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エッグバトル始動!

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 煽るような講師の言葉に、おぉ!と雄叫びが上がる。

「もうすぐ夏休み。デビューしたいなら、死に物狂いで頑張りなさい! この夏を有効に使った者が勝ち残るわ」

 不敵に微笑むダンス講師はエッグ達を更にと煽り、ピーっとどこからともなく指笛がなった。

「グループ選抜までは、対私たちへのアピールタイムとなる。だけど曜日代表に選ばれれば、今度は視聴者へのアピールタイムも加わるわ。どういうことかわかるかしら?」

 それはつまり、ダンスや歌のスキルだけでは選ばれないということだ。この時点で太一が選抜される可能性が落ち込み、一ノ瀬は思わず口元を緩めた。しかし後ろ姿の太一を見ていると、なんだかそれを喜ぶのは違う気がしてきた。
 そう、自分は太一と共にデビューしたい。そう感じてしまったからだ。だってそうだろう。太一は確かにライバルだが、彼を蹴落とすくらいなら仲間になっておく方が数倍いい。強敵をライバルにするのではなく、強敵を仲間にする。そちらの方が賢いに決まっているからだ。

 トップナインである雪村と志藤が月曜メンバー確定だとするならば、スキル的に間違いなく太一は選ばれる。それならば、そこに滑り込むのは他の誰でもない自分なのだと、一ノ瀬は強く誓った。

 永遠に太一はデビューしないのだと高を括っていたが、万が一共にグループを組めればデビューだって夢じゃない。太一の歌とダンスがそれだけ凄いことを一ノ瀬は知っている。いや……ここにいるエッグ全員が知っている。ライバルになれば強敵だが、仲間になると心強い。そして仲間になれる特権を持っているのは、月曜レッスン生だけなのだ。

「でもそれって……難しくない?」

 一ノ瀬は苦笑を浮かべる。太一の本気を引き出しつつ、自分も死に物狂いで頑張らなければいけないということになる。そうしないと二人一緒に選抜されることは難しい。考えてもみろ、太一のうだつが上がらないのは “やる気が見受けられないから” だ。その態度のせいで、彼はとことん損をしている。

 もちろん、太一の実力をダンス講師とて見抜いてはいるが、アイドルとしてどうなのかという壁にぶつかると、やはり太一は到底その舞台に上がれない。

 会社としては太一を成長させたいのは山々で、ボイトレ生に選抜したのもその理由が少なからず含まれている。これで少しでも自信を持ってくれはしないかと期待したが、なにせ彼はボイトレに定員数があることすら知らない。自信がつくどころか、自分はボイトレをしなきゃならないほど歌が下手なのだと最初の頃は落ち込んでいた。太一はバカがつくほど鈍感でおぞましいほどにマイナス思考者だ。

「エッグバトルがオンエアされるのがいつからかはわからないけど、来週からたまご気分が始まるだろ?」

 ダンス講師が番組の流れを説明している最中、藤本芳樹が太一にそう話しかけた。

「たまご気分?」
「エッグの深夜番組だってば。お前番組名も知らないのかよ」

 呆れたように笑われて、太一はようやく何の話か理解した。隣の席の草野が騒いでいた番組のことだ。

「はは、ごめん。来週から始まるんだね。それも知らなかった」
「さすがだな、沖。お前らしくていいと思うぜ。どうせ何曜何時の何チャンネルかも知らないんだろ」
「ご名答」

 藤本は笑った。
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