暗闇の麗しき世界へ【完結】

Lynx🐈‍⬛

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25 *晄視点

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 全裸のまま、晄はリビングダイニングに下りて来ると、榊がソファで仮眠を取っていたと知る。

「何だ、榊帰らなかったのか?カミさん放ったらかしじゃねぇか」
「…………えぇ……今日は普段の若頭とは違うので、無いとも限りませんから、妻には連絡を入れておいたんです………所で、下りてきて如何されました?お嬢は静かになりましたが」
「声枯れたんで、水取りに来ただけだ。直ぐに戻る」
「その方が良いでしょう………でも、良かったんで?あの様に泣かせて迄、送る事して」

 冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターを出し、一気に流し込む晄に、榊は聞いた。

「神崎に帰す気、起きねぇよ………昔はあんな扱い方してなかったと思ったがな………やっぱ、アレか?」
「そうでしょうね………黒龍の本邸での事件………お嬢が、日本庭園の池の鯉を眺めてた、という時に………黒龍本邸の警備を掻い潜っての誘拐なんて、あってはなりませんし、全責任が組長になりますからね…………そりゃ、神崎も許しはしませんよ」

 組長同士の会合で、幼い麗禾を連れて来た事も如何かと思われるが、黒龍組組長は許した。其処での誘拐事件だ。神崎組を潰す為に、麗禾を誘拐する計画は、晄と榊が阻止はしたが、晄は左肩から腕迄、大怪我を負い、今でも傷が残っている。
 余程怖かったんだろう、麗禾は泣きじゃくり、晄の怪我を見て泣きじゃくり、と大変だった。あれから気にはしていた晄ではあったが、会うとあの時の記憶が蘇りはしないか、と会う事は避けていた。
 しかし、麗子からあの時の記憶は何故か忘れてしまっている様だ、と聞かされ、尚且つあの時の責任を取ってくれまいか、と迄言われた晄は、政略結婚という重い枷を付ける事になったのだ。
 結婚は契約。愛情より信頼性が重視されるであろうこの関係。だが、晄は人を信用しない。あの事件から、警備の手薄で起きた事により大怪我した事も、全て人が関わる事で、晄は人一倍、警戒心を持つ様になり、心を鉄壁で塞いだ。
 女に対しても、愛情が伝わられても、返す事もせず、性欲だけの処理係程度としか思っていない。
 麗禾との結婚も同じ。ただ、結婚で縛るのだから、幸せを感じた方が心は楽だろう、と惚れさせなければならない。ただ、自分が返せる自信は無い、という鬼畜さは如何しても取れない。麗禾も信用出来ていないからだった。いつか裏切る、とその考えを否定する根拠も無いのだ。いつか、離婚を申し出られても、晄は直ぐに了承するだろうし、その間に子供を産んで貰えたならば、それで良いと思っている。籍を入れる前に孕ませても良いぐらいだった。

「そういや、アフターピルを何処にしまったっけな…………」
「そう仰ると思って、出しときました」
「…………本当、お前…………女房にしたいぐらい気が利くよな」
「止めて下さいよ、俺ノーマルなんですから」
「俺もだ、馬鹿」

 1本のミネラルウォーターを飲み切ってしまったのに気が付いて、晄はもう1本を出して、寝室に戻ろうとした。

「若頭」
「何だ?」
「お嬢を愛さないんですか?」
「……………無理かもな………麗禾は俺を好きにはならねぇよ………きっとな」
「なったら、若頭もお嬢を大事にします?」

 晄の歩みが止まる。そして、一気に殺気立ち、榊を睨んだ。

「……………何が言いたい?」
「いや、殺気を向けられても困りますが………お嬢は今迄の女とは違いますよ」
「…………だと思うぜ、俺も」
「あの事件の事抜きにして、考え直してみたら如何ですか?…………お嬢が、あの事件を知ったら責任感じる筈ですし、若頭も責任感じて結婚を決めたんでしょうが、お嬢は覚えてないんですから」
「…………俺は全部あの場面を話す気は無ぇよ………血生臭さしか無い話なんて、麗禾には酷だ」
「俺も話さない方が良いと思ってますよ………若頭は鬼神でしたからね」
「…………言ってろ……朝食は消化の良いのにしてくれ…………麗禾は夕飯食ってないからな」
「…………はい」

 避妊薬の入った袋とミネラルウォーターを手に持ち、晄は寝室へと戻って行った。
 ドアが閉まった頃、榊の一言が静かに残る。

「性根は本当は誰よりも優しいのに、不器用なんだから………晄さんは……」

 本人に言うと怒りそうだから、ポソッと呟いた言葉は直ぐに消えた。

「麗禾…………水飲ませるぞ」
「……………ん……」

 避妊薬を口に含み、口移しで麗禾に飲ませた晄。
 舌で麗禾の口の中に押し込んだ避妊薬は、水と共に麗禾は飲み込むと、晄はホッとする。

 ---何で、俺今ホッとしてんだ………ヤり過ぎて責任感じてんのかよ………間抜けじゃねぇか………

「…………も………もっ………と……」
「っ!」

 麗禾が、晄に手を伸ばしてくる。かなりの脱水症状だったらしく、水を欲しているのだろう。朦朧とする麗禾はセックス後によく見られる高揚感漂う、色香を纏いながら、晄に始めて強請った。

「エロい顔して煽んじゃねぇよ………今やる………」
「っ…………ふっ……んく……」

 ---やべぇ………コレ……エロいっ……

 折角落ち着かせた杭なのに、再び元気になってしまった。

「れ、麗禾…………まだ要るか?」
「…………頂………戴………」
「ま、待て!今やるって!」

 だが、晄は水を口に含める前に、麗禾が晄の唇に重ねてしまった。流れて来ない水に気が付いた様で、咄嗟に麗禾は晄から離れたが、照れている麗禾に、晄の杭は再び昂るのだった。
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