結婚したのに最後迄シない理由を教えて下さい!【完結】

Lynx🐈‍⬛

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 王都に着くと、その日はゆっくり過ごしたアルマとジークハルトだが、翌日は街に出ていた。
 観劇を観よう、という話にもなり、劇場へと入る。

「久々です、観劇」
「俺もだな………王都に来る時も用事済めば直ぐ帰っていたし」
「勿体無いですよ、それ」
「誘われるのを断るからな」
「…………あぁ……なる程」

 ジークハルトの言葉に納得してしまう。
 入場前からアルマやジークハルトに向けられる目線が多いからだ。

 ---ジーク様はオモテになるから……

 アルマの夫でなければ、アルマが拝める立場になっていただろう。
 例え、セルトと別れずに一緒に居たとしても。

「どんな観劇の内容が好きなんだ?アルマは」
「私ですか?私は恋物語です」

 しかし、その本人は見られていても平然としていて、アルマとの会話を楽しみながら、席に向かっている。

「乙女だなぁ」
「ジーク様は、どの様な話がお好きなんですか?」
「俺は時代物だな。歴史の勉強にはなる………恋物語はイチャ付くのを見るだけだしな」
「今日の観劇は恋物語でしたけど良かったんですか?しかも悲恋ですよ?イチャ付きがあるか如何か………」
「アルマが劇を見て楽しそうにしていたらいい。知らなかったアルマが見られそうだし」
「よくご存知ではないですか」
「泣いたり笑ったり、どういう所で感動するかを見たいのさ」

 会話が続くと、周辺の視線は気にならないもので、声が掛けられる迄楽しかったアルマ。
 だが、それは長くは続かず、2人の時間を無粋な声掛けで、止まってしまった。

「あら、ヴォルマ公爵閣下ではありませんか」
「…………これは、ローズマリア嬢……お元気でしたか」

 その無粋な声の主は、猫なで声で男を誘惑する目的の様なドレスで口元を扇子で隠し、色気を醸してジークハルトに声を掛けて来た。そのジークハルトはその返事を淡々と返すので、途端に不機嫌になった、とアルマは見えた。

「いいえ………ジークハルト様がお見えにならない王都で過ごすのは、とても寂しくて………病気になりそうでしたわ………」

 その令嬢はジークハルトに向かって歩いて来ると、アルマを隠す様に立ち、アルマをジークハルトから離そうと間に足を入れて横に立った。

「…………っ!」
「…………アルマ、行こうか」

 ローズマリアの行動は自然ではあったが、明らかにアルマを威嚇し牽制した行為。
 ジークハルトはアルマの腕を解き、腰に手を添えると、ローズマリアを避けて歩き出す。

「お待ち下さいませ、お話ぐらい良いではありませんか!」
「話は私にはありません、ミルザム侯爵
「っ!」

 先程は名前で呼んでいたのに、その呼び名を止めたジークハルト。

と同行しております。をされては困りますからね。ミルザム侯爵令嬢もをされぬ様に身を慎まれたら如何ですか?失礼」
「くっ!…………どんな女と結婚したのかと思っていたけれど、大した事なさそうね」

 ジークハルトに相手にされなかったからだろう、捨て台詞をアルマへ放った。
 
 ---前の恋人かしら……それにしても派手な方………令嬢達のドレスの流行りは今あんな感じなのかしら

 罵倒されようとも、此処で騒ぎになるのは良くない事なので、アルマは怒る事もなくジークハルトの元恋人の可能性を示唆していた。
 同じ土俵に上がるのを避ける為、ローズマリアの着ているドレスに着目して、意識を切り替える。

「ちょっと!無視?」
「アルマ、放っておけばいい」
「はい………騒ぎたくありませんから」
「何ですって!」
「ローズマリア嬢、そろそろ僕達も席に行こう」
「相手にされなかったんだから、仕方ないよ」

 淑女らしからぬ、大声を出したものだから、注目はローズマリアに一転し、付き添いの者達に止められた。

「煩いわね!…………くっ………覚えてらっしゃい!」

 ジークハルトのローズマリアに対する扱いが格下げされて苛立つローズマリアだが、怒りの矛先がジークハルトではない辺り、ジークハルトを手に入れたくての嫉妬だろう。
 付き添いの者は男ばかりで、取巻きの様で、眉目秀麗のジークハルトを入れたかったのかもしれない。

「元恋人ですか?」
「…………恋人……ではないな。そんな綺麗なものではないよ。の相手を過去1回か2回ぐらいかな………見ただろ?彼女が連れていた男達」
「おみえでしたね……4人程……」
「あの中に入れられては堪らないからな、直ぐに相手にもしなくなったよ」

 恋人という2文字にも値しないのだ、とジークハルトは言っている様なもので、アルマにはジークハルトがその様な立ち位置は似合わないと思った。

「似合いませんよ、ジーク様があの中に居るのは」
「…………では、何処が似合うんだ?」
、て言わせたいんですか?」
「当然だろ」
「っ!………冗談で言ったのに………」
「冗談だったのか?本心で思ってる事で、俺の横はアルマしか立てないぞ?」

 まだ席に到着しないのに、イチャ付いてしまったので、アルマの顔は火照って頬を覆う。

「あ………煽るなよ、まだ」
「煽ってません!ジーク様が所構わず仰るから………」
「そんな事より、歩くの早めるぞ」
「え?」

 アルマのその火照りを、観劇客に見られて色めき立つ男達からジークハルトが隠しながら、睨みを効かせたのは言うまでもない。
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