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真実
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そうして ”深夜会” は ”パーティー” という集団に形を変えた。
その取締役は内海。パーティーのメンバーは無差別に夜を重ね、情報を収集する。だが、佐久間以外は誰も内海の初恋の相手を知らなかった。それでも佐久間を手助けするために、深夜会のメンバーはシステム化されたパーティーに従う。すべては脅されている佐久間を助けるために。
パーティーメンバーは佐久間からの言葉を忠実に守った。
「相手はノンケだ。初物食った時は教えてくれ」
要望はたったそれだけ。メンバーは互いのセックス履歴を教え合い、リストアップしていった。深夜会は寮生の間では有名な集団だったが、それ以外ではまるで浸透していない集団だった。だが、システム化したことにより、じわりじわりとそれは事務所に根を張り始める。
利用者はもちろん会社公認なんて知りもしない。お金こそ発生しないが、こんなこと許される行為ではないから。
だが、他所で女を作られるくらいなら事務所内で仲良くしてる方がいいだろ?と内海に脅され、杏奈は半ば呆れながら勝手にしろと見捨てるように承諾した。
パーティーは出来上がり、佐久間は内海の右腕になった。そして深夜会発足者の一人である菊池もまた内海の駒にされる。
指示はすべて佐久間経由。
だからあの時も、”言わされた言葉” だったのだ。
「なんかあの二人いい感じに見えない?」
菊池に出されていた指示は「手当たり次第それらしい男を佐久間に報告しろ」というものだった。菊池は意味がわからない、と怪訝に眉根を寄せたが、佐久間に頭を下げられ仕方なくそれを実行していた。
その作戦の意味は、意識改革だ。
この話を聞いた人間が、「そういう世界があるのか」と思うことを目的としている。
それに嫌悪を感じるか興味を持つかは分からないが、これをきっかけにパーティー利用者が少しずつでも増えていけば、情報収集の幅は格段に増え、志藤の耳に届くような大きな組織になるかもしれない。そして、あわよくば利用してくれるかもしれない。
そうなれば、もちろん相手を申し出るのは内海という寸法だ。
だがこの作戦。菊池と佐久間の背負う代償はなかなかに大きい。なにせノンケの人間にも無駄に自分たちがゲイであることを暴露していかなければいけないということなのだから。
でも、そんなこと気にしないタイプの人間がこの二人だ。その点はかなり助けられたと思う。
たまご気分の楽屋。
ソファに座る雪村と太一を見つめ、菊池は指示された通りに佐久間へ耳打ちした。
「ふふ……、ユキに限ってそれはねぇよ」
手当たり次第、脈のありそうな男を報告する手筈ではあったが、まさかの雪村と太一の二人を言ってくると思っていなかった佐久間は、堪らず笑ってしまった。
その取締役は内海。パーティーのメンバーは無差別に夜を重ね、情報を収集する。だが、佐久間以外は誰も内海の初恋の相手を知らなかった。それでも佐久間を手助けするために、深夜会のメンバーはシステム化されたパーティーに従う。すべては脅されている佐久間を助けるために。
パーティーメンバーは佐久間からの言葉を忠実に守った。
「相手はノンケだ。初物食った時は教えてくれ」
要望はたったそれだけ。メンバーは互いのセックス履歴を教え合い、リストアップしていった。深夜会は寮生の間では有名な集団だったが、それ以外ではまるで浸透していない集団だった。だが、システム化したことにより、じわりじわりとそれは事務所に根を張り始める。
利用者はもちろん会社公認なんて知りもしない。お金こそ発生しないが、こんなこと許される行為ではないから。
だが、他所で女を作られるくらいなら事務所内で仲良くしてる方がいいだろ?と内海に脅され、杏奈は半ば呆れながら勝手にしろと見捨てるように承諾した。
パーティーは出来上がり、佐久間は内海の右腕になった。そして深夜会発足者の一人である菊池もまた内海の駒にされる。
指示はすべて佐久間経由。
だからあの時も、”言わされた言葉” だったのだ。
「なんかあの二人いい感じに見えない?」
菊池に出されていた指示は「手当たり次第それらしい男を佐久間に報告しろ」というものだった。菊池は意味がわからない、と怪訝に眉根を寄せたが、佐久間に頭を下げられ仕方なくそれを実行していた。
その作戦の意味は、意識改革だ。
この話を聞いた人間が、「そういう世界があるのか」と思うことを目的としている。
それに嫌悪を感じるか興味を持つかは分からないが、これをきっかけにパーティー利用者が少しずつでも増えていけば、情報収集の幅は格段に増え、志藤の耳に届くような大きな組織になるかもしれない。そして、あわよくば利用してくれるかもしれない。
そうなれば、もちろん相手を申し出るのは内海という寸法だ。
だがこの作戦。菊池と佐久間の背負う代償はなかなかに大きい。なにせノンケの人間にも無駄に自分たちがゲイであることを暴露していかなければいけないということなのだから。
でも、そんなこと気にしないタイプの人間がこの二人だ。その点はかなり助けられたと思う。
たまご気分の楽屋。
ソファに座る雪村と太一を見つめ、菊池は指示された通りに佐久間へ耳打ちした。
「ふふ……、ユキに限ってそれはねぇよ」
手当たり次第、脈のありそうな男を報告する手筈ではあったが、まさかの雪村と太一の二人を言ってくると思っていなかった佐久間は、堪らず笑ってしまった。
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