182 / 312
予選突破に巡る想い
4
しおりを挟む
「衣装もそうです。カッコかわいいをコンセプトにデザインしました」
思わず可愛い~と言いたくなる笑顔で一ノ瀬がそう付け加える。太一はみんなの言葉にただただ頷いているだけだったけど、審査員の一人が太一の名前をあげた。
「沖太一くん、かな?」
突然名前を呼ばれ、慌ててヘッドマイクを口元に合わせ直した。
「飛び抜けて優れた歌唱力だね。声量も伸びも、表現力も、文句なしの100点満点。これからまたまだ成長していくのかと思うと、大変興味深いですね。期待しています」
プロミュージシャンであるその審査員の評価に、太一は感激して息を吸いこんだまま固まってしまった。そんな太一の背中を志藤がトンっと叩き、吸い込んでいた息を体から吐き出させてくれた。前転してしまうんじゃないかと思うほどの勢いで頭を下げる。
「あぁ……あっ、あ、ありがとうございますっ!」
こんな風に真っ向から評価されたのは初めてだった。褒められ慣れてないから仕方のないことだ。いつだって、「陽一くんはすごいわね」と弟ばかりが褒められ、「陽一くんは有望だわ」とご近所のママさんが噂しているのを聞き、「陽一くんはカッコイイ」と女子が騒ぎ立てているのを見てきたのだ。そうやって今まで生きてきた。誰かが自分に『期待している』なんて考えたこともなかったし、聞いたことだってなかった。
一度下げた頭は、なかなか上げられなくて、じわりと目頭が熱くなる。
ここに居たい………!
ここが自分の居場所。Monday Monsterが太一の新しい居場所なのだ。
アメリカになど行きたくない。行ってたまるかと心に再び炎が燃え上がる。それは強い強い意思。せめて一次審査通過、などという負け越しの願いなんかじゃない。
オレは日本に、必ず残る。
頭を上げた太一の瞳は、もう何の迷いもなくて、何も恐れてはいなかった。
「勝ちます。……勝つためにここに来ました。だから皆さん、MOMO と一緒に夢を追いましょう」
この会場にいる客へ、そしてテレビの向こうにいる視聴者へ、まっすぐ投げかけた言葉だった。
オレたちに票をよこせ。というこの強烈なアピールは、控えめなアイドルとして知名度を上げていた太一のイメージを、180度変えるものとなった。
沖太一、十五歳。芸歴四年。
硬く閉じていた蕾はゆっくりと膨らみ始め、そして今、開花する。
彼は覚醒するのだ。
思わず可愛い~と言いたくなる笑顔で一ノ瀬がそう付け加える。太一はみんなの言葉にただただ頷いているだけだったけど、審査員の一人が太一の名前をあげた。
「沖太一くん、かな?」
突然名前を呼ばれ、慌ててヘッドマイクを口元に合わせ直した。
「飛び抜けて優れた歌唱力だね。声量も伸びも、表現力も、文句なしの100点満点。これからまたまだ成長していくのかと思うと、大変興味深いですね。期待しています」
プロミュージシャンであるその審査員の評価に、太一は感激して息を吸いこんだまま固まってしまった。そんな太一の背中を志藤がトンっと叩き、吸い込んでいた息を体から吐き出させてくれた。前転してしまうんじゃないかと思うほどの勢いで頭を下げる。
「あぁ……あっ、あ、ありがとうございますっ!」
こんな風に真っ向から評価されたのは初めてだった。褒められ慣れてないから仕方のないことだ。いつだって、「陽一くんはすごいわね」と弟ばかりが褒められ、「陽一くんは有望だわ」とご近所のママさんが噂しているのを聞き、「陽一くんはカッコイイ」と女子が騒ぎ立てているのを見てきたのだ。そうやって今まで生きてきた。誰かが自分に『期待している』なんて考えたこともなかったし、聞いたことだってなかった。
一度下げた頭は、なかなか上げられなくて、じわりと目頭が熱くなる。
ここに居たい………!
ここが自分の居場所。Monday Monsterが太一の新しい居場所なのだ。
アメリカになど行きたくない。行ってたまるかと心に再び炎が燃え上がる。それは強い強い意思。せめて一次審査通過、などという負け越しの願いなんかじゃない。
オレは日本に、必ず残る。
頭を上げた太一の瞳は、もう何の迷いもなくて、何も恐れてはいなかった。
「勝ちます。……勝つためにここに来ました。だから皆さん、MOMO と一緒に夢を追いましょう」
この会場にいる客へ、そしてテレビの向こうにいる視聴者へ、まっすぐ投げかけた言葉だった。
オレたちに票をよこせ。というこの強烈なアピールは、控えめなアイドルとして知名度を上げていた太一のイメージを、180度変えるものとなった。
沖太一、十五歳。芸歴四年。
硬く閉じていた蕾はゆっくりと膨らみ始め、そして今、開花する。
彼は覚醒するのだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
28
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる