18 / 38
17
しおりを挟むアルマはジークハルトと王都に向かう馬車に乗っていた。
国の中央にある首都へ行くには、2週間程掛かる道程で、アルマの実家よりは近くにはあるが、久々の馬車の移動はアルマも疲労感が出ている。
「疲れているな、アルマ」
「今から緊張してまして………久々の王都で、デビュタント以来の夜会参加なので………」
「そうなのか?」
「…………はい。私の実家、リンデル伯爵家は王都に邸もありませんから、王都に住んだ事もなく、貴族の友人も少なくて………デビュタントも、態々リンデル伯爵領に来てくれる貴族等も少なく………」
「…………俺は、アルマのデビュタントには行ったがな………挨拶せずに帰ってしまったが」
「そうだったんですか?」
「…………あぁ……アルマのデビュタントの祝いより、リンデル伯爵とメリッサ夫人との話が主ではあったし」
そう聞くと、侍従達から聞いた話とジークハルトが以前話した内容に相違が見られる事は無かった。
ジークハルトはヴォルマ公爵領を守る為、アマリリスとの遺言を守る為に動いている、と思えてならず、両方を守る為に、父であるシュバルツ公爵との対立をしているのだろう。
「…………ダンスの練習をしましたが、上手く踊れるか今から緊張します……人前で踊るのもそれ以来で……」
それが分かってしまい、アルマは其処に触れる事なく、夜会に関しての話を続けた。
「踊りたい?俺と」
「踊れるなら………だ、駄目ですか?」
「いや………女達の牽制にもなるし、アルマを見せびらかしたい」
「見せびらかしたい、て………私はそんなに美しくないので………」
「美しいさ………アルマは………愛嬌もあるし黙っていれば可憐で儚げに見える」
「それ、褒めてます?」
「…………プッ………」
「あ!揶揄ってますね!酷い!」
横に座るジークハルトに、アルマはポコポコと叩く振りをすると、ジークハルトは避けながら笑った。
「一目惚れだと言っただろ!………母上に似た印象はあった………だが、病弱だったという母上がもし、健康だったならアルマの様な人だったんじゃないか、と思ったら、俺の理想だった………メリッサ夫人も、母上と似た所が、アルマにはある、と仰っていた………あまり気を悪くしないでくれ、アルマ」
「…………嬉しくありません………」
何か自分は褒められていないようで、拗ねてしまうアルマはジークハルトから離れて座り直す。
「アルマ………」
「だって、私はジーク様のお母様には勝てないですから………」
「勝てない?何故?」
「…………ジーク様の一番は、アマリリス様だからです………」
「…………プッ………はははっ!」
「酷い!何故笑うんですか!」
ジークハルトが爆笑するので、アルマは詰め寄ると、アルマはジークハルトに手を掴まれてしまった。
「アルマ………俺は、母上の記憶は全くない………俺の誕生日が母上の命日で、母上の事は全く知らないんだぞ?人から聞き、アルマに想像の人物を重ねているだけだ。きっかけは面影が似ているというだけではあるが、病弱で儚げな女が好きだというのはないぞ」
「…………ジーク様が、好きな女性の人物像って………」
「明るく、元気で真面目な性格で、俺の事を愛してくれる女だ………ん?アルマは違ったか?」
「っ!…………ち、違いません……元気なのが私の取り柄ですし……真面目なって言うのは違う気がしますけど………常に明るく居ようとは……思ってます………」
「…………それで?俺を愛してくれてる?」
「っ!…………ず、ズルい聞き方しないで下さい!」
「…………ん?」
揶揄う様に、首を目の前で傾げられ、大人の男が可愛く見えてしまうアルマは、途端に顔を赤らめて、ジークハルトの胸に飛び込んだ。
「あ………愛してます………ジーク様の事………早く心身共に大人になって、ジーク様に相応しい女性になりたいです………」
「俺には魅力的な女だよ、アルマ………愛している」
「…………私はジーク様より思いは強いです!」
「っ!…………そ、そう来たか………では、その思い………今夜泊まる宿で見せてくれ、アルマ」
「!…………え………?」
「…………アルマの陰核を沢山可愛がらせておくれ………」
「っ!」
仲直りして以降、ジークハルトはアルマの中には挿入らなくはなったが、お互いの秘めねばならぬ場所を愛撫し合っていた。
そうでもしなければ、お互いの性欲は処理出来ぬ所迄関係を深めていると言えるだろう。
「可愛いな、アルマ」
「私も、ジーク様の困り顔が可愛いな、と思ってますよ?」
「こら、大人を揶揄うな」
「ふふふ………」
馬車内で仲睦まじくしている旅は続けられ、王都に着く頃には、同行した侍従達も、見て見ぬ振りしてやり過ごしていたのは言うまでもない。
「明日は王都観光しようか、アルマ」
「ジーク様はお忙しくないのですか?」
「特に王都ではする事も無いな………俺は公爵と言っても政に関わってはきてはいないし、あの地を守って行くだけで済んでいるからな。それも前ヴォルマ公爵である祖父が手を回して俺の為に遺した遺産だ」
「…………私、そんな事も知りませんでした……政に全く興味無かったのも駄目ですね」
「気にするな、アルマ。俺が関わらせない様にしていただけだ………腹黒い政治の世界は人を貪欲にさせ、疲弊させるぐらい、欲と権力塗れになる………汚い世界を知るには良いが、その汚い場所での窓口は俺が担うから、アルマは領地の事だけ考えてくれたらいい」
王都との交流をジークハルトがしていた事をアルマも知っていた。腹黒い部分にはアルマは触れさせてくれなかったのも知っている。
それだけ、ジークハルトはアルマを大切にしてくれているのだと、伝わって尚更アルマはジークハルトを好きになっていたのを、ジークハルトに伝えていく事を心の中で誓ったのだった。
112
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される
絵麻
恋愛
桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。
父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。
理由は多額の結納金を手に入れるため。
相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。
放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。
地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる