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第1話:追放とスローライフ
しおりを挟む「お前を追放する」
そんな一言でレイラローズはフォグナ子爵家を追い出された。
悪いことは何もしていない。 しかしレイラローズには前世の知識があったので、それを元にした研究をたびたび悪魔の所業だとか非難されていたので、原因はその辺だろう。
「分かりました」
レイラローズは素直に応じた。
正直フォグナ子爵家、というか父は頭が固く柔軟な思考ができない。
そのためレイラローズの生み出す先進的な技術や発想を毛嫌いするし、おかげでフォグナ領も衰退しつつあったから。
レイラローズは手切れ金として、遠くの街で小さな家を建てられるくらいの金をもらい旅に出るのであった。
しかしそこへ一人の男性が待ったをかけた。
「お待ちください! 私も共に行きます」
「アレン? あなたどうして……?」
私、専属執事の一人であるアレンはため息を吐いた。
「レイラローズ様、あなたは料理ができますか?」
「……できないわ」
「なら洗濯は? 諸々の手続きはどうするのです?」
「……なんとかするわよ!」
レイラローズは前世から家事が苦手であった。 おまけに今世、この異世界では機械があった便利な前世よりも、家事はかなりの重労働なのだ。
「それに……一人でお寂しくはありませんか?」
「うっ……まあどうしてもって言うなら勝手にすれば」
心配そうなアレクの言葉に素直になれず、レイラローズは思わず素っ気ない言い方をしてしまう。 しかしアレクは優しくほほ笑んで、レイラローズの荷物を持った。
「では勝手にさせていただきます」
そうして二人は共に新天地へと向かうのであった。
○
王都の騒動から遠く離れた小さな町の古びた家。
そこはレイラローズ――レイラとアレンの新たな住処となった。 追放されたことを苦にしていないレイラは、新しい生活を心から楽しんでいた。
「アレン、見て! 庭にリスがいるわ!」
レイラが窓から指差すと、アレンが慌てて覗き込んだ。
「それは驚きですね。王都ではなかなか見られない光景です。」
「ねぇ、あのリスに名前をつけましょう!」
二人は家の中でのんびりと過ごす日々を楽しんでいた。
アレンは以前のように堅苦しい執事としてではなく、レイラの友人として彼女との時間を楽しんでいた。
ある日、レイラは料理に挑戦することを決意。キッチンは大騒ぎとなった。
「アレン、この野菜、どうやって切るの?」
「それは…レイラ様、そのナイフの持ち方は危険です! そして反対の手はこう、です!」
「うふふ、心配しないで。 指を切ったりなんてへまはしないわよ」
二人は料理を楽しみながら、数々の失敗と成功を繰り返していた。
夜になると暖炉の前で、アレンがどこからか拾ってきたピアノでレイラが奏でる音色に耳を傾けて過ごす。
そんな日常の中で、レイラとアレンの仲はだんだんと深まっていく。
彼らの生活は外界の騒動からは程遠い、平和で穏やかなものとなるのであった。
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