暗闇の麗しき世界へ【完結】

Lynx🐈‍⬛

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 このデートはお互いを知る機会になっていた。

「お前、こんな事も出来ないのか?」
「は、初めてゲームセンターに来たんですから、出来る訳ないじゃないですか!」

 カフェを出た後、近くにあったゲームセンターに入り、対戦ゲームを何故かしていた。楽しめるし、会話もゲームの話しか出ない。
 そして、クレーンゲームでぬいぐるみを取ろう、という話も出たので、麗禾は然程欲しかった訳ではないが、夢中で取ろうとしている。

「下手くそ」
「っ!………じゃぁ、黒龍さんがやってみて下さいよ!」
「俺はやらん。そういうのは下手だって分かってるから」
「ひ、酷いですね………性格悪いの分かってましたけど、人の出来不出来で馬鹿にしたいだけですよね!」
「今頃気が付いたか」

 1時間程、ゲームをして出たが、結局クレーンゲームを麗禾が夢中になっていたのを、晄が取っていた。

「な、何か…………すいません」
「簡単だったな………俺も初めてだったんだが」
「初めてだったんですか?苦手だって言ってましたよね」
「やりたくない事はしない主義だ。今はお前があまりにも下手で夢中になってるから、楽しそうだなと思って1回だけやってみようと思っただけだ」
「……………私、10回はやって取れなかったのに………」
「楽しめたなら良いじゃねぇか………夕飯には早い時間だな………今何か欲しい物あるか?」

 腕時計を確認した晄が、夕飯も麗禾と食べるつもりの様で、その間にまだ何処かに寄ろうとしているのか、麗禾に欲しい物があるかを聞いてくる。

「欲しい物なんてありません」
「服も?」
「はい」
「アクセサリー………」
「要らないです」
「何も要らないのか!」
「…………強いて言うなら、宅建資格を取る為の参考書と、就活に必要な情報誌とかですかね」
「……………もう良い………一緒に来い」
「あっ!」

 欲しい物を聞かれて、現実的な物を言った麗禾だが、晄は飽きれた様子で、麗禾の手を取って歩き出した。目的地も決めた様に歩く晄に、引っ張られる歩き方になって、麗禾は足を縺れそうになるので、晄が止まってくれる。

「早く歩き過ぎたな………」
「本当ですよ………コケたら怪我します………黒龍さん歩くの早いんだもの………」
「もう直ぐ其処だ」

 晄に手を取られた方を上げられ、麗禾は背伸びをさせられた。

「きゃ…………」
「…………あ、すまん」
「い、いえ………放して下さい……」
「良いじゃねぇか、このままで」
「嫌です」
「……………しょうがねぇな……」

 一応、まだ距離は開けてはくれる様で、手は放してくれた。
 麗禾はその指した方を見ると、とある雑居商業ビル。その看板にはまた高価そうな物を売っている店もある。

「要りませんよ?」
「行くだけだ、馬鹿」
「馬鹿って…………まさか、買って貰おうと私が思ってると思ってます?勘違いしないで下さいよ!全然思ってませんから!」
「如何だかな………」

 1階と2階がジュエリー店のビルに、予測通りに連れて行かれ、店内スタッフが麗禾達を出迎えた。

「いらっしゃいませ、若頭」
「若頭?…………え?何処?………きゃぁぁぁ!本当だわ!」
「居るか?」
「はい…………店長をお呼びして!」
「……………」
「何だよ、ジロジロ見て………俺の格好良さに惚れたか?」
「いえ…………やっぱり、想像通りに鬼畜なんだな、と見ていただけです」

 やはり、晄はモテると確信した麗禾だが、嫉妬した訳でもなく冷静だった。
 そんな会話中、店長らしき女が出迎えてくれた。

「若頭…………ご無沙汰ですね………あら……今日は可愛らしいお客様とご一緒なのですね………」
 
 麗禾とは違い、嫉妬丸出しで麗禾を見つめた、ジュエリー店の店長。

「あぁ………コイツの指のサイズを測りに来ただけだ」
「……………どの指です?若頭………」
…………とりあえずな」

 全指のサイズを測った所で、全部の指に指輪をするつもりは麗禾は無いし、晄に用意させたくはない。しかし、と言われないだけホッとする。

「……………相変わらずですね……私の前で………他の愛人をご自慢しにいらっしゃるのは………」
「お前が嫉妬するなら、俺はもう会わねぇぞ」
「っ!…………し、嫉妬なんて………そんな…………」

 店長が顔を赤らめ、体裁を取り尽くそうとしている。

「それに愛人じゃねぇ………コイツは俺の女にするんでな…………いずれ買う指輪のサイズぐらい知っておかねぇと、惚れられた時にお前の様な嫉妬を向けられちゃ、直ぐに用意してやれないのも困るんでな」
「っ!…………わ、若頭………わ、私を捨てる気ですか…………」
「あぁ、な」

 晄の女を大事に扱わない態度に腹が立つ麗禾。しかし、そこを追求してしまえば、麗禾を妬かせる為に言っているのか、と言われそうでならない。

「後腐れ無い付き合いが俺達の条件だ………コイツのサイズを測らないなら他を当るが?」
「やります!…………そ、そんな測らないなんて事は………」
「じゃあ、始めてくれ」

 店長は本心から晄を好きなんだと分かる。それなのに、その思いに応える気も無く、優越感に浸る晄に嫌悪しかない。
 そして、測りに来なくても麗禾は自分自身の指のサイズぐらいは分かっていた。麗禾本人に聞いてくれたなら、素直に答える事も、気分次第で伝えていたかもしれない。
 先程ゲームセンターで取ってくれたぬいぐるみを抱く麗禾は子供っぽく見られているであろう中で、楽しかった思いがあったので、聞かれてたら恐らく答えていただろう。
 麗禾は何を自慢し、何を麗禾に見せたかったのか晄の行動は分からなかった。
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