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マキシマスとの出会い

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「仕事は終わったか?ロゼッタ」
「…………マキシマス様……何故ここに?」
「迎えに来たのだが?」
「そうではなく、何故迎えに来たのです?私の家はここなので」

 マキシマスは心配で来たのだと思う。それはロゼッタでも。根拠の無い確信。だがのロゼッタでは甘える訳にはいかない。

「ロゼッタが記憶が無いという事はもう分かっている………だが、心配なんだ………ロベルトとサブリナが近くに居るのが耐えられない」
「ロベルトはともかく、サブリナは優しい子です!私に気を遣い、民衆にも慕われた可愛い妹よ!」
「では、その妹が君にした仕打ちを思い出せば考えを改める筈だ………」
「…………サブリナは、私に何をしたんですか?」

 俄に信じがたく、マキシマスに聞いたロゼッタ。サブリナが自分を貶める筈は無い、と思っていた。常にロゼッタを立てる様に控え、いずれは良い伴侶に恵まれるように、と王都へお行儀見習いとして、王宮に仕えたサブリナ。その任期満了になり帰郷した頃に、ロゼッタはロベルトと結婚した筈。

「言ったら君の心が持たない……只でさえ、その時期の記憶が無いのに……」
「お願いします!何があったのか教えて下さい!」
「…………君と俺との思い出が入った小瓶が何処かにある筈だ………以前冗談で思い出を記録したい、と君は俺に言った。俺視点ではあるが、その納めた小瓶を君に渡している。何処にあるのかは君だけが知っている筈なんだ。」
「思い出の小瓶?」
「思い出す可能性があるならそれを探せ……俺の思考迄入った小瓶だから恥ずかしいが、それで君の記憶が戻るなら俺は嬉しい」

 少し照れて俯くマキシマス。その仕草にロゼッタは心がときめいた。マキシマスはサブリナの婚約者だと聞いたロゼッタ。しかし、マキシマスはサブリナに対して好意を持っていない様子なのが不思議だった。

「我が家の執事から、貴方はサブリナの婚約者だと聞かされました。でも暫くして破棄を申し出て、私に求婚した、と父に言ったそうですね?」
「あの執事か………確かに控えていたな…あぁ、サブリナとは結婚しない、と伝えた事はある。そして、その後に君へ求婚した、と……」
「サブリナと婚約を破棄したのは何故?」
「……………サブリナからの推しに負けたのさ……俺も結婚をしなさい、と陛下や父上から言われていて、下手したら知りもしない令嬢を充てがわれそうだったんで困っていた所に、サブリナとは顔馴染みではあったし、好意を寄せられていたのもあって、付き合いが始まった。だが、サブリナの価値観が俺とは合わず、強引に結婚話をされるようになってきて嫌気が差していた時に、サブリナの任期満了が来て、領土に送ってって欲しいと頼まれた。」
「……………」
「だが、そうじゃない………父に紹介する、と言われこの屋敷に連れて来られ、婚約者だとサブリナが前領主に話した。結婚の約束も求婚もしていない相手にいきなり言われ、サブリナに別れを告げたんだ。だが、俺はこの街に別荘があったから、暫く美味い魚料理でも食べて王都に帰るつもりで数日この街に居た時にロゼッタと会った……………後は小瓶に入ってる……」

 この先も言いかけたマキシマスは、言葉を押し殺す。記憶という物は一つ解釈が違えば違う捉え方が出てきてしまう。ロゼッタがマキシマスと出会った時の解釈が、マキシマスと違う可能性もあるからだろう。そして、マキシマスの照れた赤い顔が増すばかりだった。

「ロベルトは言ったわ………私は貴方と男女の関係があった、と………本当ですか?」
「……………あぁ、本当だ。サブリナはそれを知って本性を表していったよ……それは俺は絶対に許さないし、ロベルトが君へ暴行するようになったのもその頃だったと記憶してる」
「…………私………流産した……て知ってます?」
「………………」

 マキシマスは赤かった顔が、青褪めていく。

「マキシマス様?」
「…………やっぱり………見当たらないのはそういう事か………俺が王令で国境警備の任が下る前、君は子を宿した……嬉しかったよ……順番は逆だったが、無事に産まれて来るようにまじないも掛けた……だが、任が下ってこの地を離れる時に、別のまじないにかけ直したんだ…………怖かったからね……ロゼッタを守れなくなったのが……」
「…………私、子供を産めなくなってしまったんです……」
「……………あぁ……それは無いよ……」

 マキシマスの表情は堅いままだが、優しい口調で返ってくる。

「え?」
「俺が君に最後に掛けたまじないはだから…………3年ある………一人で子供を育てなければならないロゼッタが新たに夫を迎え入れなければならなくなるのは嫌だった………例えそうなったとしても、ロゼッタが産む子供は俺の子供であってほしくて………ただ、俺の我儘だ………君が
俺を忘れ、幸せならまじないは解除するつもりで、不幸せなら俺が幸せにするつもりで帰って来た………それで?今君は幸せか?」
「……………幸せそうに見えますか?」
「見えない………だから、君の記憶を取り戻し、君がしたい様に協力する」

 ロゼッタは涙を溢す。心ではずっと涙を流していた。でも泣く事を忘れ必死に頑張ってきた3年。机に突っ伏して、ロゼッタは泣いた。誰かに縋って泣きたかったが、ではない。マキシマスもロゼッタの芯の強さが分かるからか、抱き締めたくても抱き締められなった。
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