決戦の夜が明ける

独立国家の作り方

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第2堡塁の衝撃

第94話 まさかとは思うけど

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 第2堡塁は陥落した。
 しかし、昨日の第1堡塁とは全く異なり、制圧した第2堡塁の中は真っ暗闇であった。
 電源が喪失した要塞内部は、その気密性故に、恐ろしく光りを遮断していたのである。
 兵士たちは、その要塞内部で、懐中電灯を付けながら一時の休息を過ごした。

「各部隊に告ぐ、これより40分間をもって、交代で昼食を取る事、機甲部隊は射耗した弾薬の補給を終えたならば電元車を向かわせるので、車両の充電作業に入れ、最優先だ」

 城島は、せっかく奇跡的に第2堡塁を早期陥落させたのに、兵士を労うでもなく、妙に急かしている龍二を不思議に感じていた。

「なあ三枝、さっきはカリカリして悪かったな。まさかこんな事を考えていたなんて思いもしていなかった。少し兵士たちを休ませたら、どうだ?、第3堡塁攻略期限まで、未だ大分あるんだし」

 城島は、意気消沈している優を気遣うように、いつもの激しい口調を抑えていた。
 それは、自分自身にも言えていることではあったが、この天才を前に、自分たちがまるで無能のようにすら感じてしまい、それは劣等感で押しつぶされそうになるのだ。
 
 しかし、そんな穏やかな城島を、再び激昂させるような一言を、龍二は言うのである。

「城島、第3堡塁攻略期限まで、それほど時間は無いぞ、日没は早い、この季節はな」

 城島は、一瞬驚いた表情を見せたが、その顔はすぐに怒りの表情へと変化して行ったのである。

「お前なあ、少しは兵の気持ちになって考えてやれよ!、第2堡塁まで、お前が徒歩兵を走らせたんだぞ!」

 それを見た幸は、二人の間に割って入り、身体を使って二人を引き離した、それはもう、今にも龍二を殴りそうな勢いの城島を。

「、、、、まさかとは思うけど、第3堡塁を、今日中に落とすなんて言わなわよね?」

「だからさ、こいつはそう言っているんだよ!」

 城島の興奮は収まらない。
 そして、優がようやく口を開くのだ。

「、、、、三枝君、さっきはあんな事を意見して、ゴメンね。僕はね、今回の事で思い知ったんだ、、、君はやっぱり僕たちとは次元の違う人なんだよね。だからさ、聞かせて欲しいんだ、どうして今日中に第3堡塁を落とす必要があるのかを」

 その場に居合わせた人間は、みんな同じ事を考えていた。
 ただ、それはとても聞きにくい事ではあったが、優のストレートな質問は、全員の腹を満たすのには十分な質問内容だった。

「ああ、そうだな。では考えてみてくれ、電源が喪失した要塞内で、一晩警戒するってことを」

 一同は、それを聞いて少し考えていた、、、、

 そして、優が一番最初に答えを出したのである。

「三枝君、君は師団が今晩夜襲を仕掛けて、第2堡塁を奪還すると考えているんだね」

 龍二は、優のその答えに正解の合図を悪戯っぽい表情で出すと、全員の表情に気付きが見えたのである。

「そうか、、、それで師団は敢えて守備隊の兵士を投降させて、機能を停止させたってことなのね、、、じゃあ、彼らが今いる第2堡塁内に、、、、未だ敵が残っている可能性もあるんじゃない?」

 龍二は、再び正解の合図を、今度は幸に出した。
 しかし、そんな余裕をもってはいられない、昨日の第1堡塁陥落とは、少し状況が異なるのだ。

 第1堡塁の陥落は、その奇襲効果故に、機能不全にして逝く暇が無かったことは明白だが、この第2堡塁の陥落が、もし今夜の夜襲を計算しての後退行動であったとしたら、確かに今晩、夜襲を仕掛け、三枝軍の兵力は第3堡塁を攻略出来ないほどの人数に減少してしまう事だろう。

 むしろ、師団の狙いは、そこにこそあると思われた、、、龍二の意見を聞いた後では。

「、、、、解ったよ、、、、悪かったよ、三枝」

 完敗だった、今の城島には、到底勝てる相手ではなかった。
 サッカーでは全国を競い合ったハイレベルな二人であった、それ故に、自分も龍二と同レベルで戦えるのではと、淡い気持ちを抱いていただけに、この完敗には城島もすっかり参ってしまった。
 この時、生徒会参謀部の3人は、実は同じ思いがあった。
 いつか、この天才と肩を並べる事が出来たなら、、、それはきっと凄い事なんだろう、と。

 こうして、防大1学年の生徒会参謀部は、戦術教育に対する燃え上がる想いに火が付いたのである。
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