魔法陣の中の皇女【完結】

Lynx🐈‍⬛

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アンジェリーク視点

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 アンジェリークは夢を見ていた。
 まだ5歳ぐらいの時の姿。
 兄とリザードと姉のセシリアが魔法学校に行き始め、寂しい思いをした為、王宮に居る間は兄達について周っていた。
 時々、そこへ兄達は友人を連れてくるようになる。
 まだ幼いキルストだった。
 皇子、皇女関係なくまだ遊べる関係だった4人。
 キルストが遊びに来た時は特に楽しかったアンジェリーク。
 鬼ごっこしても、かくれんぼしても、キルストはアンジェリークを庇うように遊んでくれていた。
 よく頭を撫でられ、その手が大好きだった。

「おいで、アンジェ。こっちに隠れよう。」
「………うん。」

 建物の陰に隠れ、鬼になったリザードに見つからないようにくっついて屈む事も多かった。

「ここ、見つからない?」
「分かんないけど、見つかったら僕が隠してあげる。」

 シャーシャー………。

 その時建物陰から、突然蛇が顔を出し、びっくりした2人は悲鳴をあげてリザードには見つかったが、お互いに抱き着いて震えていたのを思い出した。
 アンジェリークは何故忘れていたのかは不明だが、楽しかった思い出だった。
 その内、キルストが遊びに来なくなったのをきっかけで忘れていったのかもしれない。
 夢から覚め身体を起こし、ドレスを纏うアンジェリーク。
 まだ空は暗い。
 あれから、時間もそれ程経っていないようだ。

「…………そっか……あの時の男の子が………。」
「………男の子、て?」

 ベッドで仮眠をしていたキルスト。

「どれぐらい寝てた?」
「半刻ぐらいでしょうか。………侍女が塔の側で待っていますので、わたくし出ますわね。」
「………そうだな、俺はアンジェ達が離れてから出る事にしよう。」
「…………キルスト様………………。」
「何?」

 キルストが優しい眼を向けるので、アンジェリークは言おうと思った事を留める。
 それは傷付ける言葉ではない、むしろ喜ぶ言葉なのだが、まだ話たくないようなアンジェリーク。

「………何でもありませんわ。おやすみなさいませ。」

 一礼して部屋を出ていくアンジェリーク。
 見送ったキルストも、

「………おやすみ。」

 塔から出たアンジェリークは、塔を振り返る。

(……いち早く、婚姻を結べるよう、願っております。貴方のものになりたい。)
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