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出現
しおりを挟む約1週間、雫のキスマークもほぼ消え、久しぶりに雫は安心する。雫が衣装部屋にしている部屋の姿見で下着姿で確認していると、右側の骨盤辺りに痣を確認する。
「あれ?まだここのキスマーク消えないなぁ……」
花びらの様な痣がちらほらとあり、この部分に付けられた時期を考えてもよく覚えていなかった。
「もう暫く様子みようかな………でも今日ぐらいからまたセックスする………よね……生理終わったし………キスマーク付けるな、て言っても止めてくれないからなぁ………」
また週末は出掛ける、と言われていて、外出先もまだ聞いていない雫。宿泊とかになれば、雫の自由等無い可能性もある。
「良し、ドタキャンして家に帰ろ………呼び出された、とか言って……今日はロングのワンピースにしよ………簡単には見られないようにしなきゃ」
雫は知らない。弥や尊は既にその痣を見ている事を。服を着て、ダイニングに行く雫。朝食を作ろうとキッチンに掛けてあるエプロンを着けると、弥が起きてきた所だった。
「おはよう、雫」
「おはよ、弥」
軽いキスを交わすのが朝の挨拶にいつの間にかなっていた3人。
「今から作るのか?」
「うん、今日洋食希望の尊だから、おかずもパッと作れる物も多いし」
「俺も手伝う」
「弥………週末、何処に行く予定だった?」
サラダを更に盛り付けながら、雫は弥に聞く。
「雫の実家」
「…………え?……デートじゃないの?」
「行きたい所とかあったか?」
プレーンオムレツだろうか、卵をボウルに割り入れ、卵に牛乳、塩胡椒と目分量でササッと作る弥はフライパンから目線を外さず聞き直す。
「ううん………き、今日さ……ちょっと帰り遅くなってもいい?1人にならないように、如月さんに送迎お願いするから」
「何処に行くんだ?」
「………友達と、行きそびれたカフェに行こうかな、て………家に居た時は門限あって行けなかったから」
「……………分かった、でも遅くなるなよ?帰りも如月に手配させろ」
「う、うん」
嘘を見抜かれたような気がしないでもなく、雫は朝食の準備を終え、起きて来ない尊を起こしに行こうと、部屋に行きかけると、弥が声が掛かる。
「雫………生理終わった?」
「…………わ、私……長いのよ……まだ終わってない」
「…………ふ~ん……」
内心しまった、と思う雫。嘘がバレた時のお仕置きが絶対に待っている筈だ、と直感する。バタバタと尊が寝る部屋へ急ぐ後ろ姿に弥は言った。
「嘘が下手だな、雫」
そしてスマホを取り出しメールを打つ弥だった。
✧✧✧✧✧
「すいません、如月さん!まさか如月さんが来てくれるとは……」
「いえ、雫様のご要望とあらば………どちらに行かれるのです?」
大学の講義が終わり、校門で待つ如月に、雫は言った。
「絶対に絶対に絶対に!!弥と尊に言わないで下さい!!心配掛けたくないんで!!」
「…………畏まりました」
「本当に内緒にして下さい!お願いします!」
必死に訴える雫だが、如月は皇家の侍従で当主優先なのは分かっているのに、天使に頼らないのも何かあるのだろう。
「大丈夫ですよ、雫様………次期当主の夫人になる方ですし、弥様と尊様を裏切るような事がないのなら………」
「…………ゔ………裏切るつもりは全くありません…………今から地図を見せるので、ココに連れてって下さい………1人で行動すると弥も尊も怒るから」
「……………ココ、ですか?」
「………はい」
「分かりました、お送り致します」
雫が示した場所は皮膚科医の病院。如月は直ぐに弥と尊に雫にバレないようにメールする。
「ありがとうございます、如月さん」
「いえ…………ですが、弥様や尊様にお話しする必要はあるのではないですか?」
「私自身が分からないので、まだ言えません……………たく………………のよ」
「…………まぁ、弥様と尊様の雫様への執着心は凄いですからね……ご結婚後も大変かと思いますが」
「…………き、聞こえてました?」
「いえ、雫様のお顔を見ればそうかな、と」
「…………行ってきます」
「はい、終わりましたら、また呼び出しをお願いします」
『キスマーク付け過ぎなのよ』と思っていた言葉が、顔と共に聞こえたらしい。如月にホテルの宿泊や雫の衣類や日用品の手配等、弥や尊がさせている辺り、弥と尊の趣向も知っている筈なのだ。そしてその趣向に付き合っている雫だというのも……。雫は皮膚科に入っていくのを、如月が車の中から確認し、電話を掛けた。
「弥様………キスマーク付け過ぎるのも問題では?………はい、今皮膚科へ………雫様はご自分の状態の変化をご存知かと。皮膚科に受診した所で、取り越し苦労かとは思われますが…………はい受診が終わったと連絡がありましたら、弥様と尊様へ連絡致します」
如月はやれやれ、という顔で、通話を切る。
「異能の出現が間近なら、結婚式も早められた方がいいでしょうね…………利勝様とエレナ様へ連絡をしなければ……」
如月は再び、皇家当主の連絡先を開き、電話をするのだった。
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