与えただけだった。
案の定、トンプソンが王太子になり、フィーネに久々にロマーリオは声を掛けた。
「フィーネ、おめでとう」
勿論、本心で祝辞を述べてはいない。城の狭い管理下で、自由等無い状況で一生妾でトンプソンや父王の操り人形になるフィーネを祝えなかった。
「ふふふ………ありがとうございますロマーリオ殿下………トンプソン殿下にやっとお役に立てる日が来ます……この子が完成すれば、私は思いのままよ……お姉ちゃんに負けないわ」
「!!」
いつの間にか、フィーネの性格も作り変えられた気配がしたロマーリオ。
王も、ロマーリオに期待をもう寄せてはいない。トンプソンを唯一の我が子とし、アイゼンの反発が出たのもあり、王令でフィーネを操り、魔力でアイゼンを魔法で殺害させたのだ。
「ははははははっ!トンプソン殿下見てくれました?貴方のお荷物消しましたよ?」
「見事だ!フィーネ!」
それを目の当たりにし、ロマーリオの記憶が鮮明に思い出す。フィーネの両親を同じ様に殺し、高笑いしていたあの頃を。『役に立たない者には死』『王に逆らう者は罪人』と教えられた幼少期。
ロマーリオは、反抗せずトンプソンの補佐をする側に回る為に、腕を磨くたと言って、偽名をコーウェンと名乗り騎士団へと入団したのだ。
騎士団での自由の生活は、ロマーリオに生きていると実感させられていた。魔獣討伐に忙しかったのが祟り大怪我をしたが、手当てをしてくれた薬師のおかげで、またも一命を取り留めたロマーリオは、助けたフィーナと出会う。
「良かった……彼意識取り戻したわ!」
「本当か?コーウェン!大丈夫か!?」
「……………サムエル?」
「まだ安静にしててよ?傷が開いちゃうから」
何人もの怪我人の手当てを忙しなくしているフィーナに、フィーネの面影をダブらせたロマーリオ。
「彼女の名………は?」
「あぁ、フィーナという薬師だ……彼女が作る薬は良く効く………俺も切り傷が出来たが、もう完治したんだ」
フィーナは気立てが良く、美しい女だった。騎士団の騎士の目がフィーナへと向くのは直ぐで、フィーナは誰に告白されても軽くあしらう為、高嶺の華の存在になっていく。
「フィーナは、誰にでも親切だな」
「そうかしら……私冷たい女だわ」
時折寂しそうな表情を垣間見え、ロマーリオにはその理由が薄々分かっていた。だが、それを言うと、フィーナはロマーリオに憎悪を向けるだろう。フィーネの事を言いたくても言えずにいると、ロマーリオにもフィーナへの恋心が芽生えていく。如何しようもないこの気持ちは止める事が出来なかった。片思いでいい、そう思い距離を置くようになるが、まだ完治してない程の重傷だったロマーリオを心配し、フィーナは毎日の様に献身的に看病する。
―――人の気も知らないで……
やっと起き上がれる様にもなると、フィーナは詰所には毎日は来なくなった。それが寂しくて、体力が落ちたロマーリオは体力回復で詰所内を散歩する。
「好きなんだ、フィーナ………俺の妻にならないか?」
「………ごめんなさい、私……好きな人居るの……実らない恋だけどとても大事な恋だから………」
「相手は知ってるのか?フィーナの気持ち」
「知らないんじゃないかしら……最近冷たいもの………でもいいの、告白しない恋だから」
「不毛じゃないか!」
「そうね………不毛でいいわ……またあの人が怪我したら、私が治すだけで満足よ……もうあまり来れないだろうけど……怪我をして欲しい、て思ってしまう程好きな人だけど、彼には幸せになって欲しいから……」
―――誰なんだ?フィーナの好きな男って……
散歩中、ロマーリオは物陰に隠れ盗み聞きをしていた。
「聞いていいかな?……相手は誰?」
「…………内緒にしてくれる?」
「するよ!………フィーナが好きな男が俺よりいい男だったら諦め付くし!」
―――うん……俺も諦め付くな……きっと……
「…………コーウェン……」
―――!!
直ぐ背後で、声がして振り向くとフィーナが立っていた。物陰に隠れきれていなかったようで、フィーナに気が付かれた。
「何してるの?」
「…………あ、いや……散歩してて……」
「それで、物陰に隠れてるのはおかしくないかしら?治療するわ……早く部屋に戻りましょ」
フィーナはロマーリオの腕を取り、引っ張って行く。取り残されたフィーナへ告白した騎士は、何となくそれで分かってしまった。
「コーウェンかぁ………そんな気がしてたんだよなぁ……コーウェンもフィーナが好きそうだったし、頑張れよ………」
それから、自然にフィーナと付き合う様になったロマーリオと、街中で2人歩く姿を目撃されたのは直ぐだった。
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