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成人
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しおりを挟むベルセルク公爵家次男、マーカスは慈善奉仕活動と働かなければ生活出来ないという苦渋を味わっていた。
ベルセルク公爵家の財産は、ほぼ邸の家令の給与、被害者達への救済の為に没収されたので、個人財産のみで当分生活をしなければならないのだが、マーカスは兄ツヴァイクとは違い、金を無計画な使い方をしていたらしく、無一文からの生活を余儀なくされた。
長女、次女もマーカスと似た様なもので、性格も我儘である事も相まって、働き口を探すのも一苦労している。
住む所迄奪われたのは、気の毒だと思ったエレノアは、ツヴァイク以外の兄姉3人には借家を借りる分は金を持たせてやりたい、と配ったそうなのだが、3人はそれさえも使い込んだので、エレノアはそれ以上救済はしなかった。
エレノアが居るから、と思われても困るのと、今迄のエレノアの経験上から来るもので、己で考えて這い上がって欲しい、との願いでだ。
結局、3人は住む場所も無く、四女エレノアを見舞う名目で、保護施設に転がり込み、慈善奉仕活動をしながら其処で生活を始めてしまった。
兄姉妹が、それで幸せなのか、とは疑問ではあるが、四女エレノアに悪い影響を与えかねない兄姉は監視されながら、その後保護施設からも邪険にされ追い出される、という結末となった。
これに懲りて、心を改めてくれる事が出来るかをエレノアは心配し、時折来る報告が良くないものばかりで暫くは頭を抱えていた。
兄姉達の仲は悪くはなかったので、その内ツヴァイクが弟妹達の面倒を見るかもしれない。
「ベルセルク公爵夫人が釈放されたよ、エレノア」
「…………そう……」
「如何なったか聞かないのか?」
「うん…………いつか偶然会っても、元気なら良い………」
「そっか…………それでも、エレノアは如何なっても良い、とかは言わないんだな」
化物と言われたら、エレノアとは会いたくはないだろうカミラ。それならば会わない方がお互いに心の傷を増やさなくて良い。元気で居てくれと願うだけだ。
カミラはベルセルク公爵と離縁後、実家に戻ったが、離縁された中年女が再婚を願っても、嫁ぎ先も見つからないのと、裁判での醜態からカミラは実の両親から絶縁されてしまった。
住み込みで働く場所を自ら探し回って、やっと手にした働き口も、元々の生活が裕福だったからか、働き場所でのトラブルが後を絶たないらしい。
ベルセルク公爵も数年牢獄生活を送れば、釈放される事にはなるが、果たしてベルセルク公爵もカミラの様になるのか如何かは、本人の頑張り次第だろう。
取り壊し決定したベルセルク公爵家だが、家令達のそれぞれ働き口を探し、空き家となった家屋は、ルーカスが住む事になった。
「ベルセルクの名は大事だろ?一掃した事だし、俺がベルセルク公爵の名を継いじゃ駄目かな」
「父上に相談してみたら如何だ?オルレアン王家には大切な名だもんな、ベルセルクは」
「エレノアが嫌じゃなかったら、俺が貰って良い?」
「サムエルとマーゴットも喜ぶと思う」
20歳のルーカスに家督はまだ早いかもしれない声もあったが、エレノアの願いもあり、ルーカスがベルセルクを名乗る事になった。
他にも公爵家で歴史が古い名もあり、爵位剥奪された家の名をハサウェイが引継ぐ事になったのはルーカスの後だった。
「レオ、納骨堂に報告に行きたいから許可貰える?」
「……………俺も行くよ」
「今からですか?殿下、エレノア様」
「何か問題でも?」
「仕事が溜まりに溜まっているんです!せめて少ない日にして下さい!」
「少ない日なんて無いじゃないか」
「無いわねぇ………事後処理の多さに加え、中枢の貴族達の殆どが、爵位剥奪だったりするから、補佐達の仕事も回らなくなってるし」
「そろそろ報告ぐらいしておかないと、いつ行くんだよ…………結婚式の事も後回しにして頑張ってる俺達に、2人の時間ぐらいくれよ」
「ゔっ…………す、すいません……でも次から次に舞い込む仕事が…………重要案件が…………」
サイラスの嘆きは分かってはいるが、エレノアもレオナルドも不義理はしたくなかったので、顔を見合わせてアイコンタクトで会話すると、エレノアがニッコリとサイラスに微笑んだ。
「ロン、起きて」
『……………ん?……何?エレノア様………』
「サイラスがロンと遊びたいんだって」
『……………サイラス~!遊ぼうぜ!』
「エレノア様!ひ、酷い!……………ロン!来るな!来るなってば!…………あ!殿下!エレノア様!…………に、逃げないで!だ、駄目ですってば!………後日かならず………必ず時間作っ………ぎゃぁぁぁぁぁあっ!」
執務室からエレノアとレオナルドが飛び出して来て、警護の騎士達は何事かと執務室とレオナルドを見比べる。
「な、何事ですか!殿下!」
「1時間ぐらいで戻る!ついて来るなよ!納骨堂に行くだけだ」
「は、はい!王宮内に居られるなら………サイラス卿大丈夫ですか!」
「た、助け…………」
「いつものじゃれ合いですか…………程々にしませんと、書類破れますよ」
神殿の事が片付くにつれ、騎士達の緊張感も薄れて行っては駄目なのだが、長かった緊張感は切れたらなかなか戻す事は難しいかもしれない。
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