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エッグバトル始動!

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 志藤本人も嫌われていると勘違いしている。だが、雪村はそもそも人を嫌うことはない。人の長所を誰よりも早く見つけ出す事に秀でている雪村は、自ずと人の短所もあっさりと見抜いてしまう。だからこそ雪村は、志藤の「本心を隠したような笑顔」が気に食わなかった。

 だがもちろん、その鉄壁の笑顔はアイドルに必要不可欠なもの。それをやり抜く志藤をプロだと認めてはいる。それでもやはり、どうも感心出来ないでいた。それが他人の目には “嫌っている” と映ってしまっていた。

「たいちゃんもライバルになるわけだ」

 一ノ瀬が呟くように言った。その言葉に太一は彼を振り返る。

「あぁ……そうだね。まずは十八人。蹴散らかさないといけない」

 同じ月曜レッスン生の仲間達を。それはもちろん仲のいい一ノ瀬ともライバルになるということだ。

 太一の真剣な瞳とその荒っぽさが感じられる言葉に、一ノ瀬はドキッとした。今まで疑わなかった “仕事遊び” の太一の態度が、実は間違っていたのではないか思えたからだ。

「じゃあ、右から順に曜日ごとに並び直してちょうだい」

 パンパンと手を叩いた講師の指示で、エッグ達は立ち上がり、トップナインの後ろに続く形で整列し直した。
 一ノ瀬は太一の後ろ姿を見つめ、彼の抱く野心を垣間見た事実にあり得ないほど焦った。ライバルだねと言ってはみたが、太一だけはライバルではないと思っていたからだ。あくまでアイドルは彼の趣味だと信じていた。それが違っていたとなると、これほど手強いライバルはいないだろう。 

「まじ……?」

 この時点で一ノ瀬の中の計算は狂う。19分の3なんかじゃない。18分の2だ。しかも五人グループだったらの話である。最悪三人グループかもしれない。

「勝ち目ないじゃん」

 天井を仰ぎ、一ノ瀬は落胆の呻きをあげた。
 整列し直し、一ノ瀬は太一の後ろに座る。太一の隣には同じ曜日生の藤本芳樹が並んだ。曜日内でもダンスが上手いことで一目置かれているエッグだ。一ノ瀬は前方の二人を見つめながら、太一がライバル確定となるとかなり本気を出さなきゃいけないと思った。それこそいつもの軽口を叩いている場合ではないだろう。

 体も小さく、まだ小学生の自分が選抜されるためには、並大抵の努力じゃ追いつけない。太一の隣に並ぶ藤本は高校三年生のいいお兄さんだ。彼をも蹴散らす技量を死に物狂いで身につけなければいけないということ。
 事務所内ではそれほど下にいるわけではないと自負している一ノ瀬だが、 太一のライバル宣言により、焦りは急激に増した。

 雪村からも高評価を受けている一ノ瀬ではあったが、もはや太一がライバルだというだけで、彼の頭の中は真っ白になってしまった。

 エッグ達が整列し直すと、講師は再び腰を下ろすように指示した。そして正面に準備されていたホワイトボードに、デカデカと文字が綴られる。

 エッグバトル

「ドリームキャッチ内に新コーナーとして採用された貴方達の番組企画よ。みんなはこのコーナーのレギュラーメンバーになる! 気合い入れな!」
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