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エピローグ
しおりを挟む「行きたくない………」
「まだ言ってる………」
リードがベリエフ国に旅立つ前日、ロゼッタの膝に頭を乗せ、腹を擦るリードが愚痴っていた。
「ローゼが妊娠した事をオーウェンに言ったから、絶対に時期合わせたんだ………アイツは」
「確かに妊娠している事は言ったけど、時期を合わせたなんてありえるのかな………オーウェン殿下だって、政務の傍ら日程決めたと思うし」
「いや、絶対に合わせたと思う………俺が帰る迄産まれないでくれよ………」
「……………我儘なお父様ね」
「産まれて直ぐに見たいじゃないか」
「気持ちは分かるけど」
「あっ!動いた!…………待っててくれる、と約束したぞ!」
「い、いや…………オーギュ……そ、そんな事はないんじゃない?」
「いや!これは約束だ!そうに違いない!」
「……………なら、頑張って行ってきてね」
「っ!……………ローゼ………寂しくないのか?」
ロゼッタはリードの頭を撫でて、癒やしてはいたのにそれがリードの甘えが出て来た様だ。
「寂しいに決まってるじゃないの」
「ローゼ………」
「一緒に行けたら良かったんだろうけど、旅の間に産気付いたら困るでしょ?」
「…………そうだよな………だから、アイツの企みなんじゃないか、と」
十中八九、その通りだとしても、オーウェンはロゼッタに好意は無かった筈で、リードに敵対意識があるオーウェンの悪意なんだろうとロゼッタは思った。
「私情挟まず円滑に、外交してきて下さいね、宰相」
「……………外交はお任せ下さい、我が君主」
翌日の朝にはリードはベリエフ国に出立し、1ヶ月程掛けて到着すれば、迎えたのは王太子となったオーウェンだった。
「久しぶりですね、オーウェン殿下」
「なんだ…………王女は来てないのか」
「出産間近なので、連れては来られませんよ」
「俺の立派になった姿ぐらい見せたかったんだがなぁ」
「立派な姿だった、と私からお伝えしておきますよ」
握手した手はお互い力を強め、牽制し合っていた事は、2人しか知らない。
「残念だな…………有志を見て貰いたかったんだが………感謝しているとも伝えて欲しい」
「必ずお伝えします」
一皮も二皮も逞しく見えるオーウェンは自信溢れていて、リードは胸を撫で下ろしていた。
国交の取引交渉も順調に行き、リードはオーウェンの友人達、セヴィルやレイン、ダニーと笑顔を見せていて、改めて謝罪や感謝を4人から貰うと、リヨルド国へ帰還をした。
その頃、リードの帰りを待つかの様に、ロゼッタは産気付き、誕生に間に合わせる事が出来た。
「閣下!おめでとうございます!王子殿下の誕生です!」
「……………殿下は!ご無事か!」
「はい!母子共ご健康であられます!」
リード帰還に合わせて誕生した子は、待望の王子。
汗だくで我が子を抱くロゼッタは、リードの姿を見ると、満面の笑みを向けていた。
「さ…………オーギュ………私達の子………抱いて」
臣下が傍に居ても、この場この時間はリードを臣下としてではなく、夫として迎え入れたいロゼッタは愛称で呼んだ。
「…………ローゼ………良かった………間に合った………」
「待ってたものね、この子も私も」
「お疲れ様、ローゼ」
「貴方も、外交お疲れ様でした。お帰りなさい」
ロゼッタが王太子になり、男尊女卑を罰する法律も出来て産まれた新たな王族の子はアヴェルとリードが名付けた。
ロゼッタの祖父である国王は、アヴェルが産まれる迄は生きていたい、という願いを叶えた数日後、息を引き取った為、アヴェル誕生の祝いと共に、ロゼッタは女王としてリヨルド国の統治者となり産まれて間もない息子は幼くして王太子となる傍らで、宰相として夫としてリードは支える姿を国民達は暖かく見守っていたのだった。
𝑻𝑯𝑬 𝑬𝑵𝑫____
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