【完結】鬼畜皇太子にロックオンされまして…………

Lynx🐈‍⬛

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コルセアと開戦

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 怒涛の初体験と、ルカスの鬼畜さを理解した夜から1週間。マシュリーはルカスをそれから拒否をしている。日を跨ぐ迄に、部屋の続き扉をノック3回をマシュリーは毎夜していた。

「マシュリー様、本日は皇妃様から、皇族専用庭園でお茶のお誘いが入っている以外、ご予定はありません」
「分かりましたわ」

 マシュリーは睡眠不足から解消され、にこやかな表情をカレンに返す。
 2回目の房事の朝、今度はルカスだけでなく、マシュリーも怒られた。身体中、キスマークだらけの朝から腰砕けのマシュリーを1人ベッドに残し、薔薇の間に帰り幸せそうに眠るルカスを叩き起こし、マシュリーに対しては、と言った手前、抱き潰されている状況に呆れ、流されて結局してしまった事に、マシュリー自身にも責任があるのだ、と懇々とカレンに説教されたのだ。母親の様に、ルカスを見守り、その妻の様に扱うカレンは最早、姑だった。2人に接近禁止令迄通告され、おかげでマシュリーはキスマークも消え、睡眠不足も無く、本当の姑になる皇妃とのお茶会に参加出来るのだから、結果的に良かった。
 だが、マシュリーはルカスと会えない日が続き、少し寂しく感じている。そして、先日マークが帰国したらしく、忙しさが増したらしく会えなくなってしまった。

「ルカス様は忙しいのかしら……」
「何でも、コルセアの方で動きがあったそうですね」
「…………やはり、輸出量と質に問題があったのね………」

 政の事は、あまり関与していないマシュリーには、ルカスも教えてはくれない。ジェルバ国の事に関しては、簡潔に教えてはくれてはいるが、どこ迄簡潔にしているか分からないのだ。

「失礼します………マシュリー様、ルカス様がお見えになりました。」
「ルカス様が?」

 カレンの監視下であれば、接近禁止令は解かれるが、マシュリーはカレンをチラ見する。

「過度な接触で無ければ」

 身体を重ねて以降、所構わずスキンシップをするルカスに対し、マシュリーも付き合う必要はない、と言われ、モルディア皇国でのモラルをマシュリーはカレンから教えて貰う事も屡々だった。

「マシュリー」
「ルカス様………ご機嫌如何ですか?……またお忙しい様ですが、お休み取れていますか?」

 数日振りのルカスの姿に如何しても質問してしまうマシュリー。そんなマシュリーにルカスは抱き締め、頬にキスを贈る。
 カレンからは、注意を受けず、は許容範囲内となる事を覚える。

「ご機嫌は悪いよ………マシュリーを抱けない日が続くから…………カレンの目が痛いし」
「ルカス様、当然です!」
「口にキスぐらいは良いだろ!?」
「それ以上しなければ」
「じゃ……………マシュ………んぐっ!」

 口にキスをしようとするルカスにマシュリーの手が塞ぐ。

「ルカス様に唇を許せば、押し倒されそうな予感しかないので………それに……今侍女達の前ですし………恥ずかしいです」
「ちぇ………あ、そうだ……報告があって来たんだ………明日朝にジェルバ国に旅立つんだよ………暫くはあちらに行かなければならない…………戻るのはまだ未定なんだ」
「長くなる、という事ですか?」
「コルセアに動きがあってね………今戦闘中なんだ………だから、マークと兵士達を連れて暫く戦地に行ってくる」
「…………大丈夫なのでしょうか……」
「本格的な戦闘になるのはもう少し先になるとは思う」
「…………戦争……阻止は出来ないのですか?」

 心配そうに、マシュリーはルカスを見つめ、抱き締めている腕に力を入れ、更に抱き締めていくルカス。

「コルセア側はまだジェルバ国がツェツェリア族の治めていると思っている。現に、兵士の武装はジェルバ国の武装だからね……だから、のらりくらりと戦って、時折殲滅させるぐらいで時間稼ぎは出来る筈………王が……義父上が居ると信じてね」
「コルセアから使者や兵士が来る度に、戦闘になって大丈夫なのでしょうか?」
「コルセアだけじゃないよ、アガルタもあり得る話だ………だから、城塞が出来る迄の時間稼ぎ」
「……………お気を付けて行ってきて下さいませ、ルカス様」
「大丈夫…………俺にはがあるからね」

 ルカスは、小さな布袋をマシュリーに見せ、マシュリーの手に乗せた。

「昨日、出来てね………カフスと、ピンバッジを作った………流石ツェツェリア族の加工技術だ……君のネックレスを頼んだ職人に、また頼ませて貰って作ったよ」
「……………お守りにして下さいますの?」
「当然………俺は君と共にあるからね」

 赤い宝石が着いたカフスとピンバッジ。黒髪のルカスには似合う色だ。血の深い赤い色の宝石は、マシュリーには気恥ずかしいが、ルカスが大事にしたい、と言うならば、マシュリーは構わなかった。
 ルカスの背に腕を回し、温もりを感じる。

「ルカス様………今夜………駄目……ですか?」
「俺が断るとでも?」
「思いません………」

 イチャイチャするな、とは言われてはいたが、私室の中ではあるのと、暫くルカスは留守になる為、カレンは聞かなかった事にした。
 
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