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翡翠
しおりを挟む多香子の件から多香子は休学届けを出していた。それ以来多香子とは連絡を取っていない雫。
「…………良し!今日も美味しく出来た………かな?」
「あ!今日洋食食べたい!て言ったろ!雫!」
「あ、おはよ、尊」
「はよ………じゃねぇ!俺は焼き立てのトーストが食べたかったんだ!何で和食なんだよ!」
「忘れた?昨日は私が食べたかった物、今日は弥、で明日は尊、て……3日ローテじゃない」
朝から食べたかった物で、雫と尊がバトル。料理を覚えたかった雫は弥や尊に時間が合えば簡単な料理を教えて貰っていた。と、いっても味噌汁のだしは、弥や尊が取った物が冷蔵庫に入っていって、それを分量通りに鍋に注ぎ、味噌を溶くだけ。具はカット野菜をぶち込む。後は、冷凍庫に保存してある切り身魚を焼いて、漬物や納豆を用意するだけだし、洋食だとヨーグルト、カット野菜のサラダを盛り付け、ミニトマトを乗せ、弥や尊が作り置きしたドレッシングを掛け、スクランブルエッグとベーコンかソーセージを焼き、バタートーストを焼くだけだ。包丁は弥か尊が居ない時は触れない。そして、雫リクエストは、和食で朝だけ雫が用意をしている。だが、起きれた場合のみ。ほぼ毎日、弥と尊に抱き潰されていたからなのだが。
「弥………和食リクエストしたな………」
「うん」
「ちっ……」
「はいは~い、尊~」
雫は両手を広げ、尊にアピールする。
「おはようのキスしない?」
「…………する………ブっ!!」
「はい、そこ迄」
「プッ…………」
尊の間に新聞紙を挟む弥。気配がしたから雫が両手を広げ迎えただけだった。朝の食事をしっかり取りたいと言う弥と尊だと知ったから、揉めてイライラさせたくない雫の対処。
「…………ね、お弁当も作ってみたけど、食べてくれる?」
「「食う」」
「じゃ、用意しとくから、朝ごはん食べてて」
明るく振る舞っているように見える雫に、付き合う弥と尊。雫は多香子の事を気にしている事に気付いていた。
「雫………明日デートしようか」
「……明日?」
「そう、明日は土曜だし、尊も休みだ………3人で、雫がしたい事しよう………頑張って朝食用意してくれてる雫への労いだ」
その言葉で、雫は輝く笑顔を振り撒いた。
「因みに、何処行きたい?」
「………え?私の希望にしていいの?」
「そりゃそうさ、雫への労いだから」
「考えておく」
「あぁ、考えろ」
雫の脳裏はデートの事を考え過ぎて、弥や尊の策略に気付く事は無かった。
✧✧✧✧✧
「どう?今日のデート服」
朝着替えて、弥や尊の好きそうな服を着ていた雫。弥と尊はラフな格好でᎢシャツにスラックス、カジュアルなジャケットを色違いで揃えている。そして、さり気なくプラチナチェーンのペンダントをしていた。
「ジュエリーを身に着けるの珍しい」
「あぁ、休みで出掛ける時はな……」
「イギリスに住む従兄の嫁さんデザイン。弥にはルビー、俺にはサファイアが合う、てプレゼントしてくれてな」
「デザイナーなの?」
「知らないか?【Neo Earth】てブランド」
「知ってる!私もいくつか持ってるけど、デザイナーの翡翠さんのジュエリーデザイン好きなんだ~」
「その翡翠さんが、従兄の嫁さん」
「……………いいなぁ、会ってみたい」
弥と尊が見合う。するとクスクスと笑い始める。
「今日本に帰ってきてるから、今日会いに店に行くと言ってある」
「さ、行くか」
駐車場に降りると、弥が待っていろと言われ、尊とマンションの前に待っていると、オープンタイプのスポーツカーが横付けされた。
「では、お姫さん、どうぞ」
「これ、弥の車?」
「いや、俺の車。共有してんだよ、仕事で乗る車は送迎だしな、そんなに乗らないし、2人で使ってる」
スポーツカーなので、後部座席は狭い。背の高い尊が後に座るには無理がある。
「私、後部座席でいいのよね」
「何言ってる、雫は助手席」
「尊も行くんでしょ?」
「俺は大丈夫………長時間車乗らないからな」
そう言うと、尊は雫を助手席に乗せ、オープンにしているので、尊は後部座席に飛び乗った。よく見ると、シートに足を伸ばして座っている。一見見ればモデルのような座り方だが、車に乗る姿勢にしては行儀が悪い。
「ここから、15分ぐらいだからな、翡翠さんの店」
サングラスをダッシュボードから出し、日差し防止だろう、弥はサングラスを掛けた。目立つスポーツカーに乗るからか、信号待ち等では黄色い悲鳴等も聞こえ、信号の待ち時間が長いと、弥や尊が声を掛けられる事もあった。だが、弥と尊は一切無視で、雫を気遣う徹底振りだった。
暫く走ると、ビルの地下駐車場に入っていき、弥と尊は先に降りると助手席のドアを開けた。いたせり尽くせりとはこういう事だろう、と思ってしまう雫。地下駐車場から店舗に入ると、きらびやかなジュエリーショップだ。
「凄い………1ビル全部、【Neo Earth】なんでしょう?」
「らしいな」
「いらっしゃいませ、本日のご予約のお客様でいらっしゃいますか?」
「皇ですが、オーナーの翡翠さんは?」
「弥、尊!」
「………ノエル!」
店の奥から、金髪碧眼の弥や尊に雰囲気が似ているイケメンがやって来る。
「ノエル、久しぶり、叔母さんは元気か?」
「あぁ、母さんは相変わらずお前達の母親と喧嘩ばっかさ………彼女?婚約者、ていう」
「あぁ、雫と言うんだ」
「あ、天使雫と申します」
「雫、彼が俺達の従兄のノエル・Jade・神谷……母親の双子の姉の息子なんだ」
「…………え!?弥と尊、てハーフ?」
「あれ?言ってなかったか?弥が話てたと思ってた」
「俺は尊が話てたと……」
長身で、日本人ぽくない体型をしていて、更に父である利勝は小柄な体型なのが不思議だった雫。ましてや、日本名なのだから、ハーフ等と思う事もなかった。
「だって日本名だし……黒髪黒目だし」
「はははっ!クォーターの俺のが日本人離れしてるしな!………翡翠はもう直ぐ来る、下の子を授乳中でな」
ノエルという人は、日本人離れしていて、父がイギリス人と日本人のハーフで自身はクォーターだと説明した。
「お上手なんですね、日本語」
「子供の頃は日本に両親と住んでたしね、日本に仕事しに来た時に日本人の翡翠と結婚して、日本語もよく使うから」
「ノエルは語学堪能なのさ、仕事柄ね」
「ノエル…………VIPルームにお通ししてるんじゃなかったの?……まだこんな所で立ち話なんて………」
確かにエレベーター前で立ち話しているのもおかしな話だ。募る話もあるだろうと、個室を用意してくれていたようだ。ノエルの後ろから、雫が会いたかった、【Neo Earth】のオーナー翡翠と、もう1人並んでやって来た。翡翠と面影が似ている雫と同世代ぐらいの青年、短髪の髪から見え隠れするシトリンのピアスが印象的だった。その青年は雫達に一礼し、翡翠の弟だと自己紹介をして屈託のない笑顔を見せた。
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