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しおりを挟む「ルビリア公国公女と話がしたい。同行願う」
逃げ場が無くなったレイシェス達。
だが、レイシェスは王太子リンデンが目の前に現れ、隠し持った短剣を服から出すと、リンデン目掛け襲い掛かった。
「お母様の仇!」
「「「姫様!」」」
「…………フッ……」
「あっ!」
いとも簡単に払い除けられ、腕を取られてしまうレイシェスは、そのままリンデンの胸に収まる。
「放せ!殺してやる!殺す!」
「如何する?このまま、我々が姫様を丁重に預かるか、其方達も我々と同行するか………それとも、姫様だけ残し其方達は捕虜となり、奴隷に落ちるか………選択肢は少ない」
「…………姫様を如何するつもりだ!」
ミハエルが対応する。
「話がしたい………そう申した。大人しくついて来るなら、生命の保証はしてやろう」
「抵抗するなら?」
「生命は無いと思え………大事な姫様なのだろう?」
「ミハエル………逃げ……」
「なりません!姫様1人に等!」
「忠誠心はあるな………姫様、其方の名は?」
「…………答える気はな………あっ!」
腕に力が入れられ、肩を脱臼してしまう角度迄曲げられてしまうレイシェス。
「姫様!」
「止めろ!レイシェス様だ!」
「ユラン!」
レイシェスを傷付けられるのだけは避けたくて、ユランが代わりに答えてしまった。
「…………レイシェス……美しい名だな……それで?其方達は来るのか?来ないのか?………逃げても良いが、レイシェスは置いてって貰う………反抗するなら、今様に傷付けてしまうかもな」
「っ!…………つ、ついて行くから………彼等を逃がし………」
「姫様!」
「っ!」
「エレズ!」
リンデンの背後から、剣を翳し駆け寄って来るエレズの声が聞こえ、レイシェスは叫び、斬りつけられそうになったリンデンは、剣で防御する。
「ほぅ………ルビリア公国の大佐だな?エレズと言う名は何度も聞いた……レイシェスと共に居たか」
「姫様を放して貰おう………王太子」
「殿下!」
「手を出すな!………我々が手を出すのは許さん」
「…………では何用だ……姫様を先ず放して貰おう」
戦う気が無い様子のリンデン達に、エレズは剣を翳すだけにし身構える。
「其方達、レイシェスの護衛全員共について来い」
「何だと?」
「でなければ、レイシェスだけ連れて行く」
「…………分かった……同行しよう……それで身の安全が保証されるとは俺達は思ってない。だが、逃げ場の無いこの状況下で姫様を人質に取られては、選択肢等1つ」
「…………賢明な判断だ………レイシェスと違いな………」
「姫様を馬鹿にするな!姫様は我々を心配なさっただけだ!」
「…………それでは助からぬぞ……レイシェスも其方達もな………ついて来い」
リンデンはそれでもレイシェスを離そうとはせず、引っ張って歩かせて行く。
「放して………歩くから………」
「逃げられたくないのでな………それに、先程の様な丸わかりの行動で母を助けに出よう等、ムラガに知らせる様なもの………無謀な考えは嫌いではないが、あの場でエレズの言う事を聞いていれば、俺に見つかる事も無かったのだぞ?」
「…………やはり、あの時の殺気は……」
「だから、其方達は逃げ回っていたのだろう?」
路地裏を暫く歩き、質素な馬車が目の前に並べて停まっていた。
「乗れ………部下が監視するが、手荒な事は命じていない………レイシェスとエレズは俺と乗れ」
「…………姫様、俺が付いています」
「…………え、えぇ……」
「…………」
忠義心の強いエレズに信頼度を強く持つレイシェスを観察しているリンデン。そのリンデンの横に座らされたレイシェスの前にエレズが座った。
「今から行く場所に着いたら話す………それ迄は言葉を慎め………馬車の外に会話が漏れても困る」
「他の者達は………」
「部下に探させている………見つければ連れて来るだろうさ」
それ以降、話す事も無く、無言のまま馬車を走らせ、暫くすると停められた。
「着いたな………降りろ」
「「…………」」
何処に連れて来られたのかは分からない。馬車の窓はカーテンが掛かっていたが、目張りされて外も見られなかった。
「…………中に入ったら、先ずは身支度を整えて貰う………邸に平民が居ては困るからな」
「…………お城じゃない……」
「城に等行くか………此処は部下の邸だ」
「殿下、直ぐに公女の身支度を用意させます」
「頼む………レイシェスの侍女か?あの女は」
「……………え、えぇ……」
「ロイズ!レイシェスの身支度を、そこの侍女と一緒にさせてやれ」
「分かりました。公女、其処の侍女………此方へ」
「……………エレズ……」
見知らぬ場所に連れて来られて、レイシェスが不安そうにしているので、エレズは安心させようと声を掛けた。
「クラリスも居ます…………何かあれば直ぐにお呼び下さい」
「……………」
レイシェスはただ頷くだけで、クラリスと共に、案内する使用人と共に邸の奥へと入って行った。
「其方達も風呂に入れ」
「我々は結構だ………王太子を信用している訳ではない。インバルシュタットは敵国だからな」
「…………まぁ、当然の答えだな……だが、不潔なのは俺は好まん………風呂に入らねば、話もしない………監禁しても良いのだぞ?」
「…………分かった……入らせて貰う」
暫くし、レイシェスは用意されたドレスを着る事にはなるが、サイズが合わないドレスにレイシェスが好む色でも無いので、余程急誂えした物だと思われた。
「お嬢様に合わずに申し訳ありません」
「…………い、いえ……」
「坊っちゃまが、直ぐに仕立て屋を呼ぶかと思いますので」
「そ、その必要………無いと………」
染め粉も洗い流されてしまい、銀髪が露わになったレイシェスだったが、久々に鏡で銀髪の自分を見られたのだった。
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