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優越の対象

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「けど沖は、エッグバトルやタマキブを見てる限り、すごく自然体だ。それはファンにもちゃんと伝わってると思う」

 太一の目を見て言えればどれだけかっこいいのか、野瀬は気付いていない。けど、そんな野瀬の言葉でも、ちゃんと太一に響いていた。

「だからこそ、舞台上の沖に見惚れてしまうんだよ」

 そんな言葉で、野瀬は太一から格別の信頼を得た。

「つまりオレに今必要なことは、もっとスキルを磨くってことだね?」

 太一は深く納得して呟いたが、野瀬は慌てて首を振った。

「いや! そのっ、沖にスキルがないって言ってるわけじゃないよ!? 歌もダンスも上手いしっ!」
「分かってる。分かってるよ、野瀬」

 慌てて言い直す野瀬に太一はふっと笑った。その顔が可愛いようなカッコイイような、野瀬は目の合った太一にまた顔を真っ赤に染めた。
 もうその赤い顔を隠したところで太一にはバレバレだが、それでも野瀬はまた顔を隠した。

「正直トーク慣れしなきゃならないって焦ってたけど、テレビを見てるお前が言うんだもん。歌とダンスをもっと頑張る」

 充分カッコイイよという言葉は、喉元まで出かかって止まった。
 これでようやく恥ずかしすぎる尋問から解放されるだろうかと思った野瀬だったが、そんな簡単には解放させてもらえなかった。

「じゃあ、歩くんってどういうイメージ?」

 いきなりの質問に野瀬は一瞬冷静になり、そして苦笑いが勝手にこぼれた。警戒しているような彼の鋭い眼差しが鮮明に蘇ったからだ。

「……それはもちろん、アイドルとしてだよね?」
「もちろん」

 太一の返事に野瀬は急激に冷静さを取り戻し始めた。質問が太一以外のことであれば、野瀬だって普通に話せるらしい。 

「……これぞアイドル、って感じだよね。いつも笑ってるし、トークも明るくて、そこだけパッと花が咲いてるみたい」

 そう表現した野瀬に太一もひどく納得した。雪村や及川のように、はるか先にいる存在じゃない。けど、愛でたくなるほどに輝いている。

「けど、俺思うんだ。志藤はもっと……なんていうか、ギラギラしてんじゃないかなって」

 同じようなことを雪村も言っていた。太一は野瀬の観察力と分析力に感動を覚える。

「どういう言葉が合うだろ……、んと、理想が高そうというか、意志が強そうというか、……野望……あ、野心家?」

 コレが近いかも、と太一に顔を向けた野瀬だが、真剣な瞳の太一と目が合うと、慌てて顔を背けた。いい加減赤面すんなよ、と太一は野瀬の腕っ節を一発殴ると、残る一人の名前をあげた。

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