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33 *ジークハルト視点
しおりを挟むシュバルツ公爵やエリック、シュバルツ公爵に駒の様に扱われていた貴族も拘束されていく背後でアレクシスがジークハルトに聞いた。
「なぁ………資源って何?」
「それは、貴方が王太子になればお教え致しますよ」
「待てないんだけど?」
「…………まぁ、もう如何にもシュバルツ公爵達は出来ないので良いかな…………実は、あの地にある鉱山が眠ってまして」
「鉱山?」
「秘宝ですよ………オリハルコン」
「…………は?」
「見ます?俺の剣」
腰に刺さるジークハルトの剣は鉄剣ではない。鉄より遥かに硬い鉱物だったのだ。
「…………うわっ……本当にオリハルコンだ………王家に代々受け継がれる国王の剣………父上もお持ちだ………」
「いずれ、殿下も陛下から賜る筈です」
「き、切れ味凄そうだな………知らなかった……」
「アレックス」
「父上…………」
「其方が私の剣を譲り受けるのは近いだろう………エリックやイェルマの事もある。退位に向け私は動くとするからな………まさか其方が影でヴォルマ公爵と動いていたとは………」
「兄上がシュバルツ公爵の駒でなければ俺もこんな事に首を突っ込む事はありませんでしたよ。だけど………ジークとの交流を続けていく内に、国を平和にする為に、シュバルツ公爵の好き勝手にさせられない、と思う様になりました………オリハルコンは大事に使わせて貰います。世界の均衡を保つ為に」
「…………うむ………それこそが我が国の示す道だ………私も亡き父に教わり、前ヴォルマ公爵から教わった………それを私は忘れていたかもしれないな…………処理、頼むぞアレクシス」
「はい」
国王が疲れた表情で会議室から去ると、ジークハルトとアレクシスは手を握り合う。
「頼むぞ、ジーク」
「頼まれませんってば」
「は?何でだよ!助けろよ!手伝っただろ!手伝えよ!」
「ヴォルマ公爵領からの手助けなら仕方なくしますが、王都には長居はしません」
「冷たいな、おい!」
「居住場所もありませんし、宿住まいは落ち着きません」
「それなら処罰されていく奴らの邸の1つに住んだら如何だ?」
「絶対に嫌です………余計に落ち着けない」
「改装費用ぐらい、俺の私財で出すぐらい簡単だぞ?」
「尚更嫌ですね、それを餌にコキ使う気でしょう?」
「……………ゔっ……バレてる」
ジークハルトはアレクシスの性格を把握しているのでお見通しだった。深い溜息と共に、決定打をぶち負かす。
「どれだけ付き合わされたと思ってるんです。そんなのだから、いつまでも独身なんですよ………それに、アルマを殿下の近くに置いておきたくありませんし、殿下は女に節操が無い事も知ってますからね」
「お、お前…………仮にも俺は王子だぞ!」
「甘やかされた王子の1人に過ぎません。幾ら賢くて強かな殿下でも、性格はやはりイェルマ殿下の兄なので、似ていて我儘な所もお有りですし、ズル賢い殿下にアルマの傍に来させるのは危険ですから」
「お前が居れば良いじゃないか!」
「ご冗談は止して下さい。ヴォルマ公爵領を守らなければならないんですよ?オリハルコン…………欲しいんでしょう?守って差し上げますから、帰らせて下さい」
「くっ……………お前、本当に性格悪いな!」
「殿下程では無いと自負していますよ」
ジークハルトだとて、アレクシスの補佐役に必要だと思ってはいるが、ヴォルマ公爵領を守る事を一番に使命としている為、補佐役は諦めて貰うしかなかった。
「…………ちぇっ……頑固過ぎて俺が折れなきゃならないとは………あぁあ………ジークと遊ぶの楽しみにしてたんだぞ」
「王都に居る間はお付き合いしますよ、娼館以外なら………女遊びはしませんので」
「娼館もいい情報源なんだぞ?」
「知ってますよ。ですが、アルマに嫉妬させたくなくないので………可哀想ですしね」
「……………お前等、馬に蹴られろ!」
「それ、そのまま殿下にお返しします………アルマに会いたいので宿に帰らせて貰いますね」
「手伝えよ!居る間!」
「……………はぁ……夕食時迄には帰して下さいね」
「分かってるよ!」
ジークハルトがそれでも真面目にアレクシスを手伝うので、宿に帰れたのは日を跨ぐ寸前だった。
「…………アルマ……足りない……」
「…………んっ……ジーク………様?」
「ただいま」
入浴し、ベッドに潜り込むと、アルマを抱き締め額にキスを落とす。
「…………お帰りなさいませ、遅く迄ご苦労様でした」
「癒やして………アルマ」
「ふふふ………はい………口で如何です?」
「…………今日はキスだけでいい………それで満足しそうだ」
「足ります?」
「…………あぁ……清々しいからな………アルマ……終わらせてきた」
「…………本当ですか?」
「うん…………まだ事後処理はあるが、滞在中はアレックス殿下の補佐をしなければならなくなったから、寂しい思いをさせるかもしれない」
「大丈夫です、私は………両親の滞在場所を聞きましたし、母と楽しんでますので」
「義母上にも伝えておいてくれ、終わった、と」
「…………アマリリス様や前ヴォルマ公爵閣下にもご報告しなければならないですね」
「帰ったら伝えよう」
「ジーク様……………」
「……………」
アルマはジークハルトの頬を挟み、自分から唇を合わせに行く。
深い深いキスを続け、そのまま2人は眠りに着いたのだった。
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